ツアー編 ～その５～

【出先の洗濯】

　かっこ悪い話ですが、ツアーの時に俺が一番頭を悩ませたのが「着替え」と「洗濯」でした。夏場は夏場で汗が出るし、冬場は冬場で厚着になるし。しかも季節を問わずリハから思い切りやるので、いつもリハ後に着替えをしていました。ツアーの日程を見て、持って行く衣類の量を決めていたのですが、用意をしてみるとそれだけでバッグが死ぬ程重くなってしまい、全く現実的ではありませんでした。

　着る物はなるべく小さく折り畳めるTシャツを主にして、ステージ衣装もかさばらず軽い物に、余計な物はなるべく持って行かない（でもファミコン持参で行ったこともありましたが）、でかいメインのバッグ、中位のサブ・バッグ、小さい身の回り用のバッグ、と分けたりもしましたが、結局「出先で洗濯するしかない」という結論に達しました。最初からそうすれば良かったんですけど、その頃はまだ自宅にいて洗濯なんてしたこともなかったのでした。後半、旅に慣れた頃には宅配便で先に荷物を送り返したりもしましたが、最初の頃はそういう頭もなかったですね。

　そういう経緯もあり、一時期はリハの時は短パンにTシャツでやってました。正直、そういう格好だと人目は気になったんですけど、ブリザードはワンマンばっかりだったのでリハを見てるのは関係者だけなのでラクで良かったです。リハはなるべくリラックスしてやりたかったし、色々と我が儘な態度や言葉も出てしまうので、人が少ない方が集中出来てやりやすかったですね。

　でも、地方に行くと、やたらと目立つ、立場のよく分からない人がリハから見てる、ということが何度かありました。後で確認してみるとイベントの関係者だったりライブハウスの人なのですが、当時はそういう立場の人も現役のロック姉ちゃんだったりするので、金髪の超・ロンゲで化粧もばっちり、水玉模様のワンピースでノリノリ、とか「自分も現役バリバリで、地元じゃ名うてのバンドをやってます」という雰囲気で迫るあんちゃんとかにリハを見ていられると「・・・この人、なんだろう？ファンか？関係者か？メンバーの知り合いか？」と、気になって仕方なかったですね。

　ホテルにコインランドリーがあれば使ってましたが、無い時はオフ日を使って近くのコインランドリーへ行ってました。もちろんコインランドリーを使ったことなんかなかったので、最初は相当抵抗感があったし戸惑いましたね。最近はどうだか分からないんですけど、あの頃はちょっと変わった人がいることが多かった気がします。

　九州だったと思うんですけど、行ってみるとコインランドリーなのに風呂上がりのように「ほぼ全裸」で座ってるおっさんがいたこともありましたねー。その人は乾燥機を使っていて、終わったら取り出した服をその場で着てさっさと出て行きましたが。あと、バンドマンとかが珍しいのか話しかけてくる人も多かったですよ。「何しに来てる？」「どっから来てる？」「京都の夏は暑いやろ？」とか。それから、夜のコインランドリーにでかい蛾が出て驚いて騒いでたら、こわもての、そのスジの人が来て「うるさい！静かにせんかい！！」と、背中の入れ墨を見せながら凄まれたこともありました。場所は広島方面、とだけ言っておきます。

　ホテルにコインランドリーがある時はメンバーだけでなく、ローディーの面々も使ってました。そういう時は順番待ちにもなるので、待ってる間は手持ち無沙汰なこともあり、洗濯物を放り込んだらそのままそこに座り込んで、話しこんだこともありました。それも飽きたら部屋に戻って電話したりテレビ見たりして適当に時間を潰してましたが、終わった頃を見計らって取りに行ったら、なんとまあ、ローディーの面々がそのままそこで寝込んでた、ということがありました。「ロックぽいなー」とも思いましたが、そのままにするわけにも行かないので、みんなを起こして部屋へ戻しました。