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NIPPON * BRASIL * ダブル目線 *

ブラジル日系人2世の父と日本人の母を持つ、ダブル国籍。ダブルな目線できままに綴ります♪

天の虫 天の糸

2009-01-08 | ● N I P P O N ●

天の虫
天の糸
~ 蚕からの着物づくり ~

文/長町美和子  写真/雨宮秀也  ラトルズ出版



年末から年始にかけて、この本を読んだ。

着物がどのように生まれるのかその過程も気になったが、
日本の“モノづくり”についても知りたいことがあって。

私はライフワークのひとつに、たとえ小さなことでも
【日本文化の発展と継承の為に何らかの貢献をする】
という目標がある。その一環として何かがつかめる気がした

もともと、着物が大好きな私。
日本人の大切なアイデンティティの象徴のひとつ、着物。

着物はご存知の通り、蚕の吐く糸=絹糸(生糸)から作られる。
その生糸の日本国内の需給率をご存知だろうか?

なんと、たったの 「5%」

日本を代表するシンボル、着物はそのほとんどが
外国産の生糸からできているのだ。

大半が中国、そしてブラジル産だ。

ブラジル・サンパウロ州の田舎町「Bastos」で私の親戚は
養鶏場を営んでいた。この町は、日系人よる養蚕も盛んで、
一度見学に訪れたことがある。

近代的な工場で、ほぼすべての工程がオートメーション化されており、
生きている蚕もまるで工場の部品の一部のような印象を受けた。
均質で丈夫な糸を低コストで生産することを目的としており、
それが向こうでは、商業として成り立つ唯一の道でもあるようだ。

日本の生糸業界は、今や危機に瀕しているといっても過言ではないが、
そんな中、画期的な発明が成された。それが・・・

  プラチナボーイ 

オスの蚕だけから作られる、細く、白く、輝く夢の生糸。

卵を産むメスと違い、オスは上質で細く、長い糸を吐く。
オスの糸だけで生糸をつくるというのが、長年の夢だったそうだ。

世界中がこの研究を続ける中、2007年、ついに日本で
純国産の新しい蚕品種「プラチナボーイ」
が誕生した。

37年間に及ぶ研究の末 誕生した生糸は
「プラチナボーイ」と名づけられ、実際に見に行ったが
その名の通り、プラチナのように美しい光沢を放ち、
世界でも類を見ないクオリティの高さを誇っている。

「プラチナボーイ」の繭は、年間限られた数量しかできず、
その貴重な繭は養蚕農家から製糸、製織、各地の作り手達へと、
たくさんの人々の『手』から『手』に渡り、大変美しい着物へと生まれ変わる

純国産の絹糸で作られた、
本物の日本生まれの着物だ

本書はその誕生の経緯とそこに携わる人々の物語、
着物作りに関わる職人さん達の心意気などを丁寧に描き出している作品。

現在、日本のモノづくりには共通の課題があり、
そこに携わる人々、私達消費者、共に今後の発展と継承を
考えていく上で、解決の糸口となりえる重要なヒントが記されている。

そして、長年に渡りひたむきに仕事に打ち込んできた職人さん達の言葉には、
信念と誇りがあふれ、心を打つ真実の響きがある。
これは人生を生き抜く上でも貴重な学びにつながっていくことだろう。

 もしご興味があればどうぞ