CASA 地球温暖化の国際交渉

地球温暖化に関する国際会議の開催期間中、現地から参加レポートをお届けします。

NGO報告会 「COP12、COPMOP2はどんな会議だったか」 

2006年12月05日 | COP/MOP2通信
CASAでは独自に1月(大阪)、2月(東京)頃にCOP報告を含めて国際交渉に関するセミナーを開催する予定です。
今回のお知らせは、他のNGOと一緒に開催するものです。

11月6日~11月17日、ケニアのナイロビにて、ナイロビ会議(COP12/COPMOP12、気候変動枠組条約第12回会議及び京都議定書第2回締約国会合)が開催されました。この会議は、前回のモントリオール会議で開始した2013年以降の次の枠組みに関する議論の前進が期待された会議でありました。この会議の成果はこれからの温暖化防止に向けどのような意味を持つのでしょうか。会議に参加したNGOの主要メンバーが、会議の結果とこれからの課題についてわかりやすく報告いたします。どうぞふるってご参加ください。

日時 12月15日(金) 18:30~21:00(開場18:10) 

会場 南青山会館 (3・4号会議室)
●TEL:03-3406-1365
●住所:東京都港区南青山5丁目7番10号
●交通:地下鉄表参道駅より 徒歩5分(B3出口)   
地図はこちらhttp://mitsunobu.com/map/minami-aoyama.htm

参加費 主催・共催団体いずれかの会員500円、一般1000円

プログラム(予定) 
挨拶:浅岡美恵(気候ネットワーク)
報告:小野寺ゆうり(FoE Japan)、山岸尚之・小西雅子(WWFジャパン)、早川光俊・大久保ゆり(地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA))

         
お申し込み 
※件名を「NGOナイロビ会議報告会 参加申し込み」とし、氏名・所属・TEL・E-mail・会員か一般かをご記入の上、E-mail(tokyo@kikonet.org)またはFAX(03-3263-9463)で気候ネットワーク東京事務所までお申し込み下さい。

主催・共催 
主催団体:気候ネットワーク
共催団体:FoE Japan、WWFジャパン、地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)、環境エネルギー政策研究所(ISEP)

【COP/MOP2声明】 議論のために残された時間は少ない!

2006年11月18日 | COP/MOP2通信
COP12・COPMOP2   2006年11月17日(ケニア:ナイロビにて)
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)

 ここナイロビで開催された気候変動枠組条約第12回締約国会議(COP12)と京都議定書第2回締約国会合(COPMOP2)は、2013年以降の枠組みについての議論を進めること、適応基金の運営方法と運用主体を決定し、基金が実際に運用できるように議論を進めることが課題であった。

 COPMOP2は、2013年以降の先進国の削減目標について検討されるべき内容と作業スケジュールに合意し、途上国を含む京都議定書の見直し(レビュー)については、2008年に第2回目のレビューを行うことが合意された。適応基金については、運営方針など運営方法についての決定を採択し、適応5ヶ年計画については2008年半ばまでのナイロビ作業計画に合意した。HFC23破壊事業や炭素固定技術(CCS)を、CDM事業として認めるかどうかについての結論は先送りになった。

 2013年以降の削減目標についての議論のプロセスが合意されたこと、途上国を含む議定書の見直し作業が決まったことは評価してよい。また、今回の会議で、このプロセスが条約の究極の目標を達成するという共通の目的への挑戦であることが確認され、温室効果ガス濃度を現在のレベルに安定化させるためにも今世紀半ばくらいまでに世界の排出量を半減させる必要がある、というIPCCの警告が多くの国の認識として共有されたことは重要な成果である。また、気候変動に最も脆弱な地域のひとつであるサブサハラ・アフリカで開催された初めての会議でもあり、適応問題についての議論に前進が見られたことも大きな成果である。

 今回の会議のなかで繰り返し強調されたのは、条約2条の究極の目標との関連で長期目標を検討することの重要性である。多くの科学的知見は、平均気温の上昇が工業化以前(1850年以前)から2℃を越えると、規模も範囲も質的に異なる影響が加速度的に拡大することを示している。このままでは2040年頃には2℃を越える可能性が高い。しかし、先進国の温室効果ガスの排出量を削減どころか増え続けている。いましなければならないことは、京都議定書の削減目標を確実に達成すること、そして、2013年以降の枠組みの議論について、第1,第2約束期間の間にギャップを生じさせないようなタイムリミットで結論を得ることである。

