CASA 地球温暖化の国際交渉

地球温暖化に関する国際会議の開催期間中、現地から参加レポートをお届けします。

通信4-5 HFC23破壊のCDM事業について

2006年11月17日 | COP/MOP2通信
 この問題は、新規に建設されたHCFC22製造工場でのHFC23破壊事業(以下、新規フロン事業)がCDMとして認められるべきなのかどうかが議論されている問題です。HCFC22を製造する際に副生成物として発生するHFC23は温暖化係数が非常に大きく、その回収・破壊を行うことによって非常に効率的にCERを得ることができるため、CDMビジネスとして注目を浴びています。しかし、HFC23破壊のCDM事業を行うことを目的に、途上国でHCFC22製造工場が新たに建設され、結果としてオゾン層破壊物質の増加を招くのではないかという懸念や、価格の安いこれらのプロジェクトからの認証排出削減量(CER)が市場に蔓延することで、実施費用のかかる再生可能エネルギーなどのプロジェクトがさらに実施しにくくなる状況になること、また、このようなプロジェクトがCDMで期待されている技術移転を促さないなどの問題があり、環境NGOはこれに反対しています。

 この新規フロン事業をどうするかということに関する締約国からの意見には、主に以下の3つがあります。
 1)新規フロン事業はCDMとして認めない
 2)新規フロン事業はCDMではなくGEFや二国間または多国間資金援助などのメカニズムによって支援されるべきである
 3)新規フロン事業による悪影響が的確に対処される方法論が承認されるならばCDMとして認める

 日本は、あらゆる技術はCDMの枠組みから排除されるべきではなく、新規に建設されたHCFC22製造工場が市場からの需要を反映した結果であることを証明できるならば、新規フロン事業をCDMとして認めるべきだとして、オプション3を支持しています。

 アメリカは、新規フロン事業は途上国でのHCFC22の排出量増加につながりモントリオール議定書の目標達成に悪影響を及ぼすとして、オプション2を支持しています。

 中国は、途上国にとってHCFC22はCFCに代わる物質として非常に重要であり、市場からの需要がある限り、HCFC22の使用は妨げられるべきではないと主張しました。中国は、新規フロン事業から発生するCERの65%を持続可能な発展のための資金確保を目的として徴収することを決めており、方法論に同様の規定(ホスト国がCERの50%以上を徴収し、温暖化対策や持続可能な発展のための資金とすること)が加えられるならばCDMとして認めるべきだとしてオプション3を支持しました。

 コンタクトグループでは、
 ①クレジット(CERs)を割り引いて発行する
 ②HCFC22を代替した分だけCERsを発行する
 ③CERsを事業者に発行するのではなく、別の機関に発行し、この機関がHFC23の破壊にかかる増加費用分をCERsを売って支払う。残ったCERの収益は何らかに利用する

との3のオプションが残ったようですが、最終的に合意に至らず、先送りになりました。


 *HCFC22;空調機の冷媒や発泡剤に使われる。オゾン層破壊物質でモントリオール議定書で規制されている。
 *HFC23;CO2の約1万倍の温室効果をもつガスで、京都議定書での規制対象になっている。HCFC22の生産過程で副生成物として発生する


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