Chelsea’s Page

村上宏之のブログです

レイノ

2006-09-01 20:04:57 | ドラム談義
 レイノが死んでしまった。
正直なとろ、ここ何年かは縁遠くなってしまっていて、具合が悪かったことも全く知らなかったし、友達と認め合うような間柄ではなかったかもしれない。でも、俺は一時期、彼とバンドを組んで、毎週毎週スタジオに入って曲を作り、ライブをやり、その頃は同じバイトもやっていた。そんなわけで、彼の思い出を少しだけ話すことを大目に見てやってください。

 経緯は忘れてしまったけれど、彼がドラマーを探してると聞いて会いに行ったのが始まりでした。俺はブリザードを、彼はキラーメイを辞めて少し経った頃だったと思います。歳も同じだったし、彼はとてもフレンドリーで楽しかったし、すぐに意気投合して「よし!バンドをやろう!!」ということになりました。それからは大体、週一回のペースでスタジオに入り…なんとそれまではドラマーがいないので、打ち込んだドラムを鳴らしてリハをやっていたみたいで…とりあえずは曲を覚え、ドラムアレンジをし、オリジナルを作って行きました。

 その頃の俺はバンドをいくつも掛け持ちしながら、かと言ってどれもこれも、それほどお金になるような類の物ではなく、バンドの無い日は昼過ぎに起き出して夜中までゲームをやったりしてるような、だらしない生活だったので、見かねた親から「もうバンドは諦めて、ちゃんと働け」と言われてた時でした。バンドを諦める気は毛頭なかったので、「じゃあ働くか」と思い、人づてに見つけたバイトが深夜のキーパンチャーだったんだけど、俺はパソコンなんか触ったこともなかったのでやれる自信がなく、彼に相談したら「俺もやろうかな」と言ってくれたのでした。「大丈夫だよ、俺が教えてあげるよ」と言って、二人で面接に行きました。場所が日野で、彼の家から車ですぐ、というのも都合が良かったんじゃないかな、と思います。

 キーパンチャーは休憩時間が多かったので、バンドのアイデアを練ったり出来たし、夜勤明け、駅まで送ってもらう車の中でリハの音源やネタになりそうな曲を聴いたり…今でも覚えているのがネルソンの「アフター・ザ・レイン」という曲で、俺は今でもこの曲が大好きで時々聴きますが、そういえばこれは彼に借りてダビングしたものでした。

 彼とやっていたバンドは「LOVE」という名前で、目黒ライブステーションでやったりしてましたが、その時の対バンが練馬マッチョマンだったこともありました。それから彼は、丁度同じ頃にキラーメイのメンバーが参加して始めたバンド「イエロー・モンキー」をちょっと気にしているようで、渋谷ラママにライブを見に行ったりもしましたね。

 ・・・今思い返すと、俺は相当ワガママなことを彼に言っていたな、と思います。「こういう曲をやりたから作って」とか「キラーメイのこの曲をライブでやろう」とか、そしてギタリストにどうしても納得が行かなくて「替えた方がよくないか?」とか…その流れで孝之を連れて来てライブをやったこともありましたが。それでも彼は「作って欲しい」と言った通りの曲も書いてくれたし、キラーメイの曲もライブでやってくれたし、孝之のギターを気に入ってくれて、その後、孝之ともバンドをやったりしていました。…本当にいつも優しくて明るくて、いい奴だったと思います。

 その他にも色んなことを思い出します。サッカーが大好きだったことや、辛い物が大好きならしく、バイト先で何にでも七味やなんかをドバドバかけていたことや、「レイノって名前は、昔の友達の名前なんだよ」と教えてくれたことや「実は俺はどっちかというと文学志向なんだ」と言われこと等々…いつも陽気で明るい雰囲気で、しかし、鋭くてとても強い目付きをしていたことなんかを思い出します。実はあの頃にも彼は一度体調を崩しました。それが原因でバイトも辞め、彼は治療に専念をしていて、その時は見舞いにも行きましたが、「手術が怖くて仕方なかったよ」といつもの調子で明るく言っていました。「ここからさ、東京湾の花火がよく見えて綺麗だったよ」とも言っていましたね。
 
 訃報に接した日の夜と、その翌日の夜も俺はドラムを叩いていました。やっぱり思い出してしまうし、なんだかぼんやりとした気分でした。このところ疎遠だったことを悔いてしまったし、短い間だったけど一緒にバンドをやってくれたお礼を言えば良かったとか、バイトをしていた当時、体調が悪いことに気付かず、ちょっとからかうつもりで悪いことを言ってしまったことを謝ればよかったとか。「どうすればいんだろう?」と漠然と思ったり、「俺はまだ、こうしてドラムを叩いてるから」とか「孝之とまたやってるのを見せたかった」とか。

 そして今日、孝之と連れだって告別式に行ってきて、久しぶりに顔を見、花を手向けることができました。出棺の時には棺を持つメンバーに加わったのですが、バンドをやっていたあの時も、俺はこれ位しっかり支えてやれてたのかな?と思いました。

