水にただよう浮草日記

自称文人、でもあっちへこっちへ行方定まらない。そんな浮草が芝居、映画、文学、美術、旅に関してのコメントを書き連ねます。

劇団梁山泊「蛇姫様」

2019-06-23 08:54:45 | 日記・エッセイ・コラム

新宿梁山泊 「蛇姫様 わが心の奈蛇」

毎度おなじみ新宿花園神社の紫テント。立派な作りのがっしりしたテント。お客様を考えて、柔らかい椅子席もあるし、扇風機も回って、蚊取り線香の芳香が満ち、団扇の貸出だってある。快適に観劇できる。お客様と言えば、私がよく行く、青年座や東演とは違い、芸能界や関係者の方々とお見受けする。並んだ大きな花束の数々、世界が違うような気後れがする。

でも内容は、唐十郎だもの。それに金守珍だもの。役者は身体をはるし、手作り感あふれた大きな舞台装置に感情が高ぶるし、怪しく美しいコロスの女性たちに魅せらられる。

日本国籍がほしい、帰化したい女、蛇のうろこのような痣を刻印のように腕に持つ女、その刻印ゆえ、帰化できない女。帰化のたの必要書類の真反対の負の証明書。スリという紐でつながれた男と女の因と縁。その女を姫様と呼んで、仕える若い男、その男こそ唐十郎の心であったろう。いつもながら、行く当てのない、最下層の、最も差別され、貶めれた者たちへの愛おしい思いに満ちている。朝鮮半島からやってきた戸籍を持たない女。母親が半島からくる船のなかで犯されて孕んで生まれた女。父親が誰なのか、人間の中に住む蛇のような邪悪なものが父親なのだ、というメッセージを私は感じて、玄界灘を思われる大量の水の中から天へ舞い上がる蛇を見ましたけど。

真っ白なスーツを身を包んだ大久保鷹がいないとどれだけ淋しいだろう。本当に芝居小屋の華だ。

広島光という俳優、オセローを演じた人だけれど、うまいなあ。ひょうひょうとしていながら、存在感を放っていて忘れがたい。

劇後、中山ラビのラストの「砂山」も素晴らしかった。しわがれた声で、♪うみはあらうみ むこうはさどよ すずめなけなけ もうひはくれた。その歌が耳に残って離れない。

いつも情に訴えるすばらしい芝居、ありがとう!