CASA 地球温暖化の国際交渉

地球温暖化に関する国際会議の開催期間中、現地から参加レポートをお届けします。

COP14・CMP4終了にあたっての声明

2008年12月13日 | COP14・CMP4
「コペンハーゲンに向け、交渉のスピードアップを!」

 12月1日から開催されていた気候変動枠組条約第14回締約国会議(COP14)と京都議定書第4回締約国会合(CMP4)は、期待されたコペンハーゲン(COP15/CMP5)に向けた前向きのメッセージを出すことなく終了した。

 今回のCOP14/CMP4の任務は、来年のコペンハーゲンでの合意に向けて、議論を整理し、交渉の土台となるテキストと作業計画を策定することであった。
しかし、条約の下で長期協力行動についての決定には何の実質的な内容も新たなメッセージもなく、議定書の下で2013年以降の先進国の削減義務についての決定、世界全体の温室効果ガス排出のピークアウトや2050年半減目標、先進国の2020年目標についての記述は、バリの決定とまったく同じである。バリから後退はしなかったものの、一歩も前に出ることはできなかった。

 2009年の作業計画は策定されたが、実質的な交渉の開始は6月まで先送りされてしまった。よほど交渉のスピードをあげなければ、コペンハーゲンでの合意には間に合わない。

 こうした結果になったのは、日本、オーストラリアやロシアなどが、自らの中期目標を明確にせず、バリの合意から一歩も前に出ようとしなかったからである。この日本の交渉姿勢が、化石賞の年間2位という不名誉な結果につながった。こうした日本政府の後ろ向きの姿勢は、国内での排出削減が進まず、2007年の温室効果ガスの排出量(速報値)が90年比で8.7%も増えてしまっている状況を反映している。国内での削減を確実に進めることが、国際社会で信頼を得る唯一の方法である。

 コペンハーゲンまで1年を切ったが、政治的モメンタムさえ高まれば、IPCC第4次評価報告書が求める大幅な排出削減への道筋をつくることは、まだ十分間に合う。今回の会議の結果は、私たち日本の市民にとっても、いかにコペンハーゲンに向けて関心を高め、日本政府に決断を迫れるかという課題を残した。

COP14に参加して

2008年12月13日 | COP14参加者日記
桑原沙耶

 今回COP14を傍聴する機会を頂き,私は環境問題についてはほとんど無知ではあったけど大変よい経験をすることができました。会議等を聴いて考えさせられる(考えなければならない)ことがとても多くあったけど,ここでは学生として考えたことについて一筆。

 会議やNGOの話を聞いていると,日本だけでなくアメリカ,EU,アジア諸国,途上国等のそれぞれの立場や思惑について客観的な観点から考えることができた。それは日本で聞くイメージのような不確実で偏見を含むようなモノではなくて,はっきりと目前に突きつけられた真実だった。各国の化石燃料の保有高,人口やGDP,CO₂排出量といった多くの要素によって,国の立場や意見は形成され,交渉が進められていた。実際にはCOP13からほとんど進まなかったようだが。そこでは自国の利益を守ろうとする立場,積極的にCO₂削減に動こうとする立場,アメリカや日本など先進国の行動なしには腰を上げないという立場など各国の利害がぶつかっていることを強く感じた。正直に言えば,自国に不利な条件をのむことなしに全てを決定したい,自国の矛盾を認めることなく他国を批判したり意見を述べるといった様子に,私はとてもいたたまれない,悲しい気持ちになった。環境問題というさまざまな要素に関連している複雑な問題について,専門知識をもって意見を述べることは私には出来ない。しかし,少しずつでも多くの国の実情・事情についての理解を深めていくことが,ひいては私たちの環境問題それ自体に対する理解と問題意識・自らの意見の形成に繋がっていくと思う。他国や自国の批判をするのはそれからでも遅くはないのだ。

 2008年は金融危機やオバマ大統領の誕生などアメリカにおいて多くのことが起こった年であったが,会議においてもその点は多くの機会において取り上げられた。アメリカは変わるかもしれない,いや変わるのだという期待が多く寄せられていたようだった。対して日本はどうか。環境問題が国内で取り沙汰される機会よりも景気対策・定額給付金について報道される機会のほうが圧倒的に多く,環境問題を意識する機会は少ないように思う。エコやリサイクルなどが叫ばれる場面は多いが,世界全体,地球規模での環境問題意識は薄いように思われる。特に学生にしてかり!だと思うのは私だけ??