 ここケニアでは洪水の危険のために6万人が避難していると報道されている。気候変動は、これまで考えられてきたよりはるかに急速に進んでいる。議論のために残された時間は少ない。

通信5-1 京都議定書の見直し(レビュー)

2006年11月18日 | COP/MOP2通信
 最後まで残った議題は、京都議定書9条の「議定書の見直し(レビュー)」についての議題でした。先進国側は、この9条の議定書レビューのプロセスについては、先進国側にはこのプロセスを通じて途上国側の参加についても議論しようとする思惑があり、そのことがわかっているだけに途上国側は、事前の意見提出では議定書に規定がある以上レビューはしなければならないが、ごく簡単なレビューに止め、次のレ ビューはCOPMOPで議論して決めようというスタンスでした。

 先進国側がこの9条のレビューの議論が進まないと議定書3条9項の先進国の削減目標の議論も進めない、逆に途上国側は議定書3条9項の先進国の削減目標の議論が進まないと9条のレビューの議論が進めないとし、両方の議論が進まないことがもっとも心配されていました。

 通信4で報告したように議定書3条9項の先進国の削減目標の議論については11月14日に合意が成立したため、9条の議論がこのCOPMOP2の最重要な課題として残されていました。

 11月15日に閣僚級のハイレベル会合が始まってからも、インフォーマルな調整が続けられ、いくつもの議長の提案(ドラフト)が検討されては消えていきました。

 最後に11月17日午前の議長の提案(ドラフト)に沿って調整が続けられ、17日午後7時30分頃、やっと決定案が配布されてCOPMOP2の総会が始まり、午後8時45分にようやくこの決定案が採択され、COPMOP2は閉会しました。

 この決定案の要旨は以下のとおりですが、第1回目のレビューはこのCOPMOP2で終了し、第2回目のレビューをCOPMOP4ですることになっています。6項では、このレビューは「いかなる国の新たな約束につながるものでもない」として途上国の主張に沿ったものになっていますが、7項で「レビューに引き続いて、適切な行動をとらねばならない」との記述があり、将来の途上国の何らかの参加に含みを持たせるものとなっており、この7項は先進国側の主張が反映されています。ちなみに、この「レビューに引き続いて、適切な行動をとらねばならない」というのは議定書9条の規定に記載されている文言です。

 私たちNGOは、9条の見直しと3条9項の先進国の削減目標の議論に2008年までの期限を設けるよう主張したので100点満点とはいきませんが、9条のレビューのプロセルが決まったことは、これまで途上国が途上国の新たな約束につながるような議論をまったく拒否していたことからすれば、大きな前進だと評価してよいと思います。

 気候変動問題は、途上国の何らかの参加がなければ解決できないことは明らかです。しかし、共通だが差違ある責任の原則からすれば、先進国がまず削減努力を精一杯すべきです。また、先進国が温室効果ガスの排出量を増加し続けている状況では、この京都議定書のレビューのプロセスが始まっても、スムースに議論が進まないことも明らかです。

 この問題では、途上国側にも島しょ国連合や後発開発途上国(LDC)などのなかに前に進めようとする動きが出てきており、こうした動きを大事にしながら、3条9項の先進国の削減目標の議論と9条の見直しの議論を並行して進め、最終的には連携し、統合した結論を得る必要があると思います。

京都議定書9条の決定案(FCCC/KP/CMP/2006/L.7)

 1 議定書は重要な最初の行動で、気候変動に対処する決定的に重要である。
 2 議定書は先進諸国が気候変動対策でリードをとることを可能にし、CDMなど、途上国との間に共同して行動を起こす関係を助長した。
 3 今後特に適応に関してはさらに具体化し、議定書の実施はさらに広げられなければならない。
 4 第2回目のレビューを2008年のCOPMOP4で行う。
 5 このレビューは、IPCCの第4次評価報告書(AR4)を含む最新の科学に基づいて行う。
 6 第2回目のレビューは、COPMOP決定による行動の先入観をもたせるものであってはならず、また、いかなる国の新たな約束につながるものでもない。
 7 議定書9条1項に、COPMOPはレビューに引き続いて、適切な行動をとらねばならないとされていることを想起する。
 8 COPMOP3で、何をレビューするかを検討する。
 9 2007年8月17日までに、締約国にレビューの内容についての意見を提出する。

