CASA 地球温暖化の国際交渉

地球温暖化に関する国際会議の開催期間中、現地から参加レポートをお届けします。

通信5-1 補助機関会合の結果 (適応基金)

2007年06月07日 | SB26通信
今回の補助機関会合は、多くの議題の議論が非公開の形で進められました。

(1)適応基金

適応基金については、適用基準、優先事項、CDMからのクレジットの資金化についての交渉テキストに合意しました。また、資金が確保できれば、バリでの会議の前に運用機関についての意見を交わすことになっています。交渉テキストには、
・ 京都議定書に参加しており、かつ気候変動の影響に最も脆弱な途上国が適応に必要な費用を適応基金から得る資格があること
・ 適応基金は国主体で、締約国の必要性、見解、優先事項に基づいた具体的な適応事業と計画に出資すること
・ CDM理事会から発行されたクレジットの資金化は運用機関が責任を負うこと
・ 運用機関はクレジットの資金化について毎年のCOP/MOPに報告すること
などの項目が入っています。途上国は、これらのことが決まる前に運用機関について議論することに反対しています。しかし、運用機関については、非公開で行われた議論に基づき、共同議長から12月の会議で考えられるべき項目についてのテキストがでてきました。テキストには、COP/MOPの役割、理事会、役員、実施機関、レビューの項目が含まれています。これらのテキストに基づき、12月のCOP/MOP3では、運用機関についても決定がなされる予定です。
 今回はバリでの交渉に向けてわずかなステップを踏み出したに過ぎません。最大の問題である運用機関については、最初から地球環境ファシリティー(GEF)と決め付けるのではなく、資金を必要としている途上国側が懸念している問題が解決される必要があります。今回の会議に向けて、適応基金の運用に関心のある機関として意見を提出したのは、GEFだけでした。しかし、特にナイロビで決定された「理事会のメンバーは途上国(非附属書Ⅰ国)が過半数を占める」こと、「一国一票制度」であることについて、彼らが運用する場合にどのように対応するかということについては、納得のいく説明をしていません。
一方で、今後おそらくもっとも難しいのは、途上国内部の意見をまとめる作業です。途上国グループの中には、温暖化の影響に脆弱な島嶼国、温暖化の対策が進むと経済が悪化すると主張する産油国など必ずしも利害の一致しない国が参加しており、どちらとも温暖化に対して脆弱であると主張しています。しかし適応基金は、社会・自然基盤が弱く、温暖化の影響に最も脆弱な国々にとって資金が得やすいものであるべきです。バリでは、そのための手続きと運用機関の議論が建設的に行われることが期待されます。

通信4-1 第3回特別作業部会 2日目

2007年06月04日 | SB26通信
5月18日、特別作業部会の決定草案が採択されました。
特別作業部会の2日目のセッションはで、初日と同じような発言が各国から繰り返され、その後は非公開の会合が何度か開かれました。17日の夜に出てきた決定草案には、①序論、②議長が初日にまとめた項目を含めた円卓会議での情報、③将来の会議、について文章化されており、それぞれの項目について各国の意見が求められました。

途上国グループを代表して南アフリカは、
「地球の平均気温の上昇を止めるには、温室効果ガスはこの先10-15年で排出ピークを迎える必要がある。そのためには2013年以降、先進国(付属書Ⅰ国)は温室効果ガスを意欲的に削減する必要がある」という文章について、「90年比で25-40%削減」という具体的な数値を挿入するように求めました。また、今年12月にバリで開催される特別作業部会では、この作業を終えるためのスケジュールを決めるように求めました。

日本は、
「炭素に価格を与えることは幅広い関係者の行動様式を変え、すべての部門において削減可能性を認識させる重要な手段である」という文章について、断言を避けて、「・・・炭素価格は生産者と消費者に排出の少ない技術への投資を促すことができる・・・」との最初のEU提案に戻すように求めました。

ニュージーランドは、
「先進国の政策手段と技術による削減可能性は、柔軟性メカニズムを使うことによって拡大させることができる」という文章に、「吸収源」を付け足すように提案しました。

削減手段の意見提出については、日本、EU、スイスが、締切り期限が2008年1月11日ではバリでの会議が終わったばかりで難しいとして遅らせるように求め、日本は2月27日を提案しました。

通信4-2 バリ会議に向けた決定草案「削減可能性の分析と作業計画」を採択

2007年06月04日 | SB26通信
18日に最終的に採択された「削減可能性の分析と作業計画」と題された決定草案には、先進国の削減量を定める議論を進めていく上での重要な内容が含まれています。
決定草案 「削減可能性の分析と作業計画」 