 目前に並べられた,自分が得ているだけの情報が全てではなく,事実はもっと複雑であることを認識しないといけない。もっと謙虚にならないと!!批判や懐疑は知識がなくても出来ること。誰でも出来る。でも多くの事実や事情,国の状況を知れば知るほどそれは難しくなってくると思う。自己満足の意見製造機にならないように,もっともっと勉強しないとなぁ~と自覚させられた1週間でした。
 
 追記:このような機会を与えて下さった兼平先生,色々なお話を聞かせて下さったCASAの早川さんに感謝します。ありがとうございました。

COP14・CMP4 ポズナニ通信 6(12/12)-4

2008年12月13日 | COP14・CMP4
◆会議場から

 会議最終日、アル・ゴア元アメリカ副大統領が会場に来て、講演を行いました。講演のなかで、アル・ゴア氏は、オバマ新政権の気候変動問題に対する前向きな姿勢を評価し、その中でも特に、オバマ新大統領の「(交渉の進展を)遅らせる時代は過ぎた。そして拒否する時代も過ぎた。温暖化は本当に起こっているのか?というような論争も過ぎた。私の政権では、新たなアメリカの気候変動問題へのリーダーシップを発揮するだろう」という演説に触れ、最後に、大気中の二酸化炭素濃度を350ppmに安定化する重要性を訴え、今後とも「希望」 を忘れずに取り組んでいくべきだとし、「Yes, we can!」という言葉でスピーチが終わると、大喝采の拍手が起こりました。

COP14・CMP4 ポズナニ通信 6(12/12)-2

2008年12月13日 | COP14・CMP4
★ 12月12日付「ECO」

 12日付けのecoでは、「交渉ペースをスピードアップせよ!(Pick up the Pace)」というメッセージが表すように、カタツムリの挿絵が載せられています。
その内容は、「年々進展する科学的知見が提示する削減目標とは異なり、今回の交渉はカタツムリのようなペースで進んできた。どのようにすれば、来年のコペンハーゲンに向けて交渉をスピードアップできるのか?」で始まり、以下のように続いています。


 ポズナンでの交渉では、来年への地ならしとして、AWG-LCAとAWG-KPの2009年の作業計画に対して合意できたことは一歩前進だ。しかしながら、各国の交渉者たちは拘束力を持つ合意を得られなければ、この世に存在するいかなる文章も全く意味をなさない。

 まず、今回の交渉では各国のポジションが全く変わらなかった。これは当たり前のことのように聞こえるが、昨年のバリでの合意の後、それぞれの国内政策をみると、全く何も変化していない。国内政策が前進していれば、ポズナンでの交渉が前進できたはずだ。とくに、2020年までに25-40%削減を目指す中期目標に関しては、オーストラリア、カナダ、ロシアと日本がこの目標を拒んだことによって、バリでの合意から今日まで、文字通り一年を無駄にしたといっても過言ではない。
それとは対照的に、南アフリカや韓国からNAMA(国内の適切な緩和行動)を強化する建設的な提案が提出されている。とくにメキシコは、自ら長期目標を掲げ、先進国にも劣らない存在感を示している。

 しかしながら、「森林減少および劣化に起因する排出の低減(REDD:Reducing emission from deforestation in developing countries)と「土地利用、土地利用の変化、森林(LULUCF)」に関しては進展が見られなかった。先進国と途上国はLULUCFの抱える隙間を埋め、REDDにおける協調を強化すべきであろう。
そのほかの分野では、締約国は建設的な意見を出し始めた。特筆すべきは、木曜日に開催された非公式な円卓会合で、EUがノルウェー、メキシコとG77+中国による資金に関する提案に対して真剣に検討する動きを見せたことであろう。この動きは、次回のボンでの会合における、AWG-LCA議長の仕事を円滑に進めさせるであろう。
資金と技術に関する課題は早急に進展させるべきであり、そのためには思い切った決断(tough decision)が必要である。適応基金に関する合意は、各国の閣僚発言でも述べられていたように適応対応は逼迫しているが、交渉は複雑さが増して難航している。