 告別式の場所は西八王子だったのですが、帰りは孝之と途中で別れて一人になりました。久しぶりに中央線から、以前何度も見た景色を見ましたが、日野の駅を過ぎて左側、多摩川のすぐそばにある、彼と通ったバイト先のビルも見つけられました。

 彼とやったバンドは色々なことが原因であまり長続きはしませんでしたが、俺にとっては意味のあった大事なバンドの一つですし、俺のドラム・ケースにはガムテープにマジックで書き殴った「LOVE」という名前が残っています。今、彼に伝えたいことは、「ワガママだった俺のことを許して欲しい」、ということと、「まだ当分バンドを諦められない俺を見守って欲しい」、ということです。

 心から冥福を祈ります。

復帰

2006-08-24 13:22:05 | ドラム談義
 6月の頭にライブをやってから8月の頭まで、ほぼ二ヶ月間ドラムをまったく叩かずにいました。免許を取った直後だったせいもあって、車関係の本ばっかり読んでたし、隙があれば運転ばっかりしてたし、色んな人と車とか運転の話ばっかりしてました。…以前ならこれだけ空いてしまうと不安になり、個人連に行ったりしたんですけど…。それで8月に入ってすぐにセッション・ライブがあり、その他のバンド・リハも再開し、急激にバンド・モードに戻りました。今月は周2〜3回のペースでリハに入ってます。

 久々にドラムを叩くなら「やり慣れた曲を様子見ながら…」というのが理想だったんだけど、最初のリハは目黒ライブステーションでのイベントでの“エンジェル・キッス”のリハでした。初めてやる曲と、20年ぶりにやる曲ばっかりだし、みんなの都合上、一回しかリハが出来ないという、かなりプレッシャーのかかる状況だったんだけど、実際にリハをやってみると予想以上に手も足も動いたし、ま、これならなんとかなるか、という感じでした。

 ところがライブ当日は2曲くらいで急激に握力が低下し、腕も脚もパンパンに張ってしまったのでした。「力まないように気を遣って、しかも一曲づつ間を取ってるのにこれか」と、ちょっと情けない気分になりましたよ。ライブ自体は雰囲気も良くて本当に楽しめたし、初期の目的は十分果たせた良いライブだったと思うんだけど、ドラム自体は決して褒められるものではなかった、と思います。やっぱり叩いてないと基礎体力が落ちるみたいで、手も足もなんだか粘りがなくなっている感じでした。

 でも、ライブ音源をチェックした他のメンバーから「予想外に良かった」という感想を聞き「いや、君たちはそうでもドラムはダメだった」と思ってたんだけど、音源を借りて聞いてみると確かに予想外の出来でした。「何か俺じゃないみたいだな」と思うところがたくさんあって…まあ「音」自体が違うのは当たり前で、スネアも含めて全部、小屋のドラムを借りたんだけど、スネアはヘッドが伸びきっていたのと、叩くとすぐにボルトが緩んでチューニングが下がるため「ボスッ」という音でした。でも音だけじゃなくて、なんかビート感とかノリの感じも普段とは違う気がして、それは最近のリハの音源とかを聞いてもそうで、何か自分じゃないように聞こえるんですよ。じゃあどう違うのか、とか何故か、と聞かれても説明できないんですけどね。

 リハを数回やったら、改めて気付くことや新発見もたくさんありました。筋肉が落ちているので、最初は首と肩が凝って頭痛がしたり、1時間も持たずに指にマメが出来てしまったり、リハの翌日は手全体が強張った感じがしたり。それと前は全く出なかった所に筋肉痛が出たりします。それが膝の外側だったり足の裏だったりして「俺はこんな所も使ってたのか」と以外な気分になります。その反面、疲れが出やすかった背中や腰の張りはあんまりないですね。背中や腰に来るのはもっと疲れが溜まって来てからかもしれませんが。

 久しぶりの曲は、思い出せない部分は無理に思い出して再現したりせず、改めて思いついたアイデアにどんどん変えてしまおうか、と思ってます。フィル・インだけじゃなくて「これはいっそリズムパターンも変えてみようか」と思う曲もあります。そうするとやり慣れて飽き気味だった曲も新鮮で、楽しんで叩けますね。

ドラムスティックのあれこれ

2006-05-29 11:12:58 | ドラム談義
 最初に「バンド」というものに接して「バンドマンになりたい、やるならドラムをやりたい」と思ったのは、スティックを持ってドラムセットを叩く、というのに惹かれたからでした。そういうわけで最初の憧れは「ドラム・スティック」で、「自分のスティックが欲しい」というのが最初の望みでした。それは10才の頃です。

 ブリザードの頃はTAMAの15mmを使ってました。材質もヒッコリー、オーク、チップもボール、ティアドロップ、ナイロンと色々使ってたんだけど、あの頃は短くて軽めのスティックを思い切り強く握って振っていたし、肩、腕の使い方も悪く、脇が開きっ放しだったし、アクセントを付ける時に肘がぶれたりしてましたね。力み過ぎていたせいでスティックの振りも小さかったし、コントロールも良くなかったです。

