CASA 地球温暖化の国際交渉

地球温暖化に関する国際会議の開催期間中、現地から参加レポートをお届けします。

COP14に参加して

2008年12月13日 | COP14参加者日記
桑原沙耶

 今回COP14を傍聴する機会を頂き,私は環境問題についてはほとんど無知ではあったけど大変よい経験をすることができました。会議等を聴いて考えさせられる(考えなければならない)ことがとても多くあったけど,ここでは学生として考えたことについて一筆。

 会議やNGOの話を聞いていると,日本だけでなくアメリカ,EU,アジア諸国,途上国等のそれぞれの立場や思惑について客観的な観点から考えることができた。それは日本で聞くイメージのような不確実で偏見を含むようなモノではなくて,はっきりと目前に突きつけられた真実だった。各国の化石燃料の保有高,人口やGDP,CO₂排出量といった多くの要素によって,国の立場や意見は形成され,交渉が進められていた。実際にはCOP13からほとんど進まなかったようだが。そこでは自国の利益を守ろうとする立場,積極的にCO₂削減に動こうとする立場,アメリカや日本など先進国の行動なしには腰を上げないという立場など各国の利害がぶつかっていることを強く感じた。正直に言えば,自国に不利な条件をのむことなしに全てを決定したい,自国の矛盾を認めることなく他国を批判したり意見を述べるといった様子に,私はとてもいたたまれない,悲しい気持ちになった。環境問題というさまざまな要素に関連している複雑な問題について,専門知識をもって意見を述べることは私には出来ない。しかし,少しずつでも多くの国の実情・事情についての理解を深めていくことが,ひいては私たちの環境問題それ自体に対する理解と問題意識・自らの意見の形成に繋がっていくと思う。他国や自国の批判をするのはそれからでも遅くはないのだ。

 2008年は金融危機やオバマ大統領の誕生などアメリカにおいて多くのことが起こった年であったが,会議においてもその点は多くの機会において取り上げられた。アメリカは変わるかもしれない,いや変わるのだという期待が多く寄せられていたようだった。対して日本はどうか。環境問題が国内で取り沙汰される機会よりも景気対策・定額給付金について報道される機会のほうが圧倒的に多く,環境問題を意識する機会は少ないように思う。エコやリサイクルなどが叫ばれる場面は多いが,世界全体,地球規模での環境問題意識は薄いように思われる。特に学生にしてかり!だと思うのは私だけ??

 目前に並べられた,自分が得ているだけの情報が全てではなく,事実はもっと複雑であることを認識しないといけない。もっと謙虚にならないと!!批判や懐疑は知識がなくても出来ること。誰でも出来る。でも多くの事実や事情,国の状況を知れば知るほどそれは難しくなってくると思う。自己満足の意見製造機にならないように,もっともっと勉強しないとなぁ~と自覚させられた1週間でした。
 
 追記:このような機会を与えて下さった兼平先生,色々なお話を聞かせて下さったCASAの早川さんに感謝します。ありがとうございました。

COP14ポツナニ会議オブザーバー参加雑記

2008年12月12日 | COP14参加者日記
 CASA監事 愛媛大学  兼平裕子

 CASAを通じてCOPに参加するのは昨年のバリ会議に続いて2度目の体験です。昨年はCASAの高齢者(?)2人と行動を共にしていて、自称『お達者クラブ』だったのですが、今回は愛媛大学の学生3人と京都大学の学生1人の計5人といっしょに参加しました。(私を除いて)平均年齢がぐっと若返ったメンバーでした。
 
 今回、COP14がポーランドで開催されるということで、ぜひともアウシュビッツに行ってみたいと思っていました。出発のルフトハンザ便がエンジントラブルで14時間遅れてしまったのをこれ幸いと、予定のベルリン着からクラクフ着に強引に変更してもらいました(←これをゴネ得というのでしょうか?)。アウシュビッツでは、唯一の日本人公式ガイドの中谷さんから詳しい説明を聞くことができました。『百聞は一見にしかず』です。若い方々は、ぜひとも、アウシュビッツの現実をみてください。人間が、合法的に、このようなホロコーストを行うことができたのです。決して忘れてはいけない過去だと思います。
 