 次回のボンでの会合では、EUがリーダーシップを発揮できる場である。アメリカでは、オバマ次期大統領が気候変動問題に対して前向きな姿勢を見せている。次回のボンの会合ではアメリカ政府代表が明確で野心的なマンデートを持って交渉に望めるように体制を整えるべきだ。そうすれば、途上国との新しい動きを築けるだけでなく、日本、オーストラリア、カナダ、ロシアなどに言い訳を許さないであろう。

 今回の交渉では、各国代表のムードは鉛色(dull grey)だったが、世界の科学者たちのムードは警告を発するべく真っ赤 (bright red with alarm)である。次回のコペンハーゲンでの合意に向けて、各国代表たちは交渉を行き詰らせるのではなく、新たなマンデートとともに動き出すべきである。

COP14・CMP4 ポズナニ通信 6(12/12)-1

2008年12月13日 | COP14・CMP4
◆会議の結果をどう見るか

 今回の会議はバリから後退もしませんでしたが、一歩も前に進むことができませんでした。このCOP14・CMP4は、コペンハーゲンに向けて、交渉に弾みをつける強力なシグナルを送ることが期待されていましたが、その意味では期待外れというほかありません。

 コパンハーゲンまでの作業計画は策定されましたが、実質的な交渉の開始は6月まで先送りされてしまいました。追加的な会議の余地は残されているものの、半年の交渉で合意に至るには、よほど交渉のスピードをあげなければなりません。

 今回の会議がこうした結果になったのは、なんと言っても日本、オーストラリアやロシアなどが、自らの中期目標を明らかにせず、バリ合意から先に進めることを拒んだからです。斉藤環境大臣は、閣僚級会合のステートメントで「来年のしかるべき時期に、日本の中期目標を明らかにする」と発言しましたが、もし日本の中期目標が6月の実質的な交渉開始に間に合わないようなことになると、日本がコペンハーゲンでの合意を妨害することになります。

 また、日本政府を始め、アメリカのオバマ政権の政策待ちの雰囲気も、こうした結果に影響を及ぼしたことを否定できません。オバマ次期アメリカ大統領は、現在の90年レベルから17%上回っている温室効果ガス排出量を2020年までに90年の水準に戻し、2050年までに90年比で80%削減し、連邦としてキャップ&トレードの排出量取引を導入するとの方針を打ち出しています。12月11日には、気候行動ネットワーク(CAN)の代表と斉藤環境大臣の懇談が行われましたが、そこでアメリカのNGOが、このCOPにも参加しているケリー上院議員(前回の民主党の大統領候補)から聞いた話として、ケリー議員自身は2020年により高い目標が必要だと考えており、米国内でもそうした意見は強いと発言していました。アメリカのオバマ政権の政策をより強いものにするためにも、この交渉から明確なシグナルを送ることが求められています。

 COP3の時も、COP1から8回の交渉会議(AGBM)が行われましたが、COP3が始まるまでほとんど何も決まっておらず、最後の3日間で合意が成立しました。コペンハーゲンまで1年を切りましたが、政治的モメンタムさえ高まれば、まだ十分間に合います。

 問題は、日本の市民である私たちが、いかに関心を高め、日本政府に決断を迫れるかにあります。日本が後ろ向きの行動を取るたびに、海外のNGOから「日本政府を変えることができるのは、日本の市民である君たちだ。」と言われます。今回の会議の結果は、私たち日本の市民にとっても、重い課題を残しました。

COP14ポツナニ会議オブザーバー参加雑記

2008年12月12日 | COP14参加者日記
 CASA監事 愛媛大学  兼平裕子

 CASAを通じてCOPに参加するのは昨年のバリ会議に続いて2度目の体験です。昨年はCASAの高齢者(?)2人と行動を共にしていて、自称『お達者クラブ』だったのですが、今回は愛媛大学の学生3人と京都大学の学生1人の計5人といっしょに参加しました。(私を除いて)平均年齢がぐっと若返ったメンバーでした。
 
