僕は水平対向エンジンが大好きである。だからこそレガシィを買って大切に乗っている。この他にできればポルシェ911とBMWのR1200GSというバイクが欲しい。どちらもともに水平対向エンジンだ。そして三台を並べてほくそ笑み、人から水平対向バカと呼ばれたい。もっとも僕自身は911とGSが無くてもすでに水平対向バカだと思っている。水平対向エンジンとは、それほどの魅力を持ったエンジンなのだ。
スバルがよく言う水平対向エンジンの利点は低重心であること、振動が少ないこと、回転が滑らかであること、などが挙げられている。しかしなぜそうなのか、という具体的な説明はあまりされていない。そして他の重要な点、あるいは趣旨については触れられてもいない。全体的にアピールが不十分なのである。だから時には誤解されたり、ダメ出しされたりする。そこで僕は、そんな誤解やダメ出しをすべて論破するくらいの勢いで水平対向エンジンの解説をしてみたいと思う。例えば大好きな彼女を守るような気構えで。
水平対向エンジンの最も大きな優位性はクランクシャフトまわりの剛性の高さにある。直列エンジンやV型エンジンとは違い、左右のシリンダーブロックでクランクシャフトをがっちりと完全にしかも左右均一に挟み込んでいるので剛性がケタ違いに高いのである。このことによって生まれる利点は耐久性の高さ、振動の少なさ、そして高回転、高負荷時に対する許容量の大きさなどが挙げられる。早い話、剛性が高ければそれだけタフだということだ。
クランクシャフトが軽量なのも水平対向エンジンの特徴である。これは左右のピストンが対称に動くためにクランクシャフトのカウンターウェイトが最小限で済むからだ。つまりそのままでも回転バランスが取れているために、バランスを取るためのおもりが他のエンジンと比べて最小限で済むのである。極薄のクランクウェブと全長を短くするための極薄クランクピンからなるそのクランクシャフトは別名『カミソリクランク』などとも呼ばれている。水平対向2気筒ではさすがにこうはいかないが、水平対向4気筒、6気筒のクランクシャフトは他のエンジンのそれと比べると衝撃的と言ってもいいほどの形をしている。
回転バランスが取れているために4気筒でもバランスシャフトが不要、そしてカミソリクランクの採用などとも相まって、水平対向エンジンは驚くほど軽量なエンジンであると言える。以前僕はレガシィの3リッター水平対向6気筒エンジンであるEZ30のエンジン重量は154kgだと紹介した。これに対して、例えばBMWの3リッター直列6気筒であるN52B30Aエンジンはシリンダーブロックに軽量なマグネシウム合金を使用していてもその重量は161kgである。通常のアルミブロックであるM54B30エンジンでは170kgを超える重さだ。いかに水平対向エンジンが軽量であるかおわかりいただけると思う。直列6気筒エンジンはそのスリムさゆえに軽いエンジンだとよく誤解されるのだが、クランクシャフトが長いためにねじり剛性を向上させなければならない。その結果クランクシャフトが大幅に重くなってしまうのである。BMWの直列6気筒はシルキースムーズであるとよく言われるのだが、その理由のひとつにこの重いクランクシャフトが結果的に貢献しているように思う。ちなみにV6エンジンでは、例えば日産のVQ30DEエンジンは163kgである。V型エンジンは基本的には左右のコンロッドで共通のクランクピンを使用するために、クランクシャフトは水平対向より短くすることができる。しかしV6エンジンでは歳差運動のような振動が発生してしまうために、クランクシャフトにはカウンターウェイトが必要になる。このため重くなってしまうのだ。