通信5-2 炭素回収隔離技術(CCS) のクリーン開発メカニズム(CDM)事業

2006年11月18日 | COP/MOP2通信
 CDMの議論は、炭素回収隔離技術 (CCS) と新規HCFC22破壊事業が認められるかどうかというのが最も懸念していた点ですが、今回はどちらも先送りにされました。

 CCSCDMは、締約国の意見提出とSB24 でのワークショップ、CDM理事会からの情報を受けて議論されました。

 決定では、認めるかどうかを今後検討していくためにも、地中貯留の新たな方法論については引き続き理事会に検討するように要請し、国際機関やNGOがCCS技術のキャパシティービルディングのワークショップを開催することを奨励した一方で、理事会の検討は今回の決定を考慮する必要があること、方法論の認証にはCOP/MOPのガイダンスが必要であることが明記されています。

 また、IGO、NGOに2007年5月31日までに、締約国には9月21日までに、長期の物理的な漏れと不確実性、長期の監視問題、貯留する土地の基準などについての意見を提出するように求めています。また、COP/MOP4で決定を行えるように、事務局がこれらの意見提出についてSBSTA27 で情報をまとめ、COP/MOP3で検討する内容を提案することになっています。

 今回の会議でイランなどの産油国は賛成でしたが、ブラジル、キューバ、小島嶼国連合は反対していました。

通信5-3 適応の5ヵ年計画

2006年11月18日 | COP/MOP2通信
 5ヵ年計画は、2008年半ばまでの行動計画について合意し、その後レビューをしてから2010年末までの計画を決めることを決定しました。活動計画は、先に述べたリスト(a.気候変動の影響と脆弱性、b.適応計画・措置・行動)の中身について、ワークショップ、適応の方法論の報告、各国からの意見提出、リスク評価などを行い、「適応問題」をより明確にしていく作業です。現在は、情報収集と作業の共有が中心ですが、今後2013年以降に適応を位置づける上で、重要な作業になります。

通信4-1 閣僚会議始まる

2006年11月17日 | COP/MOP2通信
 COP12、COPMOP2も残すところあと1日。11月15日からは、閣僚級のハイレベルセグメントも始まり、同時に「対話」も始まりました。

 議論が続いてきた論点についても多くの問題については、決着がついてきています。

 11月14日には先進国の更なる削減義務と制度についての議論は合意に達し、適応問題も主要な議題であった適応基金と5ヶ年計画も合意に達しました。CDMの議論のうち、HFC23の問題は先送りで決着しました。また、パプアニューギニアが提案していた途上国の森林減少からの排出の削減問題も今後のプロセスを決めて決着しました。
残された問題は、京都議定書9条の途上国も含めた京都議定書の見直しの問題とCDM-CCSの問題に絞られてきています。

通信4-2 2013年以降の枠組み

2006年11月17日 | COP/MOP2通信
 2013年以降の枠組みについての議論のうち、先進国の更なる削減義務と制度については特別作業グループ(AWG)での議論は、クタヤール議長のドラフト案を巡って討議が続いていましたが、11月14日に最終合意に達しました。