 今回、COP14がポーランドで開催されるということで、ぜひともアウシュビッツに行ってみたいと思っていました。出発のルフトハンザ便がエンジントラブルで14時間遅れてしまったのをこれ幸いと、予定のベルリン着からクラクフ着に強引に変更してもらいました(←これをゴネ得というのでしょうか?)。アウシュビッツでは、唯一の日本人公式ガイドの中谷さんから詳しい説明を聞くことができました。『百聞は一見にしかず』です。若い方々は、ぜひとも、アウシュビッツの現実をみてください。人間が、合法的に、このようなホロコーストを行うことができたのです。決して忘れてはいけない過去だと思います。
 
 さて、会議場ではけっこう多くの日本人をみかけました。いわゆる温暖化問題の分野で名前が知れている大学の研究者や企業関係の権威、NGO関係者に遭遇することができました。ただ、去年のバリ会議は日本から近いこともあって、学生の参加者も多かったのですが、今回はそれほど多くの学生参加者はいませんでした。来年のコペンハーゲン会議はもっと、もっと多くの市民や学生さんに参加してほしいと思います。
 
 会議場でみかけた日本人の中で一番驚いたのは、朝日新聞のY記者に遭遇したことです。あるセッションでの質問者が「朝日新聞のYですが・・・」と名乗ったとき、びっくりして振り返ってしまいました。Y記者は、わたしが個人的に1995年以来ずっとかかわってきた瀬戸内海のいわゆる「ゴミの島」と呼ばれた豊島産廃問題にかかわってきた記者さんで、今年の夏も「島の学校」でTシャツ・短パン姿のY記者をみかけていたのですが、その彼が、これほど堪能に英語をしゃべっているのを目にして、またまた、びっくりしてしまいました。やはりコミュニケーションの手段としての英語ができないと、何も始まらないのだとひしひしと感じました。
 
 国連の会議なので、英語で進められるのは言うまでもないことです。英語が理解できて当然という参加者の中で、その内容を果たしてどこまで理解できるているのかという市民のレベルの立場としては、英語理解は一大事です。
 
 去年は英語の単語がわかっても、その意味する内容がわからないというジレンマをずっと感じていましたが、今年は会議の内容に関しても、進行方法に関しても大分わかってきたせいか、かなり理解できるようになりました。ただ、質疑応答の内容まで理解するレベルには達していなくて、???という場面がたくさん
ありました。来年のコペンハーゲン会議までには、もっともっと英語をブラッシュアップしたいと思います。

 そして、来年のCOP15で2013年以降の枠組みが決まってほしいと切に願っていますし、コペンハーゲンでもおじゃま虫になりたいと思っています。

COP14・CMP4 ポズナニ通信 5(12/11)-7

2008年12月12日 | COP14・CMP4
◆会議場から

 今回の会議には、環境NGOも多数参加しています。CASAも参加する、気候変動問題に取り組む環境NGOのネットワークである「気候行動ネットワーク(CAN)」関係の参加者も300人を超えています。

 CANは、会議の始まる前日の日曜日と会議の中間の日曜日に5時間程度の戦略会議を開催します。また、毎日午後2時から3時にも会議をもって、情報交換とロビー戦略を討議します。CANの重要なタスクに、ニュースレター「eco」の発行があります。この「eco」は、COPなどでは毎日発行され、会議場でもっとも人気のあるニュースレターです。

 また、毎日、その日の会議で最も後ろ向きの発言や行動をした国に対し、「化石賞」を選んで授与しています。化石賞は、政府関係者も気になるようで、バリの2日目に化石賞の1,2,3位を独占したときには、官房長官が不快感を示してくれ、経産省の交渉担当者が書いた本にも、「気候行動ネットワークが会議で『反環境的行動』をとった国に与える『化石賞』は、各国の交渉担当者の間でも日常的な話題として取り上げられる。」(「地球温暖化問題の再検証」)と書かれています。

COP14・CMP4 ポズナニ通信 5(12/11)-6

2008年12月12日 | COP14・CMP4
◆サイドイベント

日本の産業界とドイツの産業界の気候変動問題への「ビジョン」

 12月10日、日本経団連とドイツ経団連(BDI)によるサイドイベントが開催されました。日本経団連は「ポスト京都に向けた日本のセクター別アプローチ」、ドイツ経団連は「気候変動問題はビジネスチャンス」というテーマでした。
まず、日本経団連が日本の産業界のセクター別アプローチを「宣伝」している理由は、以下の点にまとめられます(以下は、CASAの見解とは異なります)。


