『愛と潔白の殉教者 ヴェルシリア司教 カラヴァリオ神父』企画:デルコル神父 文:江藤きみえ 20
司教は、どうすることもできず、薄れゆく意識のなかから、かの女を見て、やっと2度くりかえしました、「信仰を強めてください」と。
《こんな不潔な匪賊の手におちるより、死んだほうがまし》と考えたマリアは、ほんのちょっと匪賊が手をはずしたすきに、さっと身をひるがえして川のなかへ! でも水は浅く、追いかけて飛びこんだ匪賊に、髪の毛と腕をつかまれて岸にひきあげられました。そこへ、クララとパウラもひつばられてくると、匪賊のひとりがいいました、
「おまえたちは、中国人のくせして、なぜ外人について行って死のうとするのか?おれたちのかしらチャング・ハート・カイが将介石を倒したら、女性なんかもう勉強もおしまいだ。恐ろしい罰が待っているぞ。とにかく、おとなしくついて来い。いうことをきかぬと、殺してしまうぞ」
そのことばが終わらないうちに、マリアはひざまずいて祈りはじめました。それほど遠くない所にいた兄が、そのときの会話をあとで告げたところによると、匪賊はマリアに、
「おれさまに、ひざまずいてみせたって、むだだよ、どうせ、連れていくんだから」といったのです。
「悪党のおまえになんか、ひざまずくものか、わたしは、天のおん父である神の前にひざまずいたのさ。きっと神はおまえたちの魔手から救い出してくださるにちがいない」と、しゃくにさわった調子でマリアはやりかえしました。平気な匪賊は、「ふん、神なんか、そんなものに祈るより、このおれさまに祈れ」というと、かの女の兄に、顎をしゃくって、「おまえたちは帰れ」といいました。
男の子といっしょにリンコンハウの町に逃げた兄は、すぐ父に手紙を書きました、「あの匪賊は、チャング・ハート・カイの命令で動いていると思います。そのことばで分りました」と。
司教は、どうすることもできず、薄れゆく意識のなかから、かの女を見て、やっと2度くりかえしました、「信仰を強めてください」と。
《こんな不潔な匪賊の手におちるより、死んだほうがまし》と考えたマリアは、ほんのちょっと匪賊が手をはずしたすきに、さっと身をひるがえして川のなかへ! でも水は浅く、追いかけて飛びこんだ匪賊に、髪の毛と腕をつかまれて岸にひきあげられました。そこへ、クララとパウラもひつばられてくると、匪賊のひとりがいいました、
「おまえたちは、中国人のくせして、なぜ外人について行って死のうとするのか?おれたちのかしらチャング・ハート・カイが将介石を倒したら、女性なんかもう勉強もおしまいだ。恐ろしい罰が待っているぞ。とにかく、おとなしくついて来い。いうことをきかぬと、殺してしまうぞ」
そのことばが終わらないうちに、マリアはひざまずいて祈りはじめました。それほど遠くない所にいた兄が、そのときの会話をあとで告げたところによると、匪賊はマリアに、
「おれさまに、ひざまずいてみせたって、むだだよ、どうせ、連れていくんだから」といったのです。
「悪党のおまえになんか、ひざまずくものか、わたしは、天のおん父である神の前にひざまずいたのさ。きっと神はおまえたちの魔手から救い出してくださるにちがいない」と、しゃくにさわった調子でマリアはやりかえしました。平気な匪賊は、「ふん、神なんか、そんなものに祈るより、このおれさまに祈れ」というと、かの女の兄に、顎をしゃくって、「おまえたちは帰れ」といいました。
男の子といっしょにリンコンハウの町に逃げた兄は、すぐ父に手紙を書きました、「あの匪賊は、チャング・ハート・カイの命令で動いていると思います。そのことばで分りました」と。