 初めて自分のフォームを客観的に見たのはブリザードでのツアー先、ライブハウスで撮ったビデオでしたけど、あまりのかっこ悪さにがっかりしました。その後、プロモーションビデオの撮影や、ライブビデオの撮影もやりましたけど、見るたびに「どうして自分はこうなんだろう?」とがっくりすることばかりでした。痩せていたので体力も無かったし、とにかく意地だけで強く叩いてライブの後半バテル、というのがいつものパターンでしたね。

 そんなわけで「もっと楽に、しかもしっかり叩くにはどうすればいいんだろう?」と、その事ばかり考えてて、まず変えてみよう、と思ったのがグリップでした。その頃雑誌などを見ると、「親指と人差し指でしっかり握る」と書いてあったので自分もそうしてたんだけど、逆に小指と薬指、中指で持つ感じを強くして、親指と人差し指は開き気味にして、叩くときに締めるようにしてました。最近もどちらかというとそれに近いですね。

 このところずっと使っているのはA-HEADのTOMMY LEE/スタジオというスティックです。これは芯が中空のアルミで出来ていて、ショルダー部にナイロンのテーパー(カバー)を被せてある、というちょっと変わったスティックです。ちなみにグリップは15mmで、それにグリップ・テープ(パール製)を巻いて使ってます。使い出したのは10年位前で、アルミのスティックは慣れるまでちょっと苦労しました。

 「金属」っていうイメージ的なことが大きいのかもしれないけどやっぱり重いし、重心も先の方にある感じがします。でも慣れてしまうとかえって楽になったし、1本1本の重さや太さにばらつきも無いし、木屑も出ないし、かなり気に入ってます。アルミ製なので固くて手が痛いんじゃないかと思うかもしれないけど、中空なためか木製スティックよりも叩いた感じは柔らかいです。A-HEADは本体がアルミのため、グリップの部分に一応滑り止めの加工はしてあってもやっぱり滑るので、試しにグリップ・テープを使ってみたんだけど、最初の頃はすぐにまめが出来てしまい、あんまり合わない気がしました。

 ところが久々に軽い、木のスティックでライブをやってみたら、異常に手がきつくて、握力がすぐになくなってしまい、それはずっと昔に感じた感覚でした。「そうか、汗ですべるからスティックを逃がさないように強く握りすぎるんだ」と気付いて、それからは軽く握るようになり、グリップ・テープは必須アイテムになってます。

 スティックは色んなドラマーによく見せてもらったし、頼んで貰ってしまうこともありました。今までで一番貰って嬉しかったのは、なんと言ってもトミー・リーのスティック。自分も使ってたビッグ・ファースのアメリカン・クラシックロックというモデルです。残念ながら直接・本人からではないし、ライブで使ったものでもなかったけど、グリップ部分には聞いていた通り、滑らないようにヤスリがかけてあって、試しに回してみるとすごく回しやすく、バランスが良い感じでした。

 当時は「こんなに長くて重いスティックはちょっと使えないな」と思っていたけど、今は木製スティックの中では一番気に入ってます。というか、どうやらA-HEADのトミー・リー・モデルはこれを元に作ってあるようなんですよね。だからしっくり来るようです。

新しいスネア

2006-03-02 12:29:22 | ドラム談義
 去年の2月から新しいスネアをメインで使っています。ずっと使っていたTAMAからパールのスネアにしたんだけど、個人的には大きな出来事でした。それまで使っていたのはTAMAのバーチ、サイズは14インチ×6.5インチで、多分’84~’85年頃のスネアだと思う。

 その頃はスチール胴を使ってたんだけど、TAMAの人に「材質が鉄関係のものはどうしても時間が経つと材質が劣化して音が悪くなるけど、木胴は時間が経つとどんどん良くなるよ」と言われ、試しに出してもらったものでした。ただ、その頃は「スネアはスチールでしょ」と思い込んでいたので、木胴にちょっと抵抗感があったし、材質を何にしたらいいのかよく分からなかったんだけど、ドラム・セットがバーチだったのでスネアもそれで統一しました。

 でもそれを2年位使ったあと、セットをメイプルに代えた時にスネアもメイプルで深さが8インチの物にして、以後はずっとそれをメインにしてました。ところが酷使がたたって、ラグが壊れたり、リムが割れたりしてしまい、仕方無いので久々にバーチを使ったら、これが予想以上に良かったんですね。ずっと触らずに寝かせてたんだけど、いい状態で時間が経ったからTAMAの人が言っていた通り、音も落ち着いて鳴りも良くなってました。

 あと、サイズ(深さ)が薄い分セッティングも楽なので結構気に入ってたし、信頼感もありました。しかし、さすがに20年前のスネアなので、メイプル同様、ラグが壊れたり、スナッピー・スイッチやリムにも錆が出て来たりして、かなりくたびれてしまいました。胴だけ残してパーツを全部取り替えようかな、と思ってたんだけど、その時に知り合いから5年位前に¥10,000で買ったパールのスネアを思い出しました。

 安く買ったのはいいんだけど、状態があまり良くなかったのでサブにしてて、機材車が動かせないライブの時とかに持って行ってました。具体的にどこが良くなかったのか、と言うと、叩いた瞬間「何かおかしい」と分かる感じで、バラしてみたら、ラグを胴に留める、ラグの内側にあるネジの受け部分が弱いらしく、そこが壊れてたものが多く、ラグが胴から浮いた状態になってました。仕方無いのでサイズの合うネジを買って来て応急処置をして使ってました。