・ 先進国(付属書Ⅰ国)の更なる削減を決める作業は、条約と議定書の原則に基づいて条約の究極の目的を達成するための共有されたビジョンに基づくものである
・ 円卓会議での情報は先進国の更なる削減レベルに関する有用な条件を提供している。特にIPCCは、評価したシナリオの中で温室効果ガス濃度を最も低いレベルで安定化させようとすると、世界の温室効果ガスは今世紀の半ばには2000年レベルから半減より相当分減らす必要があるとしている
・ 今回のセッションの締約国、報告者、オブザーバーからの情報のハイライト
-今後数十年間の温室効果ガス削減努力が、回避できる長期的な世界平均気温の上昇とそれに伴う影響を相当程度決定する。気温の上昇を抑えるためには、今後10~15年で温室効果ガスの排出量は減少に転じなければならない。そのためには、先進国(付属書Ⅰ国)は2013年以降には、1990年比で25~40%削減を要する。
-低い費用で削減できる機会は多くある
-炭素に価格を与えることは幅広い関係者の行動を変え、すべての部門において削減可能性を認識させる重要な手段である
-温室効果ガスを削減することには(温暖化対策としてだけでなく)多くの共通の利益が存在し、削減コストの大部分を相殺することができる
-先進国の削減による社会経済的な影響は、政策、技術の適切な選択によって減らすことができる
-先進国の政策手段と技術による削減可能性は柔軟性メカニズムと吸収源を使うことによって拡大させることができる

今後の計画
・ 先進国は、政策・対策・技術の削減可能性のデータと情報を、先進国の削減幅を決める土台とするために2007年6月22日までに事務局に提出する
・ 事務局は提出された意見を統合し、先進国の削減可能性と削減幅に関連する要素と基準を考慮したテクニカルペーパーを作成する
・ 締約国とオブザーバー組織は2008年2月15日までに削減目標を達成する手段に関する意見を事務局に提出する。また第5回特別作業部会(AWG)において意見提出をまとめるよう事務局に求める
・ 第1と第2約束期間の間に空白が生じないようにするためにも、第4回特別作業部会(8月と12月に開催)では、この作業を終わらせるためのスケジュールを作成する
※カッコ内は付け足した

CASAも参加する気候行動ネットワーク(CAN)は、AWGにおいて先進国の削減可能性はもちろん、地球の平均気温上昇を工業化以前から2℃未満に抑えるために、どれくらい削減することが必要かということを考える必要があることを主張してきました。2℃未満に抑えるためには、先進国は2020年までに30%削減することが必要です。また、2013年以降の次の枠組みの議論について、2008年末、遅くとも2009年末までに合意するよう求めており、今年12月にバリで開催される会議で、合意期限を明記した行動計画を採択するように求めています。

今回の決定草案において、「世界の温室効果ガスは今世紀の半ばには2000年レベルから半減より相当分減らす必要がある」と、IPCCの評価したシナリオの中でも、温室効果ガス濃度を最も低いレベルで安定化させるシナリオの削減条件について言及していることは大きな前進です。このためには、2015年には世界の二酸化炭素排出を減少傾向に転じさせる必要があります。しかし、IPCCの評価では、それでも工業化以前より2~2.4℃の上昇が見込まれており、危険な影響を避けることができません。2℃未満に抑えるためには、「相当分減らす」とされる数値を具体化させていく必要があります。そのために、日本などがいまだ明示しようとしない次期以降の削減幅を今後の会議で明確にしていく必要があります。また、決定草案にあるように、バリでは次期枠組みの交渉を終えるスケジュール、それも最終期限を定めた計画に合意することが必要です。

通信3-3  第3回特別作業部会(AWG) 第1日目午後のセッション

2007年05月16日 | SB26通信
午後のセッションではA、B、Cの順で以下の発表がありました。
A エネルギー効率と低炭素エネルギー
・ Mr. R.Baron(IEA)「エネルギー効率と環境政策」
・ 本部和彦氏(経済産業省大臣官房審議官)「削減可能性の評価に関する日本の視点」
・ Mr. Hugi Olafsson(アイスランド))「低炭素社会に向けて」

B. 二酸化炭素以外からの排出と森林などからの吸収源
・ Mr Harry Clark (ニュージーランド).「酪農業部門の削減可能性について」
・ Mr.Louis Verchot (ICRAF)「農業からの削減可能性について」
・ Mr. Thomas Kolly (スイス) 「将来の気候変動枠組み」

