CASA 地球温暖化の国際交渉

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通信5-1 京都議定書の見直し(レビュー)

2006年11月18日 | COP/MOP2通信
 最後まで残った議題は、京都議定書9条の「議定書の見直し(レビュー)」についての議題でした。先進国側は、この9条の議定書レビューのプロセスについては、先進国側にはこのプロセスを通じて途上国側の参加についても議論しようとする思惑があり、そのことがわかっているだけに途上国側は、事前の意見提出では議定書に規定がある以上レビューはしなければならないが、ごく簡単なレビューに止め、次のレ ビューはCOPMOPで議論して決めようというスタンスでした。

 先進国側がこの9条のレビューの議論が進まないと議定書3条9項の先進国の削減目標の議論も進めない、逆に途上国側は議定書3条9項の先進国の削減目標の議論が進まないと9条のレビューの議論が進めないとし、両方の議論が進まないことがもっとも心配されていました。

 通信4で報告したように議定書3条9項の先進国の削減目標の議論については11月14日に合意が成立したため、9条の議論がこのCOPMOP2の最重要な課題として残されていました。

 11月15日に閣僚級のハイレベル会合が始まってからも、インフォーマルな調整が続けられ、いくつもの議長の提案(ドラフト)が検討されては消えていきました。

 最後に11月17日午前の議長の提案(ドラフト)に沿って調整が続けられ、17日午後7時30分頃、やっと決定案が配布されてCOPMOP2の総会が始まり、午後8時45分にようやくこの決定案が採択され、COPMOP2は閉会しました。

 この決定案の要旨は以下のとおりですが、第1回目のレビューはこのCOPMOP2で終了し、第2回目のレビューをCOPMOP4ですることになっています。6項では、このレビューは「いかなる国の新たな約束につながるものでもない」として途上国の主張に沿ったものになっていますが、7項で「レビューに引き続いて、適切な行動をとらねばならない」との記述があり、将来の途上国の何らかの参加に含みを持たせるものとなっており、この7項は先進国側の主張が反映されています。ちなみに、この「レビューに引き続いて、適切な行動をとらねばならない」というのは議定書9条の規定に記載されている文言です。

 私たちNGOは、9条の見直しと3条9項の先進国の削減目標の議論に2008年までの期限を設けるよう主張したので100点満点とはいきませんが、9条のレビューのプロセルが決まったことは、これまで途上国が途上国の新たな約束につながるような議論をまったく拒否していたことからすれば、大きな前進だと評価してよいと思います。

 気候変動問題は、途上国の何らかの参加がなければ解決できないことは明らかです。しかし、共通だが差違ある責任の原則からすれば、先進国がまず削減努力を精一杯すべきです。また、先進国が温室効果ガスの排出量を増加し続けている状況では、この京都議定書のレビューのプロセスが始まっても、スムースに議論が進まないことも明らかです。

 この問題では、途上国側にも島しょ国連合や後発開発途上国(LDC)などのなかに前に進めようとする動きが出てきており、こうした動きを大事にしながら、3条9項の先進国の削減目標の議論と9条の見直しの議論を並行して進め、最終的には連携し、統合した結論を得る必要があると思います。

京都議定書9条の決定案(FCCC/KP/CMP/2006/L.7)

 1 議定書は重要な最初の行動で、気候変動に対処する決定的に重要である。
 2 議定書は先進諸国が気候変動対策でリードをとることを可能にし、CDMなど、途上国との間に共同して行動を起こす関係を助長した。
 3 今後特に適応に関してはさらに具体化し、議定書の実施はさらに広げられなければならない。
 4 第2回目のレビューを2008年のCOPMOP4で行う。
 5 このレビューは、IPCCの第4次評価報告書(AR4)を含む最新の科学に基づいて行う。
 6 第2回目のレビューは、COPMOP決定による行動の先入観をもたせるものであってはならず、また、いかなる国の新たな約束につながるものでもない。
 7 議定書9条1項に、COPMOPはレビューに引き続いて、適切な行動をとらねばならないとされていることを想起する。
 8 COPMOP3で、何をレビューするかを検討する。
 9 2007年8月17日までに、締約国にレビューの内容についての意見を提出する。

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