 その主な内容は以下のとおりです。
 ・先進国の2013年以降の約束についての議論は、条約と議定書の原則に基づいた条約の究極の目標を達成するという共通のビジョンへの挑戦であること
 ・AWGのワークショップでは、特にIPCCの第3次評価報告書が温室効果ガス濃度を現在のレベルに安定化させるためにも今世紀半ばくらいまでに世界の排出量を半減させる必要がある指摘していることが、先進諸国の削減について考える際に有用であることが指摘されたこと
 ・ワークプログラムには以下の検討が含まれる。
 (a)先進国の緩和のポテンシャルと排出削減可能性の分析
 (b)緩和のための手法の分析
 (c)先進国の将来の削減目標(新たな数値目標を含む将来の約束、約束期間など)の検討
 ・議定書と条約のプロセスで関連する決定を参考にすること
 ・IPCCの第4次報告書や国際機関、NGOや研究機関からの情報提供を受けながら検討を進める。
 ・2007年5月に上記の(a)のテーマに焦点をあててAWG3を開催し、同年9月か10月に条約の下での「対話(Dialogue)」の第4回ワークショップの際にワークショップを開催し、12月に第4回AWGを開催する。
 ・2007年2月23日までに、緩和のポテンシャル、現在と将来の政策と措置、技術の削減効果、効率、コストと便益についての各締約国の意見提出を求める。
 ・将来のスケジュールは、第1、第2約束期間の間にgapを生じないように、可能な限り早くAWGの仕事を終えるようにする。
 ・深刻な影響を受ける多くの貧しく脆弱な人々とマーケットメカニズムや京都メカニズムを可能な限り使うことを含めて、国内および国際的な努力が2012年を越えて継続することの明確で強いメッセージを,そして炭素市場が継続されることの市場への明確なシグナルを与えるものである。

通信4-3 適応基金、アフリカでようやく前進!

2006年11月17日 | COP/MOP2通信
 今年の5月に開催されたSB24では、運用主体の議論で止まってしまっていた適応基金の議論がようやくまとまり、COP/MOP決定案が採択されました。決定案では、適応基金の原則、運営方針、運営組織の構成員などについて合意しました。また、今後の会議でどのように議論を進めていくかということについても決められました。まず次回のCOP/MOPでは、今回合意できなかった、

 (a)適格性基準(どのような対策に資金を拠出するか)
 (b)優先事項(どのような対策に優先的に拠出していくか)
 (c)CDMからのクレジット収入の資金化
 (d)基金の制度設計

について合意するように求められています。さらに、2007年2月23日までに適応基金の運営に関心のある組織に今回の決定をどのように運用するかについての意見提出を求め、SB26 でその内容を検討すること、SBI議長に事務局の支援を得て、SB27 の前に(a)~(d)について意見交換し、今後の進展の可能性について相談する機会を設けるように要請しています。

 今回の決定において、適応基金が
 ①COP/MOPの権限とガイダンスのもとに運用されること
 ②気候変動の悪影響に対応するための計画、事業の全費用を拠出すること
 ③運営組織の意思決定は途上国が過半数を占める一国一票制度に決まったこと
は、途上国にとって非常に大きな前進です。

 環境NGOネットワークのCANとしては、今回で運用主体以外について合意できるように働きかけてきましたが、実際に運営段階に入るまでの道のりの3分の1は前進したと評価しています。この決定を守り、2008年までに基金が始動するように議論を前に進めていく必要があります。

 GEFはこの決定の後、このCOPにおいて運用主体を決定するように強く働きかけをしていますが、この決定は運用主体を決めずに議論された上で進んだものであり、運用主体の議論を現時点で再度行えば、GEFに任せたい先進国とそうはしたくない途上国の間で決裂しかねません。また、議定書9条の見直しにおいて、前向きな動きを見せている後発開発途上国および島嶼国までも先進諸国への不信感をあおることになり、交渉全体を後ろ向きにさせる危険性があります。現在CANは、GEFに対して、議論を再開させないように働きかけています。

通信4-4 途上国における森林減少からの排出の削減

2006年11月17日 | COP/MOP2通信
 森林破壊による温室効果ガスの排出は世界の温室効果ガスの排出量の4分の1に及んでおり、アメリカの排出量に匹敵します。とりわけ途上国からの排出としては最大のものになっています。

 吸収源についてのCDMはCOP7のマラケシュ合意で京都議定書の運用ルールが合意されたあとも議論が続けられ、2003年にミラノで開催されたCOP7で、基準年排出量の1%までという条件で、新規植林(afforestation)と再植林(reforestation)についてのみCDMの事業として認めることで決着しました。

 このとき森林減少(deforestation)についてはCDM事業と認められなかったことから、パプアニューギニアが森林とくに熱帯林の破壊を防止する活動についても評価し、クレジットを与えて炭素市場に参加を認めることをCOPMOPの正式な議題として取り上げるよう主張しました。その結果、昨年のモントリオールでのCOPMOP1で正式の議題として取り上げられ、2006年5月の補助機関会合(SBSTA24)で、2006年8月30日から9月1日に第1回ワークショップを、2007年5月の補助機関会合(SBSTA26)の前に第2回ワークショップを開催することが決まっていました。