 さて、会議場ではけっこう多くの日本人をみかけました。いわゆる温暖化問題の分野で名前が知れている大学の研究者や企業関係の権威、NGO関係者に遭遇することができました。ただ、去年のバリ会議は日本から近いこともあって、学生の参加者も多かったのですが、今回はそれほど多くの学生参加者はいませんでした。来年のコペンハーゲン会議はもっと、もっと多くの市民や学生さんに参加してほしいと思います。
 
 会議場でみかけた日本人の中で一番驚いたのは、朝日新聞のY記者に遭遇したことです。あるセッションでの質問者が「朝日新聞のYですが・・・」と名乗ったとき、びっくりして振り返ってしまいました。Y記者は、わたしが個人的に1995年以来ずっとかかわってきた瀬戸内海のいわゆる「ゴミの島」と呼ばれた豊島産廃問題にかかわってきた記者さんで、今年の夏も「島の学校」でTシャツ・短パン姿のY記者をみかけていたのですが、その彼が、これほど堪能に英語をしゃべっているのを目にして、またまた、びっくりしてしまいました。やはりコミュニケーションの手段としての英語ができないと、何も始まらないのだとひしひしと感じました。
 
 国連の会議なので、英語で進められるのは言うまでもないことです。英語が理解できて当然という参加者の中で、その内容を果たしてどこまで理解できるているのかという市民のレベルの立場としては、英語理解は一大事です。
 
 去年は英語の単語がわかっても、その意味する内容がわからないというジレンマをずっと感じていましたが、今年は会議の内容に関しても、進行方法に関しても大分わかってきたせいか、かなり理解できるようになりました。ただ、質疑応答の内容まで理解するレベルには達していなくて、???という場面がたくさん
ありました。来年のコペンハーゲン会議までには、もっともっと英語をブラッシュアップしたいと思います。

 そして、来年のCOP15で2013年以降の枠組みが決まってほしいと切に願っていますし、コペンハーゲンでもおじゃま虫になりたいと思っています。

COP14に参加して

2008年12月11日 | COP14参加者日記
COP14に参加して    東京工業大学大学院 井口 正彦

 12月7日から12日までの間、ポーランド・ポズナンで開催されたCOP14に出席しました。私にとっては初めてのCOPへの参加でした。今回参加してみて、今までCOPに対して抱いていたイメージとは全く違う印象を沢山受けました。

 第一の感想は、いろいろな人から聞いていたとおり、COPは「big festival」という事です。今回の会合には一万人以上が参加し、会場も場所を探すのに迷ってしまうほど広いのに加え、目を引くような展示品が沢山設置され、中には「I don’t need money, I need a change(お金は要らないよ、代わりに変化《changeにはお釣、という意味もある》が必要なんだ)というメッセージボードを持った白熊の展示物や、温暖化問題解決の必要性を歌に乗せて踊る人たちなど、様々です。

 交渉と平行して行われるサイドイベントは様々なものが開催され、時間が許せばすべてに顔を出したいくらい興味深いものばかりです。このサイドイベント、殆どのものは終わった後にコーヒーとクッキーを用意してくれています。この場は、運がよければ発表者の人たちや関係者をつかまえて話を聞く機会を得ることが出来たりする、大切な情報源になります。

 第二の感想は、やはり実際の国際交渉に参加し、各国の発言をその場で聞くのと、日本にいて合意された文章のみを読み上げるのとでは全く面白さが違うということです。私は普段、大学院生として気候変動問題に関する国際的な動向や国際交渉を追っているのですが、今回、実際の国際交渉(AWG-LCAのコンタクトグループなど)に参加し、各国の発言によって明日の国際交渉がどのように変化し、それが今後の国際交渉の行方を決定付けているのだと考えると、この場で各国代表の発言を聞けることに感謝するばかりです。

 今回の交渉において、AWG-LCAとAWG-KPの議長提案がどのように変化していくのか。大いなる興味を持って分析をしてきたいと思います。