「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.376 ★ 駐日大使「恫喝発言」はあまりにひどい…「長期経済停滞」に入った 中国が日本の足を引っ張る「ヤバいシナリオ」

2024年06月04日 | 日記

現代ビジネス (髙橋 洋一:経済学者 嘉悦大学教授)

2024年6月3日

中国の傍若無人な振る舞い

5月27日、韓国ソウルにおいて、日本、中国、韓国の3ヵ国による首脳会談が行われた。

日中韓首脳会談は、三国間関係の冷え込みや新型コロナウイルスなどの影響で2019年12月以来開かれておらず、4年半ぶりの第9回目の開催だ。

その成果は、日中韓の自由貿易協定(FTA)の実現に向け、政治的解決のために前向きに努力し、交渉を加速するための議論を続けることで一致。一方、北朝鮮による核・ミサイル開発などに対する具体論については何も成果がなかった。

しかも、このFTAはあまり意味のない枠組みだ。というのは、RCEP・地域的な包括的経済連携協定というのがあい、既に日本・中国・韓国のほかオーストラリア・ニュージーランド・ASEAN10ヵ国の15ヵ国が参加している。

photo by gettyimages

26日には、岸田首相と李強首相による日中首脳会談も行われた。しかし、懸案の原発処理水の海洋放出、中国による邦人拘束、尖閣諸島のEEZ内でのブイ設置などではまったく平行線だった。

その一方、中国による傍若無人の振る舞いは後を絶たない。台湾の頼清徳総統が就任式を行った20日、駐日中国大使は日本を「恫喝」する発言を行った。

産経新聞の報道によれば、中国の呉江浩駐日大使は20日、台湾の総統就任式に日本から国会議員30人超が参加したことに対し、中国の呉駐日大使は、日本が「台湾独立」加担なら「民衆が火の中に連れ込まれる」と警告した。東京都内の在日本中国大使館で開いた台湾問題に関する「座談会」で語ったという。

あまりにも酷い理屈

そもそも、頼総統はこれまで現状維持しか主張していない。それを独立派というレッテル張りするのは間違っており、おかしい。戦後80年近くの現状を変更しようとしているのは、3期目に入り台湾統一を野望としている習近平主席のほうだ。

習近平氏は平和的に統一するといちおう言っているが、武力での統一も否定していない。頼総統の任期は2028年5月までだが、習近平氏の3期目は形式的には2028年3月までで、丸っと頼氏の任期に重なってしまう。これが中国の苛立ちの原因だろう。

日本としては、力による現状変更は認めないというスタンスが重要だ。これは普遍的な原理なので、国際社会からも理解が得やすい。

この原理からみれば、呉駐日中国大使の意見は、台湾のみならず日本にも武力行使するという意味合いがあり、あまりに酷い。

松原仁衆議院議員は、「政府はウィーン条約に基づき呉氏の追放を。駐在国内での戦火を仄めかし恫喝する者に外交官の資格などない」とポストした。その通りだ。

しかも、呉駐日中国大使は「日本の民衆は火の中に」と発言していたという。そのときも、林外相は「極めて不適切」であり「外交ルートを通じて厳重な抗議を行った」と国会答弁している。

松原氏は「日本の民衆が火の中という内容も酷いが、日本政府の正式な抗議を無視し発言を繰り返した意図は極めて悪質。『ペルソナ・ノン・グラータ(好ましがらざる人物)』として追放するのが当然だ。」とポストした。度重なる暴言に対して、外務省はどう対応するのか。

民間でも「迷惑行為」が

万が一武力による現状変更が行われた場合、台湾有事は日本有事でもある。その意味は、台湾有事の場合、尖閣諸島、南西諸島が自動的に有事に巻き込まれるとともに、日本の経済的な死活を左右するシーレーンが脅かされるという意味もある。

この意味で、台湾の頼総統がいう現状維持を守ることは、日本の国益でもある。

20日に在日本中国大使館で開かれた座談会には鳩山由紀夫元首相や社民党の福島瑞穂党首が参加。鳩山氏は「日本は台湾が中国の不可分の一部であることを尊重しなければならない」と呉氏の主張に同調したと報じられているが、これは日本の国益を損なった。

2009年の民主党政権では、鳩山氏が首相で福島氏が閣僚だったわけで、本当にとんでもない政権でまさに悪夢だったといえるだろう。

民間人でも酷いことがあった。1日午前6時20分ごろ、東京都千代田区九段北の靖国神社で石柱に落書きがされ、英語で「トイレ」との落書きが見つかり、警視庁麴町署は器物損壊の疑いで捜査している。ネット上では、放尿するような仕草も投稿され、東京の街中を歩く姿も確認できる。

まだ特定はされていないが、一連の動画が中国のSNSに投稿されたことから、「犯人」が中国人である可能性は高い。国内にいれば逮捕、中国に戻っていても犯人引渡を中国政府に要求すべきだ。