 そんな感じで時々叩いてたんだけど、使ってるうちにどんどんラグが駄目になって「これはもう限界だな」と思って、楽器屋とかでなんとなくラグを見たりはしてたんだけど、このスネアも使われているのが古いパーツなので、今売っているラグだと、どれが合うのかいまいち分からない感じでした。「どうしようかな」と思ってたんだけど、丁度その頃ツインペダルを買った時にお世話になったパール楽器のTさんに合う機会があったので、どこがどうでこうなってるんだけど、なんとかなりませんか?と相談してみました。

 そうしたら「そのスネアだったら、ラグはあれで、リムはあれで…」って全部揃えられると聞いたので、TAMAのスネアでは無く、パールのスネアをレストアする事に決めました。普通はスネアごとパールに送って直してもらうんだろうけど、自分で作業したかったのでパーツを送ってもらって組立は自分でやりました。まあ、そんなにすごい作業をしたわけじゃないんだけど。真新しいパーツを付けたら、これが予想以上にルックスが良くなって、リハで試すことも無く、いきなりライブで使ってしまったんだけど、かなり良くて気に入りました。

 でも100%・OKかと言うと、93%くらいで、バーチに比べると明るくて音もでかくていいんだけど、ちょっと「カラコロ」した感じがして、音抜けは抜群なんだけど、ちょっと軽い感じでした。当日のリハで叩いてみて少しチューニングを下げたんだけど、そうしたら打面があっという間にベコベコになっちゃったので、もう少し相性の良いヘッドを探さないと駄目みたいでしたね。

 それと各パーツ同士がもうちょっと馴染むと良くなるんじゃないかな?と思いました。ミス・ヒットなんかもはっきり出るようで、そういう意味ではややシビアというのか、扱いにくい感じもします。メイプルは元々そういうキャラクターなんですけど、パールはそれが顕著な気がします。それからTAMAと比べると裏面の主張が強い気がしました。ライン音源を聞くと、裏面のスナッピーの鳴りとかがTAMAよりはっきりしてて、ちゃんと気を使ってチューニングした方が良いみたいです。

 そういうわけで、その後合うヘッドを探したんだけど、ちょっとハイが出過ぎてサウンドが軽い感じもあったので、エバンスの2枚重ね、裏面にリング・ミュートの入ったヘッドにしました。ヘヴィ過ぎるかな?と思ったんだけど、これが大正解で、かなり出したい音になりました。あとはこのスネアの癖、緩みやすいボルトはどこか、とか、ヘッドの張り加減とか、そういうスネア自体の癖を覚えて気を遣うところをチェックするとか、そういったところを覚えれば完璧です。

スランプはある日突然やって来る

2005-06-01 15:11:08 | ドラム談義
 
 先日、アンセム/アニメタルの坂本英三さん企画による、セッション&練馬マッチョマンでの久々ライブがあったんだけど、リハ~本番を通して充分楽しめたし、大きな問題も無く終わることが出来ました。詳しいことはまたそのうち、と思ってるんだけど、去年の春に初台ドアーズでやった「新生・練馬マッチョマン」でのライブの頃は大変だった。

 その頃、何故か超・スランプに落ち込んでしまい、ビート的には頭の中で鳴ってる音とは程遠く、何やらベタベタと重くて安定感も欠如したひどいものだったし、曲を通してのテンポ感も悪くなってた。更に手も足も思い通りに動かず、それまで何の気負いも無くスラっと叩けたフレーズが引っ掛かったり、そうなるとフレーズを叩く瞬間、一瞬躊躇するようになる、という悪循環に陥り、悪くなる一方だった。

 他の人はどうなのか知らないけど、俺の場合、スランプはある日・ある瞬間、突然やってくるし原因がよく分からない。身体的なものなのか、メンタル的なものなのか…、ひどい時はライブ中、突然ペースが乱れてそこから後はメロメロになって立ち直るのに結構日数が掛かったりすることもある。そうなると、とにかく叩いてても違和感があって爽快感とかが無くなってしまうし、余計なことが気になったりしてしまう。

 その大スランプの真最中に「新生・練馬マッチョマン」のリハと新ユニット「スリム・スラム」のリハが始まってしまい非常にきつかった。どちらも初顔合わせのメンバー(練馬はこの時、ベースがビジランテの海野君)との音出しで「よりによってこんなに時期に」と思ったしプレッシャーを感じてしまった。ただ、スリム・スラムはやり慣れたイノセント・アークなんかの曲のセッションから始まったのでまだ誤魔化しがきいたけど、練馬マッチョマンは「ライブまで」という締め切りもあり、本当にきつかった。練馬マッチョマンの最近の音源はドラムを打ち込みで作っているので勝手に変えてやってしまって、リクエストがあれば直すだけなのでそれ程問題は無かったんだけど、昔のアルバムに入っている、生ドラムでレコーディングしている曲のドラム・アレンジは大変だった。覚える曲数が多かったし、どれも決めや曲構成が結構凝っててむずかしいのと同時に、大前提として他人のコピーはなるべくせず、可能な限り自分らしくしたい、というのがあるので。…実は何をやってるのかよく分からないところとかもあったりしたんだけど…。