第1に、現行の京都議定書による日本の6%削減数値目標に満足していないためです。なぜなら、日本のエネルギー効率は世界的にも非常に高いレベルにあり、6%という科学的根拠のない削減数値目標を課されるのは非常に不公平です。よって、部門別に削減ポテンシャルを数値化し、それを積み上げて国の削減努力目標とすべきであるとしています。

第2に、日本版セクター別アプローチは、部門別・産業別にベンチマーク(技術の水準)を設定し、先進国から途上国へ、エネルギー効率の高い技術移転をすることにより今後さらに増大すると思われる途上国(特に中国やインド)からの排出を抑制できるメリットがあります。

第3に、国際競争力を落とさないために、同じ土俵を作るべきです。日本企業は「乾いた雑巾を絞る」ような努力をしている一方で、環境規制の緩い中国などの企業が温室効果ガスを大量に排出し、国際競争力を高めていることは不公平です。


 日本版セクター別アプローチは賛否で様々な声が聞かれるのですが、実現性を考える上で障害になっているのは、バウンダリー設定の難しさと、それに関するデータがまだ十分に集められていないことです。

 バウンダリーは、特定の分野において技術水準の設定の境界線をどこまで設けるのかが難しいのです。鉄鋼業を例にすると、粗鋼の生産方法には、高炉・転炉法(主な原料は鉄鉱石)、電炉法(主な原料は鉄スクラップ)があり、それぞれの生産方法における技術は多種多様です。同じ業界においても様々なベンチマークが存在するので、世界中から膨大なデータの収集と分析が必要であり、客観性のある指標を策定するのが困難です。また、技術移転先の受入れ能力や移転に伴うコスト負担など、課題はたくさん残されています。

 さて、それに比べてドイツ。「環境先進国」と言われていますが、企業の気候変動問題に対する姿勢も先進国の中でも前向きです。2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比で31%削減する中期目標を自主的に検討しており、再生可能エネルギーの普及とエネルギー効率の向上に尽力しています。この背景には「気候変動問題は、今後何世紀にもわたり決して逃れることのできない問題であり、今対策をせずしていつするのか」という考え方が根底にあります。ドイツのビジネスリーダーたちは、「短期的な利益ではなく、中期・長期的な利益を重視する」と明確に述べています。農業で例えると、「今すぐに作物を刈り取ってしまい、将来食べるものがなくなってしまうことを選ぶのではなく、今こそ種を蒔く時であり、将来実りのある生活を実現すべき」なのです。

 さらに、「現在の金融危機は低炭素社会を実現する良い機会である」、「地球温暖化問題はわれわれにとってビジネスチャンスである」と温暖化対策へ積極的な姿勢を表明しており、これがEUのリーダーシップを発揮している原動力の一つなのでしょう。政府が明確な長期的「ビジョン」を打ち出して政策を強化していくことで、産業界の背中を後押ししているようにも見受けられます。
このことは、イギリスにおいても見ることができます。イギリス政府は、企業の緩和努力と適応努力を補助するために、それぞれの専門機関を設けて、自国の産業をいち早く低炭素化することで世界のビジネスリーダーにさせようとしています。
しかしながら、これらヨーロッパの産業界がすべて前向きに温暖化対策に取り組んでいるわけではありません。EUが自動車業界に乗用車の燃費を120g-CO2/kmにする法案を提出したのに対して、高級車を主に製造し、燃費の比較的悪いドイツ・イギリスの自動車業界が猛反対をし、この法案成立を遅らせています。

 このサイドイベントに参加して、企業が短期的な視点だけでなく、中期・長期的な視点で温暖化対策につながる戦略を打ち出すためには、まず、政府が明確なビジョンを打ち出すべきだと痛感しました。

パフォーマンス 

 12月11日の朝、会場入り口でWWF(世界自然保護基金)が、「世界は君(各国代表団)を注視している(THE WORLD IS WATCHING YOU!)」のバナーを掲げたパフォーマンスを行っていました。これは、「ゲゲゲの鬼太郎」の「目玉親父」??