他方、世界は中国に対する見方が厳しくなっている。米政府は5月14日、中国製の電気自動車(EV)などに制裁関税を課すと発表した。

中国の余剰生産品が日本にやってくる

対象品目(カッコ内は税率の変化)は以下の通り。電気自動車(25%→100%)、鉄鋼・アルミニウム(0~7.5%→25%)、リチウムイオン電池(7.5%→25%)、重要鉱物(0%→25%)、太陽光パネル(25%→50%)、半導体(25%→50%)、港湾クレーン(0%→25%)、医療用注射器・注射針(0%→50%)である。

米国は昨年、対中輸入は4270億ドル(64兆円)、対中輸出は1480億ドル(22兆円)だったが、今回の措置は対中輸入180億ドル(2.7兆円)が対象になる。法的根拠は1974年通商法の301条で、トランプ政権では同法を根拠として関税を課したが、それを維持しながらそれをはるかにこえる高関税を中国に課そうとしている。

ホワイトハウスは声明で、中国の不公正な慣行により、世界の市場に安価な製品が氾濫しており、米国の「経済安全保障」に対する「容認できないリスク」になっていると表明。米国家経済会議(NEC)のブレイナード委員長は「生産能力が過剰になっているにもかかわらず投資を続け、不公正な慣行で低価格に抑えた輸出品を世界の市場に氾濫させている」と述べた。

中国は補助金や政治的な命令を駆使して同国を世界最大のEV生産国にした。ただし、過剰生産が祟り、中華製のEVは米国をはじめとした世界に溢れている。太陽光パネルも、ウイグル労働者を食い物にして世界を席巻している。

その結果が今回の関税引上げになっている。トランプ政権になると一部の関税はさらに高まる可能性もある。

日本への影響は深刻だ。米国向けEVや太陽光パネルが日本向けになるかもしれない。バイデン政権の対中関税引き上げに伴い欧州でも追随する動きも出てきている。日本でもEVへの補助金や太陽光発電の高額買取価格など、再エネ政策をやっている場合ではない。それらの再エネ政策見直しとともに、米国にならって高関税を導入する必要が迫られている。でないと、中国の余剰生産品が日本になだれ込むかもしれない。

いずれにしても、中国経済を牽引してきた輸出は抑えられるだろう。そもそも、内需は不良債権問題で四苦八苦しており、打開の目途が立たない。

デフレではなく「長期経済停滞」

中国での不良債権問題の全容はまったくわからない。IMFが対中国審査を行っても、データが出てこない。一説によると、不良債権のGDP比は200%にもなるといわれ、これは空前絶後の数字だ。1970年以降の世界各国の経験では平均20%程度で、日本も平均的だったが、中国はその10倍なので、言葉を失ってしまう。

これを解決しない限り、まともな経済発展はあり得ないが、はたして今の習近平独裁体制でできるだろうか。というのは、普通の先進国では司法が独立しており破綻認定ができる。破綻認定ができれば取引相手が破綻でないと峻別できる。しかし、中国では司法の破綻認定という基本が出来ていない。

また、共産主義は生産手段(土地、企業)の国有を原則とするので、不動産取引も株式取引も中国のやり方は民主的な先進国とは似て非なるものだ。本来あり得ない、共産主義下のなんちゃって不動産・株式取引の大いなる矛盾が出てきたと筆者はみている。

こうした観点からみると、中国はデフレになるというより長期経済停滞に突入していくのではないだろうか。

これは、学者としては興味深い。この問題を考えるために、本コラムで再三紹介してきた民主主義と経済成長を整理しておく。

政治的な独裁は、自由で分権を基調とする資本主義経済とは長期的には相容れないのは、ノーベル経済学賞学者であるフリードマンが50年以上も前に『資本主義と自由』で喝破している。

筆者は、このフリードマンの主張について、独裁的な政治では民主国家にならず、ある一定以上の民主主義国にならないと、一人当たりGDPは長期的には1万ドルを超えにくいという「中所得国の罠」という形で独自の解釈をしている。

定量的にいえば、英エコノミスト誌の公表している民主主義指数で 6未満だと一部の産油国などを例外とすれば 1万ドルの壁を越えず、6以上になると民主主義度に応じて高まり10で6万ドル程度になる傾向がある。

付き合い方を考え直すべき

筆者は、こうした経験則から、中国の民主主義指数は2程度しかなく、現在の中国は1万ドル程度だが、1万ドルを長期に超えることはできず最後は民主主義対非民主主語の覇権争いに負けるだろうと予測してきた。

現在の中国の人口は14億人なので、GDPは14兆ドル。今後25年で人口は13億人、一人あたりGDPも頭打ちの公算が高いので、GDPは13兆ドル程度から大きく増加することはないだろう。

要するに、中国が一党独裁を続けようとすると、中所得国の罠にはまり、長期的な成長はできなくなると筆者は睨んでいる。

そろそろ日本も専制国家である中国との付き合い方を考え直したほうがいいだろう。

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