 あと、曲によってはアプローチ自体が古く感じるパターンや、叩いててしっくりこない、ノリが悪くなるパターンは変えたいとか、そういう風に思うところがたくさんあったので暗中模索しつつ固めて行った。あとは時代的に2バス・フレーズが多いんだけど、基本的にライブはワンバスでやるつもりだったので、それをどうするかも考え所だった。

 実は練馬マッチョマンの曲はもの凄くむずかしい。単なる80年代ロックのくくりではとても出来ないものが多い。基本的にはロックなので「パワー感」「線の太さ」は最低限必要だし、同時に「ポップなセンス」「ジャズっぽい感じ」「ファンキーな感じ」「昭和歌謡の味」「なんだか妖しい雰囲気」「同時に明るい雰囲気」とか、ほんとに色んな要素がある。しかもダンサーがいてステップもあったりするので、テンポとかノリの良さも考えなきゃいけないし…こう書いてくると、今なら「そりゃあ苦労するよ」と思うんだけど、その頃は「とにかくやらなければ」とひたすら思ってましたね。

 ドラムの問題点は、他人はどうだか知らないけど、俺の場合は頭で考えたフレーズと実際叩いた時とのギャップがある、っていう事で、どれだけ仕込みをやっても実際に音を出してみたらどうにもならない場合がある。この時も何曲かそういうものがあって、テンポ感が掴めなかったり、仕込んで来たフレーズに詰まったり、とにかく最初のリハはズタボロで、終わった後はすっきりしなくてストレス溜まりまくった。メンバーに特別何かを言われたわけじゃなくても、そういう時はほんとに落ち込みます。リハの帰りに何回も音源聞きなおしたりするし、帰って速攻練習したり。

 ただし俺の場合、仕込みの段階ではレベルをある程度高いところに設定しておくし、なるたけ新しいことも取り入れよう、と考えていて色んな事を試しながらやってるせいもあるんだけど。それで、ストレスが溜まってくると急に開き直ってしまって「どうこう言われてもいいや」「叩くのは自分で、自分が楽しめなきゃ仕方ないんだし」「見栄張って難しいことやるのは止めよう」と思って自分なりに納得できるラインでまとめに入る。まとめたら微調整して終わり、というか、今回のライブはここまで、と決めて後はリハで精度を上げて曲慣れするまで繰り返す、という感じかな。

 でも、その過程で寝かせといたアイデアが復活してくることもあったりするんだけど。だから俺にとってリハは結構重要で、セッションっぽい、リハの少ないライブは実はあんまり得意じゃない。それでも「曲を覚えてざっと様子を見て」という段階でやるしかない時は、それなりに対応するけどね。でもどっちかというと細部まできちんと見えてて準備出来てる方が好きです。

 あと、この時は英三君が超・忙しい頃で、結局ライブ寸前のリハまで来れなくて、最後の最後に「こことあそことあの部分はこうならないかなー?」と言われたんだけど、面白いなーと思ったのは、そういう部分って大抵ドラマー的に違和感があって変えたところとか「なんでわざわざこんな風になってるんだろう?普通はこういうドラムは付けないんだけど」と思ったところとかで、やっぱり他のパートの人は違う感性があるんだな、と思った。殆どが「CDのままで」というリクエストで、ちょっとしたフックとして英三君が考えたところでしたね。どっちにしても、元々まんまコピーしてからアレンジしてるので問題無く対応できました。でも基本的に英三君は、あんまり細かくどうこう言わなくて、ドラムは殆どやりたいようにやらせて任せてくれるので助かるし、やりがいがありますね。

 そんなわけで不安もありつつの新生・練馬マッチョマンのライブに望んだんだけど、緊張したのが返って良かったのか、本番は結構うまく行きました。そうしてライブを一本こなしたら春先のスランプからなんとか脱する事が出来たんだけど、今度はいつ、どんな形でやって来るのかな?まあ、このところは好調なんですけどね。

Tommy Lee

2005-04-11 14:02:30 | ドラム談義
 少し前にBBSにも書いたけど、ドラム・マガジンの表紙と巻頭特集がトミー・リーだった。地味でシンプルなセットを木のスティックで叩いてるだけなんだけど「やっぱりかっこいいな」と思ってしまった。インタビューもなかなか面白かったし、好きなアーティストがほぼ一緒、というのは初めて知ってちょっと驚いた。ジョン・ボーナム、トミー・アルドリッジ、KiSS、チープ・トリック等々…。まあ、俺の場合はそこに「トミー・リー」の名前が筆頭に来るんだけど。