C. 部門別アプローチの整理
・ Ms. Nicole Wilke (EU).「EUの排出量取引について」
・ IPCC

日本の報告「削減可能性の評価に関する日本の視点」

特別作業部会での日本の報告の要点は以下の通りです。
・ 日本の歴史的な省エネの努力
-過去30年でGDP辺りの原単位は37%改善
・ 新・国家エネルギー戦略での排出削減の中期的目標
-エネルギー効率を30年までに30%改善
-運輸部門の石油依存を30年までに80%減らす
-原子力発電の割合を30年以降30-40%に維持
・ ボトムアップと部門別のアプローチ
-経団連の自主行動計画で削減実施
-アジア太平洋パートナーシップでセクター別の技術移転を実行する予定
・ 長期的な研究と開発への投資
・ 期待される技術(省エネ、原子力、新エネルギーなど)
・ 地球規模での削減可能性の評価
-鉄鋼産業には多くの削減可能性がある
-炭素集約的な製品が貿易でやりとりされている
-貿易のやりとりで排出の漏れ(リーケージ)を防ぐためには地球規模での削減評価が必要
結論:
・ (鉄鋼、セメントなど)排出の多い部門と技術に基づいて地球規模で排出削減可能性を評価する必要がある
・ 専門家の視点が重要。エネルギー専門家を含めたタスクフォースを作ることをひとつのオプションとしてあげる
・ 透明かつ共通して使える削減可能性の評価方法が必要である

残念ながら、日本の報告は国ごとの総量排出削減の議論が抜け落ちていました。鉄鋼やセメントなどの部門別の削減可能性と、部門別の評価方法に議論を移しています。今の状態では、今年の12月にインドネシアのバリで開催されるCOP13までに日本を含めた先進国の削減について議論を進めようとする意思は見えません。

報告を受けて行われた質疑応答からいくつか取り上げます。
Q. 日本はエネルギー効率を2030年までに30%改善すると言っているが、どの部門で削減するのか?また、それでどれくらいの温室効果ガスが削減されるのか?(中国)
A. どの部門でどれくらい削減するかということについては、正直なところ分からない。これから詳細を議論するところ(日本)
Q. 地球規模での削減可能性をさぐるというのはどういうことか?(南アフリカ)
A. この10年で経済、排出量も大きく変わった。将来の約束は、地球規模の視点から議論されるべきだ。企業が排出上限のない途上国に出ていって排出量が結果として地球規模で増加することがないように、セクター別アプローチが重要地球規模で削減を探るというのは、例えば日本から中国への技術移転などを通して削減していく必要があるということ。また、アジア太平洋パートナーシップは、技術移転を進められるよい仕組みだ(日本)
Q. 炭素市場は革新的な技術開発にどの程度役立つと考えるか?炭素市場は低い費用でできる技術に手を伸ばすだけ。技術開発予算が増えないと、炭素市場の運営にどのような悪影響が生じるか(日本)
A. 技術への研究と開発の公的投資は確かに1980年レベルから半減した。しかし、民間投資は数字に含まれていない。エネルギー部門の民営化が進んだといえ、この公的投資の減少は埋め合わされていない。長期的には大変懸念される。炭素市場は、技術を広めるのには役立つが、技術の研究と開発には公的資金の投入が大事で長期的戦略が必要。しかし、既に商業化されている技術を広めるのには、炭素市場が大事。(IPCC)
Q. EUの排出量取引について、①航空輸送からの排出などについて、EU域外の事業者についてどのように扱われるのか?②EU排出量取引と他の排出量取引はつなげる基準はどういうものか?(韓国)
A. 飛行機からの排出については、EUから出発する便について排出量取引でカバーしようと考えている。また、他の排出量取引制度とのリンクは、モニタリングの条件、遵守のしくみ、義務的な排出上限が課されていることなど、EUの制度とマッチするものでなければならない(EU)
Q. 自発的な(ボランタリー)対策について、IPCCはあまり削減効果がなかったということであるが、低炭素社会を実現するにはもっと規制的措置が必要ということと理解してよいか?(バヌアツ)
A. 自発的な取組みは、ほとんどの国でうまくいっていない。または、実際に削減されたかどうかということが明確ではない。ただ、日本とオランダでは例外があった。しかし、基本的には排出量取引制度や税といったものが真剣に考えられる必要がある。

