Casa de Celia

iHasta la victoria siempre!

「太陽の光を忘れ黒点のみ見る」

2005-03-29 | Cuba(きゅーば)

 キューバでは、医者は200人に1人の割合だそうだ(日本は600人に1人)。
 私が訪れたハバナの診療所でも「受け持ちの地区60戸の家族、約200人分のカルテが保管してある」と聞いた。午前中は家庭訪問、午後は外来を待つという。
 いかにもベテラン風の看護士さんが「この地区のことなら、誰がどんな持病を持っているか、喫煙の習慣の有無など全部わかっている。だから、予防も治療も効率的に出来る」と話してくれた。彼女たち現場の医療従事者に限らず、キューバ人が医療の話をするときは、ちょっぴり自慢げだ。無料で提供されるきめ細かい医療制度は、彼らの誇りであることがよくわかる。

 今朝(2005年3月29日)の毎日新聞に載っていた記事「地球最前線:医療費無料を誇るキューバ~途上国に医師派遣」も、そんな彼らの表情が見えてくるような記事だった。
 そして、その一方にいる人々の表情も・・・。


【記事より抜粋】
 ハバナの旧市街に暮らす薬剤師、マリエラさん(50)=仮名=は最近ほとんど職場に行かない。「月給が安くて働く気がしない」という。政府機関に28年勤めるマリエラさんの月給は日本円にして約3000円。米マイアミからの密輸の手伝いなど「闇の商売」に手を出している娘夫婦の月収の1割から2割ほどにしかならない。
 娘一家のほか、夫、両親、叔母2人の計10人暮らし。70代の老人が4人いる。それでも生活が維持できるのは、病院通いの老人の医療費が無料で、食糧が配給されるためだ。

 ◇無料「当たり前」
 3年前から米マイアミへの密航を考えている20代半ばの娘夫婦に昨年、2人目の子ができた。「自由に商売もできない。言いたいことも言えない。こんな国にいても未来はない」。娘のリディアさん(仮名)はカストロ批判が口癖だが、出産費用や毎日のように医者に通う病気がちの乳児の医療費を払わないで済むのを「当たり前」と考えている。
 マリエラさん一家全員が希望通り米国亡命に成功した場合、老人4人と乳児1人を抱える以上、薬代だけで月1000ドルは下らない。一家は、医療費が無料のキューバだからこそ、なんとか暮らしていける。

【抜粋おわり】



 私がキューバに生まれていたらマリエラさんのように月3000円の給料に不満を持ち、リディアさんのように「闇の商売」に手を出して、ゆくゆくマイアミ密航を企てていたかもしれない。しかし、「仮に」も「もしも」もなく、現状の私の目で彼らを見ると、何とも言えない悲しい気持ちになる。
 キューバで行われている無償の医療は「当たり前」でも何でもない。特にあの地域(中南米)では奇跡だ。
 その奇跡は、フィデル・カストロの「革命の初心」に依拠しているのだと思う。27才の青年弁護士フィデル・カストロが、捨て身で独裁政権に立ち向かっていった動機は「裸足の足から入る病原菌に侵されて、苦しみながら死んでいく子ども達」の存在であったのだから。50年前の初心を忘れない指導者・・・これもまた奇跡ではないか。
 もう一つ。フィデル・カストロの盟友、チェ・ゲバラがキューバを発つとき、彼に手紙を残した。遺書とも言えるその手紙の最後の方に「私はこの地に、妻と子ども達を残していく。自分は、彼らには何も与えられないが、彼らに必要なものは、きっと国が与えてくれるだろう。だから何も心配はしていない」と書かれている。必要な教育と医療を全ての子ども達が受けられるキューバを守り抜いてほしいというゲバラの「遺言」は、フィデル・カストロの心に今も重く響いているのだろう。そんな信頼と友情もまた奇跡であると、私は思う(この辺のことを考えると、いつも涙目になってしまう・・・)。

 「フィデル・カストロ~世界の無限の悲惨を背負う人」(著:田中三郎氏)の一節に「人はいつしか太陽の光と熱の恩恵を忘れ、黒点ばかりを見てしまうようになる」という文章がある。これは、著者がフィデル・カストロを太陽になぞらえた文章だが、私には、キューバそのもののことのように読み取れる。キューバが守り抜いてきた教育と医療、そして高潔な政治、そのすべてがキューバの太陽ではないか、と。
 キューバの太陽を、あなたたちの子ども達の未来のために守り抜いて欲しいと、遠い日本から願わずにいられない。


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