ブラジルに住み、KDD○ サンパウロオフィスに
勤めていた頃の話。
オフィスには“ケンジさん”という当時40代前半の
日系2世のおじさんがいた。
ケンジさんは、鼻の下にちょびヒゲをはやし、
ひょろひょろの細~い体。しわしわでかさかさの手をしていた。
洒落男をきどって、安っぽいオーデコロンをたっぷりふりかけて出勤。
シャツはいつもキレイ。煙草が大好き!(^。^)y-.。o○
ケンジさんは簡単な日本語は聞き取ることができる。
話すのは、ところどころにポルトガル語をはさむ、
いわゆる(日系)コロニア語。
「ちょっとコヘイオまでカルタなげに行ってくる」
意味わかんないでしょ(笑)?
「コヘイオ」は correio ⇒ 郵便局
「カルタ」は carta ⇒ 手紙
「なげる」は jogar ⇒ この場合は「投函する」という意味。この動詞は
ボールを「投げる」などの意味もある為、直訳するとこういう表現になる。
ケンジさんはひらがなとカタカナだけ読める。
そして、お酒が何より大好き!
なのに彼の主な業務は「運転手」
日本から来ている駐在員の為に運転をする。
ケンジさんは、よく体をこわして会社を休む。
元々そんなに丈夫な体質ではないようだけど、
あれだけお酒飲んで、煙草吸って、偏食していたら病気にもなるさ!
ケンジさんはちょっと抜けている。
勤務中にふらっとオフィスを抜け出して
近くの立ち飲みバーで一杯ひっかける
遠くで飲めばいいのに近くの馴染みの店で飲む為
毎回のように、見つかる(笑)。怒られてもその時だけシュンとして
翌日にはケロリとしている。その繰り返し。
ケンジさんは気が小さい。
病院も嫌いで注射が怖い。
ケンジさんはその頃小学生の娘さんが2人いた。
奥さんはブラジル人。ケンジさんと正反対のでっぷりとした体格の
とっても気が強そうな女性。2番目の奥さん。ケンジさん、完全に尻の下。
ケンジさんは自分のことを殿様のように
「余は~」 と言う。
「余は魚より肉がいい」 「余が先に行く」 「余の勝手」 などなど。
ポルトガル語で「私」の事は「EU=エゥ」 と言う。英語でいう 「 I 」。
ケンジさんは本当は 「EU は~」 と言っているのです。
それが、私達には 「余は~」 と言っているように聞こえるのです(笑)。
面白がって、日本人駐在員の間で 「余は雪隠へ行くぞ」 など
変な殿様言葉が流行りました!
ケンジさんは、お金がない!といつも言いながら、
ロトやサッカーくじなどに毎回大金をかけている。
そして、大抵スッテいる・・・
そう、ケンジさんは一言で言うと 「ダメおやじ」 。
だけど、なんとなく憎めない。
仕事面でも問題だらけ。恐らく日本ではまともな会社では
雇ってもらえない。怠けることも好きだし、彼には厳しい社会だと思う。
ブラジル社会にはこうした少し「規格」を外れた人達が大勢います。
でもそんな人達にもまだ生きる場所がある。
あまりにもいろんな人がいるブラジル社会。少々変わった人がいても
目くじらを立てないおおらかさ(無頓着?!)があります。 懐が大きい
そんなところも私がブラジルを愛する理由のひとつなのです♪