上記の議論の後で、議長は今日議論で出てきた点を12項目にまとめ、この項目を土台に明日、さらに議論がなされることになりました。

通信2-3 第3回特別作業部会 2日目

今日は午後18時から20時まで特別作業部会が開催されました。



通信3-2 第3回特別作業部会(AWG) 第1日目午前のセッション

2007年05月16日 | SB26通信
 午前中のセッションでは、以下のメンバーから発表がありました
・IPCC
・Mr. Artur Runge-Metzger (欧州委員会) 「削減可能性に関するEUの視点」
・Mr. Harald Dovland (ノルウェー)
・Mr. Mohamed Salim Al-Sabban (サウジアラビア) 「削減可能性とリスクと不確実性」
・Mr. Arne Mogren(Vattenfall AB).

報告後のディスカッションをいくつか取り上げます。
Q. EU全体の削減目標を掲げているときいたが、EU内での削減負担配分はどうなっているのか(スイス)、EU15ヶ国から27カ国に広がったが、現在の削減目標を掲げている15カ国の目標は少なくなるのか、多くなるのか(オーストラリア)
A. EUは、2020年までに1990年レベルから20%削減、もし他の先進国が一緒に参加するなら、30%削減目標を掲げている。しかし、EU内の削減負担配分は検討中で何とも言えない(EU)
Q. EUが2020年までに30%削減したとした場合、その時点での一人当たり排出量はどれくらいになるのか(中国)
A.  EUが地域内だけで30%削減した場合には、一人当たり二酸化炭素排出量は7-8tになるだろう。EUが域外で(CDM等を使って)削減すれば一人あたりの排出量はそれより多くなる(EU)
Q. ノルウェーは国内の排出量を2050年までに100%削減すると言っているが、50年にはどのようになることを考えているのか?(中国)
A. 2050年に排出をやめて国の活動をやめてしまうわけではない。国内の排出量分に相当する削減をする、カーボンニュートラル(炭素中立)をめざすということだ。長期的な明確なシグナルをそのように示している(ノルウェー)
Q. IPCCでは、最善のケースでも温室効果ガスを450ppmに安定化する検討しかされていないが、それより低いレベルでの安定化はなぜ検討されないのか(バヌアツ)
A. 十分な研究がなく、検討できなかった。より低いレベルでの安定化は、まだ寿命の来る前の施設を閉めてしまうなど、もっと費用がかかる(IPCC)、現在の温室効果ガス濃度レベルが430ppmであることを考えれば、それより低いレベルの安定化は大変難しい(EU)、430ppmという濃度は京都議定書で規制されている6ガスだけであり、他の温室効果ガスを考慮すると現状はもっと多い(IPCC)
Q. この先作業をどのように進めていくべきなのか?(カナダ)
A. 国の削減可能性については、それぞれの国が削減可能性の調査を進めるしかない。EUがカナダに行って行うことはできない。(EU)
Q. 温暖化政策は、石油輸出国に悪影響がある。先進国はそのような影響(スピルオーバー効果)について配慮すべき。また、運輸部門からのエネルギー転換は影響が大きい。まず、石炭への補助金などをやめるべき。(サウジアラビア)
A.    EUは1990年以降、石炭への補助金を減らしてきている。石炭輸出国にとっても、問題は同じ。石油の価格は上昇しており、影響は少ないと考えられる。(EU)

通信3-1 第3回特別作業部会(AWG)開始

2007年05月16日 | SB26通信
5月14日、第3回特別作業部会のワークショップが開催されました。
プレゼンテーションの内容は以下のサイトで見ることができます。
http://unfccc.int/kyoto_protocol/items/3951.php