 この問題は、COPMOP2に並行して開催されたSBSTA25で、
 ①森林破壊の定義や森林劣化の定義や、森林破壊の量的把握の科学的、社会的、技術的な方法論
 ②どのような政策が考えられるか
 ③これらの関連をどう考えるか
などについて話し合われました。

 11月13日、2007年5月の第2回ワークショップの前の2月23日までに各国の意見を提出すること、2007年12月のSBSTA27の前に第3回ワークショップを開催することで合意に達しました。

 森林破壊の防止は気候変動防止にとって重要な課題です。また、こうした活動が評価されその貢献に補償を与えることは、途上国の参加の一形態となりうるものでもあります。しかし、一方で森林破壊の防止のデータをどのように把握するかの不確実性の問題や、何を基準に破壊が防止されたとカウントするのかなどのベースラインの問題、排出量取引などの市場メカニズムとの接合をどう考えるかなどの問題があり、さらに2013年以降の枠組みと密接に関連する問題でもあり、慎重な検討が求められています

通信4-5 HFC23破壊のCDM事業について

2006年11月17日 | COP/MOP2通信
 この問題は、新規に建設されたHCFC22製造工場でのHFC23破壊事業(以下、新規フロン事業)がCDMとして認められるべきなのかどうかが議論されている問題です。HCFC22を製造する際に副生成物として発生するHFC23は温暖化係数が非常に大きく、その回収・破壊を行うことによって非常に効率的にCERを得ることができるため、CDMビジネスとして注目を浴びています。しかし、HFC23破壊のCDM事業を行うことを目的に、途上国でHCFC22製造工場が新たに建設され、結果としてオゾン層破壊物質の増加を招くのではないかという懸念や、価格の安いこれらのプロジェクトからの認証排出削減量(CER)が市場に蔓延することで、実施費用のかかる再生可能エネルギーなどのプロジェクトがさらに実施しにくくなる状況になること、また、このようなプロジェクトがCDMで期待されている技術移転を促さないなどの問題があり、環境NGOはこれに反対しています。

 この新規フロン事業をどうするかということに関する締約国からの意見には、主に以下の3つがあります。
 1)新規フロン事業はCDMとして認めない
 2)新規フロン事業はCDMではなくGEFや二国間または多国間資金援助などのメカニズムによって支援されるべきである
 3)新規フロン事業による悪影響が的確に対処される方法論が承認されるならばCDMとして認める

 日本は、あらゆる技術はCDMの枠組みから排除されるべきではなく、新規に建設されたHCFC22製造工場が市場からの需要を反映した結果であることを証明できるならば、新規フロン事業をCDMとして認めるべきだとして、オプション3を支持しています。

 アメリカは、新規フロン事業は途上国でのHCFC22の排出量増加につながりモントリオール議定書の目標達成に悪影響を及ぼすとして、オプション2を支持しています。

 中国は、途上国にとってHCFC22はCFCに代わる物質として非常に重要であり、市場からの需要がある限り、HCFC22の使用は妨げられるべきではないと主張しました。中国は、新規フロン事業から発生するCERの65%を持続可能な発展のための資金確保を目的として徴収することを決めており、方法論に同様の規定(ホスト国がCERの50%以上を徴収し、温暖化対策や持続可能な発展のための資金とすること)が加えられるならばCDMとして認めるべきだとしてオプション3を支持しました。

 コンタクトグループでは、
 ①クレジット(CERs)を割り引いて発行する
 ②HCFC22を代替した分だけCERsを発行する
 ③CERsを事業者に発行するのではなく、別の機関に発行し、この機関がHFC23の破壊にかかる増加費用分をCERsを売って支払う。残ったCERの収益は何らかに利用する

との3のオプションが残ったようですが、最終的に合意に至らず、先送りになりました。


 *HCFC22;空調機の冷媒や発泡剤に使われる。オゾン層破壊物質でモントリオール議定書で規制されている。
 *HFC23;CO2の約1万倍の温室効果をもつガスで、京都議定書での規制対象になっている。HCFC22の生産過程で副生成物として発生する