CASA 地球温暖化の国際交渉

地球温暖化に関する国際会議の開催期間中、現地から参加レポートをお届けします。

COP14・CMP4報告会開催

2009年01月16日 | COP14・CMP4
COP14・CMP4報告会を開催します


◆2009年1月17日(土)午後2時~4時30分

大阪府社会福祉会館 大阪市中央区谷町7-4-15
 地下鉄谷町線・長堀鶴見緑地線「谷町六丁目」駅4番出口(谷町筋を南に200m)

◆資料代:CASA会員 500円  
     一 般  800円

■ 報告 1 
COP14/CMP4の結果と今後の交渉課題
上園昌武 CASA理事(島根大学准教授)

■ 報告 2 
コペンハーゲン(COP15)に向けて
早川光俊 CASA専務理事

■ 質疑応答

COP14・CMP4を振り返って 4

2009年01月09日 | COP14・CMP4
◆COP14・CMP4で決まったこと

○適応基金について

 適応基金についての交渉は、今回のCMP4で一定の前進がありました。今回の交渉では、①適応基金理事会の手続き規則、②途上国の直接資金にアクセスできるようにする方法、③共同実施(JI)や排出量取引からも収益の一部が基金に入るようにするかどうか、が議論されました。最終的に、適応基金理事会の手続き規則が採択され、また、基金にアクセスする3つの経路(実施機関を通してのアクセス、承認国家機関を通してのアクセス、締約国による直接のアクセス)が可能になり、適応基金は今年中にも途上国の適応プロジェクト及び適応プログラムに融資を開始できることになりました。しかし、適応基金の資金源の拡大については、合意はできませんでした。

○京都議定書9条の検討(レビュー)について

 議定書9条の検討については、CMP 4以前の交渉で、第2回レビューで検討すべきいくつかの問題が特定され、各国が附属書Bの排出量目標を引き受ける手順の円滑化、CDMのガバナンスと分布の改善、特権と免責、適応基金の資金に共同実施(JI)および排出量取引の収益の一部を拡大することなどが検討されることになっていましたが、結局、合意に至らず、実質的な成果または文書が得られないまま、第2回検討を終了しました。

○ 途上国での森林減少防止による排出削減(REDD)

 2000年の世界の温室効果ガスの約20%が森林から農地などへの土地利用変化により放出されていると言われています。この途上国における森林の減少を食い止めるため、 森林減少を抑制した分を新たに排出権と認め、2013年以降の枠組みに入れようとする提案がブラジルやインドネシア、パプアニューギニア等の森林大国から出されています。
この問題はSBSTAで議論され、専門家会議の開催や森林の保全や持続可能な管理をどう評価するかなどが議論されました。また、先住民の権利や生物の多様性保全にどう言及するかが問題となりました。最終的に、生物多様性に関する言及はなく、先住民の権利について、「先住民族や現地社会の全面的・効果的な参加を促進する必要性を認識するガイダンスを考慮する」との妥協的な表現で決着しました。

○ クリーン開発メカニズム(CDM)

 CDMについては、プロジェクトの登録に時間がかかること、指定運用機関(DOE)の承認の簡素化などを日本や中国が問題としました。また、CDMプロジェクトが一部地域に偏っていることから、アフリカなどからアフリカに特化した方法論をつくる提案や、後発開発途上国(LDC)の手続きを簡略化すべきとするカンボジアなどの提案がなされていました。
運用面の問題については、DOEの承認手続の見直しなどをCMP5で検討することになりました。また、地域分布については、「登録CDM プロジェクトの件数が10件未満の国、特にLDC、SIDS(小島しょ国)、アフリカにおいて、CDMプロセスを合理化する方法を策定」することになりました。
 炭素の固定・貯留(CCS)プロジェクトをCDMの対象プロジェクトにするかは、継続審議になりました。

COP14・CMP4を振り返って 3

2009年01月09日 | COP14・CMP4
◆コペンハーゲンに向けて

 確かに、今回のCOP14・CMP4はバリから一歩も前に出ることはできず、本格的な交渉の開始は今年6月に先送りされるなど、期待を大きく裏切ったことは否定できません。未曾有の世界規模の金融危機が進行するなか、半年の交渉で、この複雑で、しかも各国のエネルギー政策や利害が錯綜する交渉が合意に達することができるのかという懸念も払拭できません。

 しかし、前述のオバマ米政権の地球温暖化問題への取り組みの決意だけでなく、米国内で州レベルでの対策が進んでいること、前述のようにEUが包括法制案に合意したこと、とりわけ英国で2050年における炭素排出量が90年比で80%以上、2020年には90年比で26%以上32%以下とするとする気候変動法が成立したこと、COP14・CMP4直後の12月15日、オーストラリアが2020年までに温室効果ガス排出量を2000年比5%削減する中期目標を発表したこと、など明るい材料も多く出てきています。また、途上国のなかから、自らも対策を実施するとの発言がいくつもされたことも明るい材料です。途上国のなかで強い発言力を持っているのは中国、インド、南アフリカ、ブラジル、インドネシアなどですが、とくに南アフリカや韓国からは建設的な提案が出されたり、メキシコが自ら長期目標を掲げたりしていました。