開催にあたって、Leon Charles(グレナダ)議長は、この部会で信頼を構築させていく必要があると発言しました。
G77/中国グループを代表して南アフリカは、AWGの作業が京都議定書の3条9項に基づくものであり、附属書Bの改正による附属書国I国の約束に焦点を置くものだということを再度強調しました。そして、附属書I国の大幅な削減が必要であり、京都議定書の第1約束期間が終わる2012年と、それ以降の約束期間の間にギャップを作らないためにも、AWGでの先進諸国の更なる削減の議論は、2008年まで、遅くとも2009年までに終える必要があるとしました。また、2013年以降の議論を「ポスト京都」「京都プラス」「包括的な制度」のように表現するのは、議定書を継続させる議論を前向きに進めないと発言しました。また、EUがこの問題のリーダーシップを見せていることを歓迎し、今日はEUがどのようにして削減目標を決定したか、他の先進国からのこうした削減目標の表明を期待し、AWG4で附属書I国の削減ポテンシャルの幅が明らかになること期待しているとしました。
アンブレラグループ(加、豪、NZ、日、カザフスタンなど)を代表してオーストラリアは、この部会への専門家の情報を歓迎すると発言していました。
EUを代表してドイツは、低炭素型経済への地球規模での転換が必要で、そのためには、ここ15-20年のうちに地球全体の排出量を頭打ちにすることが必要であり、気温上昇を2度未満に抑えるという目標にあらためて言及しました。また、そのために必要な費用は、IPCCの第4次評価報告書の、GDPの伸びに与える影響は0.12%よりも小さいという言及にふれていました。
EITグループ(スイス、韓国、メキシコ、リヒテンシュタイン、モナコ)を代表してスイスは、国ごとの現状を考慮した努力がなされるべきだと発言しました。

通信2-2 日本は本当に乾いた雑巾を絞っているのか?(ECO記事より)

2007年05月16日 | SB26通信
もちろん、日本は世界でもエネルギー効率のよい国の一つです。二酸化炭素の排出内訳を部門別に見てみると、EUとアメリカと比べて民生と運輸がとても小さいことがわかります。要するに、日本の高いエネルギー効率は産業部門ではなく、民生と運輸に支えられているのです。一方で、特別作業部会(AWG)に提出された日本の意見を読むと、まるで産業部門の排出が少ないように思わされてしまいます。
日本はAWGの意見提出にあるように、1970年代の石油ショック以降1990年まで確かにエネルギー効率を改善させました。しかし、日本が意見提出にうっかり付け忘れた90年以降のデータを政府の資料に基づいてグラフに付け足してみましょう。グラフで明らかなように、製造業全体の排出は90年以降は改善しておらず、セメントにおいては悪化しています。
日本の温暖化対策の中心である京都議定書目標達成計画には、効果的な対策が盛り込まれておらず、自主的な行動に委ねられています。結果として、日本全体の二酸化他酸素排出は、削減どころか、2005年で8.1%も排出も増えています。この目標計画では、石炭火力発電所の増加を防ぐことができず、石炭火発からの二酸化炭素排出は90年から2004年までに3倍に増えています。よって、エネルギー転換だけでも、大きく二酸化炭素を削減することができます。日本は石炭などの化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を促し、また産業、運輸、家庭部門のエネルギー効率をあげる方法を考えるべきです。政府は2013年以降に向けて日本の真の削減可能性を探らねばなりません。日本はそろそろ「乾いた雑巾だ」と叫ぶ姿勢を改めるべきです。

ECO記事 http://www.climatenetwork.org/eco/sb-26-bonn/200705%20eco%20sb26-2.pdf/view

京都議定書目標達成計画の見直しに関する気候ネットワークの情報
http://www.kikonet.org/theme/kokunai/policy6.html

通信2-1 日本の特別作業部会の意見提出

2007年05月16日 | SB26通信
日本が先進国の更なる削減について議論する作業部会において意見提出をしたこと、またその内容については、通信1で述べました。

この意見提出は日本がいかにエネルギー効率がよい国かということを詳細に述べていますが、意見が求められていた日本の「削減可能性とその幅」の幅の方については、ほとんど何も書かれていません。

意見提出については、前向きに削減を進めようとしている国、また、途上国からしても、議定書の削減から逃れようとしているように写っています。

そこで、温暖化に取組む環境団体(世界300団体以上)で構成されている気候行動ネットワーク(CAN)が発行しているECOでは、「日本は本当に乾いた雑巾を絞っているのか?」という記事を掲載しました。

通信1-4 長期的協力のための行動に関する対話(ダイアログ)

2007年05月08日 | SB26通信
ダイアログとは、気候変動枠組条約の下で、アメリカなどの京都議定書を批准していない国も参加して開催される将来の温暖化対策のプロセスです。ここでは、主に将来の対策に関する情報交換がなされていますが、今回は①適応事業の促進、②技術の可能性について検討される予定です。ダイアログは5/16、17の2日間です。

通信1-3 第3回特別作業部会(AWG)での課題

2007年05月08日 | SB26通信
2005年のCOP11以来、2013年以降の先進諸国の更なる約束(削減義務)について議論する特別作業部会のプロセスが開始し、議論が続けられています。昨年のCOP12では、特別作業部会について以下の内容が決まりました。