 トミーには80年代当時、ドラマーとしてかなり影響されたし、コピーとかもずいぶんやったんだけど、気が付いてみると周り中みんなトミーのコピー・ドラマーばっかりになっちゃったのと、どれだけ真似しても同じようにかっこ良くならなかったので諦めてしまって、以後あんまり口に出して言わなくなった。けど、それはそれはもうミーハー的なファンだった。来日公演は初回の渋谷公会堂から、来日すれば見に行ったし、海賊版のライブ映像も随分見た。それ位衝撃的だったし、励みになったし「ああ、俺はドラマーやってて本当に良かった」と心底思わせてくれた。

 リズムをキープしながらスティックを回すのとかも随分真似して練習したこととか、スネアを叩いてそのまま真上にスティックを飛ばすのだけはどうしても出来なかった、とか色んなことを思い出すな。あの頃の俺はドラムを叩いてる姿が、それはそれは地味でビデオとか見る度にがっくりしてたんだけど、トミーも同じように線が細いのに、やたらとかっこ良くて随分ヒントを貰った。

 俺が言うと無意味で薄っぺらくなってしまうけど「何故ドラマーがバンドの花形じゃいけないのか」「何故ドラマーが目立っちゃいけないのか」「俺はドラムセットの後ろにいるんじゃなくて、俺の前にドラムが組んであるんだ」っていつも思ってたんだけど、ほぼ同じ事をトミーも考えていたらしい。バンドマンって基本的に目立ちたがり屋で嫉妬深い奴が多いからさ、自分より目立って、しかもドラマーだ、っていうと一緒にバンドやり出して少し経つと、根性無い奴はすぐにガタガタ言うんだよね。「大人しくしてろ」とか「目立つ前にしっかり叩け」とかね。ハイハイ、分っかりました〜、了解で〜す、さようなら〜、って事も何度かありましたよ。俺に言わせれば、ドラマーは座ってるんだし、後ろにいるんだから、俺に喰われてるお前の方がどうなの?と思ったけどね。


 それはさておき、俺はせいぜい自前のドラム台を持ってて、組める時はいつでも尺上げする位しか出来なかったけど、トミーはドラム台を傾ける、回す、アリーナの上に出て行くと、派手な演出が目白押しだった。「もっと自分のバンドが売れて儲かって、でっかいホールでやれればなー、派手なことやりてーなー」といつも思ってた。でも個人的にはモトリー・クルーの渋谷公会堂での初来日が一番衝撃的だったな。ドラム・ソロも仕掛けも何も無かったんだけどね。ライブ前、ステージに組んであるセットを見て「なんて変なセッティングなんだろう?」と思った。タイコ類は低く、タムは殆ど角度をつけてなくて、シンバルだけは妙に高い所に全く角度を付けずに並んでて、なんだかく叩きにくそうに見えた。「ルックス的にこだわってるだけかな?」と思ったんだけど、ところがトミーが座って叩きだすと、背が高くて手も長いからシンバルの位置はピタっと手を伸ばしたところにセットしてあっただけだった。それと予想以上に左手が器用で参考になった。

 普通にシンバルも叩くけど、リズム・キープをしながら左手でハイハットを叩き、右手でスティックを回すというのも凄いアイデアだと思ったし、その頃俺は左手でシンバルがあまり上手く叩けなくて随分忙しい思いをしてたので、見た目にもよかったし、やっぱり左手でもシンバルを叩けるように練習しようと思ったのと、セッティングは叩きやすくて自分にあったようにしないとダメだと思った。それよりもなによりも、とにかくそのアクションに圧倒された。とにかく明るくて派手だったし、本当の花形ドラマーだった。超・スリムなのに全然ひ弱に見えなかった。そんなわけでトミーは物凄く参考になったし「この1/10でもいいからかっこよくなりたい」と思った。

 モトリー・クルーのプロモ・ビデオで一番はまったのが「Home Sweet Home」で、その頃トミーはパールの白の深胴セットを使ってたんだけど、その時ほど「何故俺のドラムはTAMAなんだ」と真剣にがっかりしたことはなかったな。でもどうしても真似をしたかったので、TAMAの白いドラムを使って、サイズとかも殆ど同じ、シンバル・レイアウトも殆ど同じ、という風にしてた。その後シンバルもパイステを買ってしまったし。スティックも今使ってるのはAHEADのトミー・リー・モデル・スタジオというやつ。一時期、自分にぴったりくるスティックを探してて、家にあったトミー・リーのスティック(本物)と同じ、ビッグファースの新品を買って来て使ってみたんだけど、長くて重くて、よくこんなスティックを振り回せるな、と思った。

 ただし、試しに回してみると凄くバランスが良くて回しやすく「成る程ね」と妙に納得したけど。他に良いものが見つからなかったし、しばらく使っていたら慣れてきて問題無くなった、というか、重いスティックに振り回されないようにフォームに気を付けたのが返って良かったのかもしれない。AHEADのトミー・リー・モデルも試しに使ってみたら、これも最初は重くて「さすがにこれは無理かな?」と思ったんだけど、しばらく使ってたら慣れてしまって、他のものはしっくりこなくなってしまった。これはビッグファースのスティックを元にしてるらしく、握りとか長さが殆ど一緒で、ライブ・モデルはもう少し長くて重い。そう言えば昔は「練習は重いスティックで、本番は軽いスティックで」って言われてんだけど、トミーはライブの方が長くて重い、っていうのもらしくて良いな、と思う。