 問題は日本です。削減目標のレベルはともかく、2020年の中期目標を決めていない主要国は日本とロシアくらいになってしまっています。日本政府は、現在、官邸の「地球温暖化問題に関する懇談会」の下に、福井俊彦前日本銀行総裁を座長とする「中期目標検討委員会」を設置し、今年3月を目処に報告書をまとめ、「今年の然るべき時期」に2020年目標を政策的に決定するとしています。
 COP14・CMP4で、政府の関係者に、「然るべき時期」とはいつ頃か、6月の交渉開始に間に合うのかと聞いたところ、6月は困難で、夏前に決定できればよいとの感触でした。それでは、日本が交渉の進展を妨害することになります。

 いま、私たち日本の市民に求められていることは、日本政府に一刻も早く、2013年以降の削減目標に直結する2020年目標を、IPCCが求める2020年に90年比25~40%削減の水準で決めさせることです。

COP14・CMP4を振り返って 2

2009年01月09日 | COP14・CMP4
◆オバマ政権をどう見るか

 バラク・オバマ次期アメリカ大統領に対する期待は、非常に大きなものがあります。

 オバマ氏は、11月5日のシカゴでの勝利演説で、我々は2つの戦争に直面しているとし、1つは危機に瀕する地球(環境問題)、1つは今世紀最大の金融危機だとしました。また、11月18日には、カリフォルニア州のシュワルツネッガー知事主催の気候変動に関する会議にビデオメッセージを寄せ、「温室効果ガス排出量を2020年までに1990年レベルに引き下げ、2050年までにさらに80%削減するために、連邦で排出量取引(キャップ・アンド・トレード)制度を開始し、年次目標を定める」と述べ、さらに、「太陽光発電・風力発電・次世代のバイオ燃料といった、将来のクリーンエネルギーに向けた民間の取り組みを促進するために、毎年150億ドルを投資する」との方針を明らかにしました。そして、「アメリカは再度、交渉に精力的に参加し、気候変動に関する国際協力の新しい時代をリードする」とし、「今後数ヵ月間」のうちに新らたな気候政策を打ち出すことを約束しました。

 オバマ政権は、地球温暖化問題について、これまでのブッシュ政権とまったく異なる国際交渉へのスタンスや政策をとることが期待され、2013年以降の削減目標と制度枠組みの交渉にとって明るい材料であることは明らかです。しかし、それでも2020年目標は90年比0%という、IPCCが求める2020年に90年比25~40%削減の水準からはほど遠いことは認識しておく必要があります。COP14に参加したケリー上院議員(前回の民主党の大統領候補)は、ケリー議員自身は2020年により高い目標が必要だと考えており、米国内でもそうした意見は強いと言っており、オバマ政権がより高い中期目標や政策を掲げることができるようにするためにも、オバマ政権の政策待ちではなく、国際交渉を先に進めることが必要だと思います。

COP14・CMP4を振り返って 1

2009年01月09日 | COP14・CMP4
◆交渉が停滞した理由は?

 CASA声明にも書きましたが、今回のCOP14・CMP4会議は、昨年のバリでのCOP13・CMP3から後退もしませんでしたが、一歩も前に進むことができませんでした。
 その要因は、①日本、オーストラリアやロシアなどが、自らの中期目標を明らかにせず、バリ合意から先に進めることを拒んだこと、②アメリカのオバマ政権の政策待ちの雰囲気があったように思います。

 また、今回のCOP14・CMP4は、急速に悪化する金融危機のなかで交渉が行われるという、これまでのCOPにはない特徴がありました。開会総会のスピーチで、ポーランドの首相は、「経済危機のために各国の気候変動との闘いが弱められてはならない」と述べ、各国からも同様の趣旨の発言が相次ぎました。しかし、間違いなく、金融危機は今回のCOP14・CMP4に陰を落としていたように思います。

 具体的には、最終盤の12月11日、12日にベルギーのブリュッセルで開催される欧州連合(EU)首脳会議で議論されることになっていた包括法制案に対し、ドイツ、イタリアやポーランドが、「景気を更に悪化させる」と反対していたことです。この包括法制案は、「2020年までに温室効果ガスの排出量を90年比で20%削減する」とのEUの削減目標を具体化するもので、①域内エネルギー消費量に占める風力、太陽光などの再生可能エネルギーの比率を20%に引き上げ、②自動車のCO2排出量を20~40%削減し、③排出量取引の排出枠の割り当てを現在の無償配分からの有償化(オークション方式)にする、などがその内容となっていました。12月12日、最終的に、排出枠の有料化のペースを、製造部門、電力部門や東欧諸国について一部緩和するなどで合意しました。しかし、これまでEUの牽引車であったドイツが、金融危機を背景に対策に消極的な姿勢を示していたことは、陰に陽に、EUの交渉姿勢にも反映し、そのことが交渉の停滞のひとつの要因なっていたように思います。