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村上宏之のブログです

ツアー編  ~その7~

2007-02-23 14:54:18 | BLIZARD
【ラスト・シーン】

 地方へ行く時は大抵、六本木の事務所に集合してました。そうすると、ライブの日程を見て当たりを付けるのか、よく見送りに来てくれる人達がいました。実は俺はそれが結構嬉しかったです。大抵、同じ顔ぶれでしたし、特にどうということもない短い時間でしたけど、それでもそういう「気持ち」は嬉しかったですね。

 そして窓から手を振って出発するわけですけど、時間をかけてライブハウスに着くと、今度は真っ昼間からいつも大勢の人達が到着を待っててくれるのでした。正直、それもすごく嬉しかったです。地方へ行く時は「行くのはいいけど、本当に人が集まるんだろうか?」といつも不安でした。

 だから待ってくれてる人達を見ると安心しましたし、同時に「いつも誰かが待っててくれてるんだ」という実感はすごく心強かったですね。なんとなく見えない力にバンド全体が守られているような、そんな気分になれて「自分たちは絶対に事故に遭ったりしない」「怪我や病気をしないでいられる」と思いこむことが出来ました。

 そうやって何年も旅をしながらバンド活動をしていたわけですけど、いつの頃からか「でも、こんなことはいつもでも続くわけがない」と薄々感じるようになりました。そして、そういう思いと同時に、「自分はもう何年も同じことを繰り返してるだけだ」と思うようになってしまいました。「いつものライブハウスへ行って、いつもくらいの人数を相手に、いつもながらのライブをやってるだけなんじゃないか」と。今にして思えば、決してそういうことでは無かったんだと思えるんですけどね。

 そういう思いに囚われてから、ただ地方へ行って、ライブハウスとホテルだけしか知らない、というのは、実はもったいないんじゃないか?と思うようになり、気が向くと朝早めに起きて、知らない街を歩いたりするようになりました。夜のライブハウスではちょっと特別な扱いをされても、午前中の落ち着いた商店街を歩いていると、周りから浮いてるような、後ろめたいような気分もありました。

 それでも平日の午前中、人の少ないアーケードや商店街を歩くのはそれなりに面白かったです。適当に歩いていたら駅に行き着き、「そういえばいつも車だから、俺は駅って全然知らないな」と思ったり「それで言えば、空港なんて全く縁の無い場所だよな」と考えたりしてました。

 「旅も終わりだ」と自分なりに一線を引こう、と決めて臨んだブリザードのライブは名古屋でした。ただし、それはメンバーにも誰にも何も言っていなくて、自分の中だけのことでした。勿論、バンドでまだやれていないことが残っていましたし、創って来た楽曲に対する愛着も相当なものでした。「他の誰かがこの曲を叩くかもしれない」と思うと、心底落ち込んだりしましたが、それでも何も変わらず、時間だけが過ぎて行くのには耐えられなくなっていたのでした。

 ライブが終わり、機材を積み終わり、外へ出てみると、そこにはいつもと同じように、とても大勢の人達がバンドの見送りをしに待ってくれていました。なんだかいつも以上に大騒ぎになってるように感じましたけど「こういう光景も見納めかな?」と思いながら、ツアー車の指定席、膨大な時間を過ごした自分の席に座って、見送ってくれている人達に手を振ってその場を離れました。

 実はこの時、すぐそばに使い捨てカメラがあったので、なんとなくそうやって見送ってくれている人達に向けて何枚か写真を撮りました。カメラを持っている自分の写真をその後もらったので、分かる人には分かると思います。

 その後、少し経ってから全く別のバンドで名古屋に行く機会があり、泊まったホテルがそのライブハウスのすぐそばでした。「そうなんだ」と気付いて、暇をみてその場所へ歩いて行ってみることにしました。行ってみるとあの時とは大違いで、明るい日差しの中、歩いている人も少なく、ひっそりと落ち着いていて最後に見たあの時とは全く違う場所のような印象でした。

 見てしまえばそれでもう、特にすることもなく手持ち無沙汰だったので、なんとなくガードレールに腰掛けてタバコを吸いながら、しばし思い出に浸ったあと、来た道を歩いてホテルに戻りました。

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2 コメント

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さんきゅうでした(^^) (Shana)
2007-02-24 18:11:00
コメの件、どうもありがとうございました。

いろんな場所での思い出があるんですね。
このブログ楽しみにしてますからね~。

Unknown (めぐちゃん♪)
2007-02-24 18:45:08
私もお見送り行きましたf^_^;当時高校生の私はツアーには行けなくて、行っていいのか凄く不安だったんだけどお見送りだけしたくて…こうしてblogで読めると嬉しいですp(^^)q