 あと、トミーはコーラスも上手い。海賊盤のライブ・ビデオを見てたとき、最初歌ってるのに気付かなくて「メンバーで声が良くて上手いのがいるけど、誰なんだろう?ミック・マーズか?」と思ったんだけど、誰も歌ってないのにコーラスが聞こえてて「あっ、トミーか!」って分かったんだよね。同時に「じゃあ、ミック・マーズは何故このバンドにいるんだろう?」と思ったけど。(ファンの方、すみません!!)それとコーラスだけじゃなく、MCとかもヴィンス・ニールから振られるといい声で格好良く喋るし、ドラム・ソロの途中も煽りながら叩いたりとか、とにかく新鮮だった。真似したくてコーラス用(喋り用か?)にヘッドセットを買ってしまったのはご存知の通りですね。全然、追いついてませんが。

 トミーもモトリー・クルーの初期は、フォームも悪かったし、プレイもそんなに良くはなかった。でもアプローチとかセンスが良くて聞いてても面白くて参考になったし、アクションがかっこ良かったので見てても面白かった。ところが5枚目辺りから急にプレイがレベル・アップし、しかもアクションはそのままというスーパードラマーに変身してしまって焦った。「俺を置いて行かないでくれー!」って思ったし「ちゃんと練習しなきゃ」と思ったね。そんなわけでモトリー・クルーを辞めてドラムも辞めてしまった時はほんとにショックだった。ソロになってからのCDも聞いたんだけど、歌は確かに上手いし、手足も長いからギターを持っててもサマにはなってるけど…俺は絶対納得出来ないな、と写真を見て思った。今回のモトリーのライブ・ツアーはラストらしいんだけど、やっぱりトミーにはドラマーでいて欲しいね。ドラマーとして革命を起こした、ってことを大事にして欲しいな、と思うね。

フォーム2:前回の続き

2005-03-16 12:57:24 | ドラム談義

 じゃあ具体的にそれはどんな叩き方か、というと非常に簡単な事で、スティックは生卵を持つくらいの気持ちで余裕を持って柔らかく握る、叩く瞬間も全く握り込まない、という、ただそれだけの事だったんですね。ただし、それだけだと音が小さくなってしまうので、肘と手首をもっと使ってスティックの振り幅を大きくし、手首を使うというよりも肘を下へ引っ張り込むようにし、押さえ込まずにスティックの弾み(跳ね返り)を意識するようにしてます。今までも調子のいい日に限ってスティックを飛ばしたりしてて、結局そこにヒントがあったみたいなんだけど、そういう時は気を付けて更に強く握ってしまってました。

 そうやって新しいフォームに行き着いたんだけど、メンバーにはしばらく黙ってて、「今日は音が小さい」とか「リハだから軽く叩いてる?」って言われるかなー、と思ったんだけど、誰も何も言わないし、ヘッドなんかもベコンと凹んだりしてたので、じゃあライブをこれでやってみて、音聞いて映像見て判断すっかなー、と決めました。自分で叩いてる限りは、ちょっと抜けが悪くないか?という程度で、そんなに違和感は無かったんだけど、不安だったのは音量より見た目で、全く力まないので見た目にも力感が無くなってるんじゃないか?というのがありました。

 で、ライブを実際にやってみて、これはかなり自分向きだな、と分かりましたね。とにかく疲れにくくて、3曲・4曲続けても全然へばらなくて(最後には結局行き過ぎて、いつもへたり込むんだけど)、どの曲も余裕を持って叩けるようになって来たと思います。抜けが悪いように感じたスネアの音も、リムの音が勝ち過ぎず、そのためか低い成分も出てる感じになってました。ライン音源とエアー音源、どちらも聞いてみたんですけど、音量的にも全く問題なかったです。確かにアタック感はちょっと減るんですけど、スネア自体の音としては広がりが出たと思います。

 映像を見ると、以前よりスティックが立った形で、チップがトップに来るのが早いので、音と動きが合って無いように見える所とかありました。今までは叩く寸前に一番早くスティックが動いてたんですけど、今はトップから降りてくる瞬間に一番早くスティックが動いてます。でも、そういう目で外タレの映像とかを見ると、やっぱり振りの大きい人は同じ感じでしたね。それ以外にも押さえ込まずに、叩いた後に引き上げるので、スティックの動きが上へ上へとなって、シンバルなんかへの移動も楽になったし、フィル・インもこの方法から、さらに握り込んでリムを使ってのアクセントが付けられるのでダイナミクスが付けやすいですね。

 今のところ、完成度は80%位の感じかな。色々と自分的に納得出来ないところや、はっきりと分からないところがあって、まだまだ修正が必要です。最初に困ったのが、トップ・シンバルを使ってる時はスネアも楽に大きい音が出ていいんだけど、両手をクロスさせてハイハットを叩いてると、どうしても左手の振り幅が小さくなって、思い通りのスネアの音を出せない事でした。それは大抵「歌中」なので、メリハリが付いていいかなー?とも思ったんだけど、ちょっと音圧が下がりすぎる気がして、やっぱり納得行かなくて研究しました。それで出た結論は「ハイハットの時はもっと手首を返してチップを身体に近くて高い所に持って来る」という事でした。