・(a)削減可能性と先進国の排出削減目標の幅の分析、(b)排出削減目標の達成手段の分析、(c)先進国の更なる削減義務の検討の3 点について検討すること
・2007 年は(a)に焦点をおいて検討すること
・第3回特別作業部会で検討する、削減可能性や政策の効率性やコスト等について、2007 年2 月23 日までに締約国に意見提出を求めること
・ワークショップで報告を受けたい外部専門家や組織について、2007 年2 月23 日までに締約国に意見提出を求めること
・第4 回特別作業部会(AWG4)を2007年夏に開催する可能性の言及

これらの決定を受けて、今回の第3 回特別作業部会(AWG3)では、以下の内容について検討されます。

検討事項
・ 先進諸国の温室効果ガス排出削減の可能性
・ 先進国の排出削減目標の幅の分析
・ 今後AWGの進め方

京都議定書を継続させていくためにも、2013年以降の枠組みの議論は2008年末、おそくとも2009年末までには終えなければなりません。今回は、上記の検討事項について情報・意見を交換し、今年12月に開催されるCOP13では、2013年以降の具体的な交渉に入れるように議論を進める必要があります。

今回の削減可能性と目標の幅について、提出されている意見は以下の通りです。

意見提出国:EU、アイスランド、日本、NZ、ノルウェー、サウジアラビア、南アフリカ、スイス

【日本】
-世界の温室効果ガス排出量をできるだけ早い時点で半減させる
-世界の温室効果ガス排出が多く、先進国だけの削減では足りない
-現在の京都議定書は、国別に一定の基準年から総量排出削減が求められるており、公平とは言えない
-今後は妥当な基準年、京都(柔軟性)メカニズムについて見直す必要。また、目標達成は励まされるべきもので罰せられるべきでない
-官民一体となった努力により、日本は省エネ大国
-セクター別エネルギー効率を比較しながら、削減可能性が大きいところから削減するのが費用効果的
-将来にむけては、エネルギー効率改善、原子力・燃料電池・炭素回収貯留(CCS)技術などを推進する
-アジア太平洋パートナーシップ(APP)でクリーン技術の普及を行う

【EU】
-世界の温室効果ガスは2050年までに50%削減される必要があり、先進国は2030年までに30%削減、2050年までに60-80%削減する必要がある
-EUは2013年以降の枠組が決まるまで、独自に2020年までに20%削減目標を掲げる
-まだ地球の地表平均気温の上昇を工業化以前より2℃に抑える余地はある。そのためにできるだけ多くの国の参加が必要。
-EUでの削減余地は多く、省エネ、再生可能エネルギー導入を進める
-長期的に見れば炭素回収貯留(CCS)技術と水素利用など技術の研究開発が必要
-行動しないよりも、早く対策をとった方がコストは安い
-エネルギー安全保障、エネルギー競争力、雇用創出、地域の健康影響の面からしても、対策をした方が効果高い
AWGでは、
-技術的経済的潜在性があることを認識しながら、対策の障壁が何であるかを分析する必要
-国際的な文脈で低炭素技術を更に発展・普及させる方法、エネルギー効率を上げる方法の検討をする
-国際輸送や土地利用の変化・森林セクターなど特定分野の削減可能性検討
-世界規模での炭素市場の枠組を作る必要

【NZ】
-現在削減目標を掲げていない国の参加も必要
-対策でかかるコストによって国際競争力が落ちないようにすることが必要

【サウジアラビア】
石油輸出国の影響
-先進国の石油製品への課税は、結果としてこれらのものを輸入する途上国に負担がかかる
-石油の需要が減ることによって石油に依存している国の収入が減る
-改善策として、交通部門を規制外にする、石炭などへのエネルギーの補助金をやめる、炭素回収貯留(CCS)を促進etc.

【南ア】
-事務局が意見提出に基づいてテクニカルペーパーを作成することを提案
-AWGの議論は2008年までに終了することが望ましいが、遅くとも2009年末まで

【ノルウェー】
-2℃に抑えるためには、先進諸国は2020-2030年で20-30%削減する必要。
-ノルウェー独自には2050年まで50-80%削減目標を掲げている
-交通、暖房、石油・ガス、発電での削減可能性
-既にCCSを利用しており、今後も進める予定

意見内容の詳細については、以下のサイトからダウンロードできます。(英語)
http://unfccc.int/resource/docs/2007/awg3/eng/misc01.pdfこれらの意見提出をもとに、第3回特別作業部会は来週の5/14~18に開催されます。