CASA 地球温暖化の国際交渉

地球温暖化に関する国際会議の開催期間中、現地から参加レポートをお届けします。

通信4-2 バリ会議に向けた決定草案「削減可能性の分析と作業計画」を採択

2007年06月04日 | SB26通信
18日に最終的に採択された「削減可能性の分析と作業計画」と題された決定草案には、先進国の削減量を定める議論を進めていく上での重要な内容が含まれています。
決定草案 「削減可能性の分析と作業計画」 

・ 先進国(付属書Ⅰ国)の更なる削減を決める作業は、条約と議定書の原則に基づいて条約の究極の目的を達成するための共有されたビジョンに基づくものである
・ 円卓会議での情報は先進国の更なる削減レベルに関する有用な条件を提供している。特にIPCCは、評価したシナリオの中で温室効果ガス濃度を最も低いレベルで安定化させようとすると、世界の温室効果ガスは今世紀の半ばには2000年レベルから半減より相当分減らす必要があるとしている
・ 今回のセッションの締約国、報告者、オブザーバーからの情報のハイライト
-今後数十年間の温室効果ガス削減努力が、回避できる長期的な世界平均気温の上昇とそれに伴う影響を相当程度決定する。気温の上昇を抑えるためには、今後10~15年で温室効果ガスの排出量は減少に転じなければならない。そのためには、先進国(付属書Ⅰ国)は2013年以降には、1990年比で25~40%削減を要する。
-低い費用で削減できる機会は多くある
-炭素に価格を与えることは幅広い関係者の行動を変え、すべての部門において削減可能性を認識させる重要な手段である
-温室効果ガスを削減することには(温暖化対策としてだけでなく)多くの共通の利益が存在し、削減コストの大部分を相殺することができる
-先進国の削減による社会経済的な影響は、政策、技術の適切な選択によって減らすことができる
-先進国の政策手段と技術による削減可能性は柔軟性メカニズムと吸収源を使うことによって拡大させることができる

今後の計画
・ 先進国は、政策・対策・技術の削減可能性のデータと情報を、先進国の削減幅を決める土台とするために2007年6月22日までに事務局に提出する
・ 事務局は提出された意見を統合し、先進国の削減可能性と削減幅に関連する要素と基準を考慮したテクニカルペーパーを作成する
・ 締約国とオブザーバー組織は2008年2月15日までに削減目標を達成する手段に関する意見を事務局に提出する。また第5回特別作業部会(AWG)において意見提出をまとめるよう事務局に求める
・ 第1と第2約束期間の間に空白が生じないようにするためにも、第4回特別作業部会(8月と12月に開催)では、この作業を終わらせるためのスケジュールを作成する
※カッコ内は付け足した

CASAも参加する気候行動ネットワーク(CAN)は、AWGにおいて先進国の削減可能性はもちろん、地球の平均気温上昇を工業化以前から2℃未満に抑えるために、どれくらい削減することが必要かということを考える必要があることを主張してきました。2℃未満に抑えるためには、先進国は2020年までに30%削減することが必要です。また、2013年以降の次の枠組みの議論について、2008年末、遅くとも2009年末までに合意するよう求めており、今年12月にバリで開催される会議で、合意期限を明記した行動計画を採択するように求めています。

今回の決定草案において、「世界の温室効果ガスは今世紀の半ばには2000年レベルから半減より相当分減らす必要がある」と、IPCCの評価したシナリオの中でも、温室効果ガス濃度を最も低いレベルで安定化させるシナリオの削減条件について言及していることは大きな前進です。このためには、2015年には世界の二酸化炭素排出を減少傾向に転じさせる必要があります。しかし、IPCCの評価では、それでも工業化以前より2~2.4℃の上昇が見込まれており、危険な影響を避けることができません。2℃未満に抑えるためには、「相当分減らす」とされる数値を具体化させていく必要があります。そのために、日本などがいまだ明示しようとしない次期以降の削減幅を今後の会議で明確にしていく必要があります。また、決定草案にあるように、バリでは次期枠組みの交渉を終えるスケジュール、それも最終期限を定めた計画に合意することが必要です。

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