 トップ・シンバルの時は肘から上げるけど、ハイハットの時は肘は小さく、手首を主に使い、引っ張り込むのも指まで使う、っていうのか、そんな感じです。肘は身体にぴったり付けたまま、手首の返しだけを使ってチップで肩の辺りを叩く練習をしましたね。それとフォームが変わるとセッティングなんかも微妙に変えなきゃいけないので、その辺を模索中です。

 フォームが固まって来たら軽く叩いてもしっかり鳴るようになって来たんだけど、そうすると結局ヘッドなんかは同じ感じで傷むようになってしまいましたね。でもスティックは多少持つようになったと思います。それでもやっぱり折れる時は折れますけどね。

 それで、今考えているのは、これを「足」に応用出来ないか、ってことなんだけど…。どうかなー?

ドラム談義:フォーム

2005-03-10 12:19:50 | ドラム談義
 
 ドラム談義の第1回目は、最近目覚めた新しい奏法の話です。これは結構マニアックな内容で、ドラムを実際にやってる人にしか分からない、場合によってはドラマーですら言ってる事が解らないかもしれない話なので、読んでも何のことかさっぱり、と思います。が、興味のある人はどうぞ。

 皆さんよくご存知のように、俺はスティックをやたら折る。折るのか折れるのかよく分からないけど、ヒッコリーだろうがオークだろうがアルミだろうが、太くても細くても、長くても短くても、とにかく関係無くボキボキ折れて、楽器屋の店員さんにも呆れられる。木のスティックに至っては、手の中でいきなり割れたり裂けたりして危ない事はなはだしい。特にアルミのスティックは「そんなに折れるわけがない」と言われました。

 このところ色々見た外タレのライブ・ビデオでは、みんな俺と同じA-HEADのアルミを使ってたんだけど、どう見たって俺よりパワーがあってフルに叩いてるようにしか見えないので、一体何故なんだろう?と不思議に思った。思うと同時に、もしかしたら俺の叩き方は根本的に間違っているのか、それともみんな全然違う叩き方で「こつ」みたいなものを修得していて、自分はそれに気付いてないだけなのかも知れない、と思ったりしましたね。

 ここ最近のフォームというのは、肩は上げず、肘から先を使う事を意識し、手首はシンプルにスティックのチップを持ち上げるだけにして、チップの振り幅を調整しながら、叩く瞬間思い切り握り込む、というかヘッドに押し込むというのか、そういう感じで叩いてました。今回のレコーディングもそれでやったんだけど、プリ・プロの段階でミキサーの人に言われたのが「他の人に比べてスネアの倍音が少ない」っていう事と、自分的には思いっきり叩いて、「いつも通り締まったいい音じゃーん」、と思ったものが、録ったスネアの音を聞くと、なんだかあまり鳴ってないような気がする、ってことだった。

 元々倍音が多いのはあんまり好きじゃないんだけど、どうも低い方の成分があまり出ないようにずっと感じてて、でもそれはチューニングを下げればいい、ってものでもなく、しかもチューニングを下げると、その分打面が柔らかくなってすぐにベコベコになる、ということもあり、そこにも一つ謎を感じてた。

 考えて行くと、どうやらそれは「つまってる」という状況のような気がしてきた。もしかしたらちょっと強くスティックを押し込み過ぎてるんじゃないか?というのが最初の結論だった。特にスリム・スラムを始めてからは、とにかく他のメンバーの生音がでかいので、かなり力んで叩く癖がつてしまったのかもしれない。左手の親指の爪が浮きかかったり、出来にくくなってたマメが出来てしまったりするし、やたらスティックが折れるのもその辺に原因がありそうな気がしました。

 そこで「やっぱりもう少し軽く叩いてみよう」と思い、試してみました。ヴォリュームを下げる時は、スティックの振り幅を小さくして、意識的に腕の力を抜いて、握り込むのも軽くして叩くんだけど、そうするとリズムも一緒に弱くなったり、音がばらついたりして、いまいち納得出来なかったし、第一スリム・スラムの音像には負けてしまって話にならなかった。

 じゃあ、一体どうすればいいんだろう?音がつまらず、スティックも折れず、しかも力感やヴォリュームも下がらない叩き方、そんなのあるんだろうか?あるわけないよなー、と思ったし、音が小さくなるんだったら今のままの方がいいよなー、と思って、スティック折れるのは自分のスタイル上、仕方無いんだろうな、と思って諦めてました。

 ところが、ある日突然、分かってしまったんですよ、色んな事が。最初に気付いたのは、クラッシュ・シンバルの叩き方で、すごく揺れて、しかも力まなくてもいい音が出る方法が分かって、それをトップに応用し、じゃあスネアは?じゃあタムなんかは?と広がって、突然分かってしまったんですよ。これで本当にいいのかどうか、まだ100%納得ではないんだけど、本当に嬉しかったし、感動ものでした。ドラムを始めてから30年ですよ、もうすぐ。ようやく辿り着いた、っていう達成感もあるし、目の前が開けた感じですね。  

続く