後方の真っ白な山が見えますか?これからあの山を目指してトレッキング開始です。一足早いハッピーホリディですね。樹氷に覆われた大普賢岳(1780m)です。
不安定な天候が続く昨今、祈りにも似た気持ちで奈良を出発。
南の空にはどんよりと重たい雲が…天気予報では曇りから晴れになっていた筈…とりあえず吉野へ。
吉野町~川上村~新伯母峰トンネル~上北山村、トンネルを抜け、すぐに和佐又林道をヒュッテにと登ってゆく。
駐車場に車を止め、登山準備が出来た処で駐車料金を払いにヒュッテに入ると「3時間まで500円、6時間で1000円、何処に行くのか?」と尋ねられ「えっ!何処か分からない」「えっ!」びっくりした顔が見つめる。
そう言えば、いつも相方の後を付いて行くだけで、何処に行くのかも知らないまま…きゃーっ!もし相方が怪我でもして動けなくなったら、間違いなく私は遭難する。地図も読めず、道に迷って、何処にいるのかさえも分からず凍死するのだ。
大声で「何処まで行くのぉ~」「大普賢岳」
そうか大普賢岳に行くのか。初めてだな…
1000円払って車に戻り、登りが3時間、下りが2時半と聞いたことを告げ「私は初めて登る山よね」と言えば「君は2度目です」
どおゆうこっちゃ!
じっとしていたら寒くて、登山にはもってこいの気温らしい。青空が広がって来た。かじかむ手でお握り(鮭)を1つ食べスタートする。
砂利道を進んで行くと先ほどの記念碑。
左に折れて「笙の窟」に向かいどんどんと進んで行く。
君の後を歩いていたのではトレーニングにならん!と最近、登り方を変えた相方は、先に進んでは引き返し、タッチしては再度登って行く。
日頃の行ないが良いのはどちらか?ドピーカンになってきた。
古来、修験道の山として山伏の修行の場であった為、数多くの行場跡があり、行く手に朝日-笙ノ窟-鷲ノ窟と続く。長い梯子を登って…日本岳コルに出る。
北斜面から吹き上げる風が厳しく冷たい。この付近からが険しくなり、梯子、鎖、鉄階段の連続。
「いらっしゃい~」頭上で声がする。梯子を前方に大きな岩が突き出た「石ノ鼻」に立った相方が見えて来た。
絶景!ドピーカンに映える大台ヶ原や日本岳、視線をぐるっとまわして弥山から釈迦岳、左に大きく迫るのはこれから登る大普賢岳。
「いゃ~ぁ、こんなに素晴らしい天気は年にそうあるもんじゃないゾ。山が俺達を呼んでるんだ」
キザなセリフを吐く相方がカッコ良く見えるのもドピーカンのせいだろう。
小普賢岳を絡め、急降下。樹氷が美しい。時折、星屑のように舞いながら落ちてゆく。凛とした空気の流れる中、荘厳な賛美歌が聞こえてくる。一足早いハッピーホリディ。
固まった雪の上を慎重に歩を進め…梯子、鎖、が続き一段と登りの厳しい大普賢岳に取り付く。
子供の頃、直角に近い梯子を登って反対側に倒れた(幸か不幸か、反対側の軒に梯子が引っ掛った)あの一瞬の無重力感が甦ってくる。ブランコを勢い良く漕いでヒュ~ゥって戻る時のあの感じね。
「腰が引けているぞ!」やっぱりへっぴり腰になっていたか。だいじょうぶ、大丈夫…と言い聞かせ、急な梯子を登ってゆく。
傾斜の穏やかな奥駆道との合流地点に出た。ふぅーっ。新雪で足を捕られないよう、100mばかり登り、風ひとつ無い頂上に到着。見渡せば山上ヶ岳、稲村岳、ハリゴヤの頭…あぁ~爽快!
先着の典型的な山ガール、山ボーイ3名が昼食を取っている。では、我々も…
今年初めての雪が嬉しかったのでピストンすることにする。
抜けるような紺碧(いや、茄紺と言うべきかも)の空にブナの白い樹皮のコントラストが素晴らし過ぎる…コースタイムで帰還。
和佐又ヒュッテの駐車場脇のススキが晩秋に輝いていた…今日もいい日だったナ(11月21日) 。