以前ネットにEZ30エンジンはアイドリング時に振動がある、だからいいエンジンではないと指摘されていたことがあった。確かに僕のレガシィにも軽負荷のアイドリング時にはプル、プル、という震えるような微細な振動がある。これはEZ30だけではなくEJ20にも似たような振動があるのだが、この振動は軽量クランクシャフトであるがゆえの振動なのだ。重いカウンターウェイトが付いたクランクシャフトならばこの振動は解消されたはずだが、それよりも軽いクランクシャフトからくるエンジン重量の軽量化や吹け上がりのシャープさを重視していると言える。エンジンというのはエンジニアの意図を理解しないと、時にあらぬ解釈をしてしまうことになる。難しいことだし、同時に奥が深いなぁとも思う。
次回へ続く
スバルがよく言う水平対向エンジンの利点は低重心であること、振動が少ないこと、回転が滑らかであること、などが挙げられている。しかしなぜそうなのか、という具体的な説明はあまりされていない。そして他の重要な点、あるいは趣旨については触れられてもいない。全体的にアピールが不十分なのである。だから時には誤解されたり、ダメ出しされたりする。そこで僕は、そんな誤解やダメ出しをすべて論破するくらいの勢いで水平対向エンジンの解説をしてみたいと思う。例えば大好きな彼女を守るような気構えで。
水平対向エンジンの最も大きな優位性はクランクシャフトまわりの剛性の高さにある。直列エンジンやV型エンジンとは違い、左右のシリンダーブロックでクランクシャフトをがっちりと完全にしかも左右均一に挟み込んでいるので剛性がケタ違いに高いのである。このことによって生まれる利点は耐久性の高さ、振動の少なさ、そして高回転、高負荷時に対する許容量の大きさなどが挙げられる。早い話、剛性が高ければそれだけタフだということだ。
クランクシャフトが軽量なのも水平対向エンジンの特徴である。これは左右のピストンが対称に動くためにクランクシャフトのカウンターウェイトが最小限で済むからだ。つまりそのままでも回転バランスが取れているために、バランスを取るためのおもりが他のエンジンと比べて最小限で済むのである。極薄のクランクウェブと全長を短くするための極薄クランクピンからなるそのクランクシャフトは別名『カミソリクランク』などとも呼ばれている。水平対向2気筒ではさすがにこうはいかないが、水平対向4気筒、6気筒のクランクシャフトは他のエンジンのそれと比べると衝撃的と言ってもいいほどの形をしている。
回転バランスが取れているために4気筒でもバランスシャフトが不要、そしてカミソリクランクの採用などとも相まって、水平対向エンジンは驚くほど軽量なエンジンであると言える。以前僕はレガシィの3リッター水平対向6気筒エンジンであるEZ30のエンジン重量は154kgだと紹介した。これに対して、例えばBMWの3リッター直列6気筒であるN52B30Aエンジンはシリンダーブロックに軽量なマグネシウム合金を使用していてもその重量は161kgである。通常のアルミブロックであるM54B30エンジンでは170kgを超える重さだ。いかに水平対向エンジンが軽量であるかおわかりいただけると思う。直列6気筒エンジンはそのスリムさゆえに軽いエンジンだとよく誤解されるのだが、クランクシャフトが長いためにねじり剛性を向上させなければならない。その結果クランクシャフトが大幅に重くなってしまうのである。BMWの直列6気筒はシルキースムーズであるとよく言われるのだが、その理由のひとつにこの重いクランクシャフトが結果的に貢献しているように思う。ちなみにV6エンジンでは、例えば日産のVQ30DEエンジンは163kgである。V型エンジンは基本的には左右のコンロッドで共通のクランクピンを使用するために、クランクシャフトは水平対向より短くすることができる。しかしV6エンジンでは歳差運動のような振動が発生してしまうために、クランクシャフトにはカウンターウェイトが必要になる。このため重くなってしまうのだ。
以前ネットにEZ30エンジンはアイドリング時に振動がある、だからいいエンジンではないと指摘されていたことがあった。確かに僕のレガシィにも軽負荷のアイドリング時にはプル、プル、という震えるような微細な振動がある。これはEZ30だけではなくEJ20にも似たような振動があるのだが、この振動は軽量クランクシャフトであるがゆえの振動なのだ。重いカウンターウェイトが付いたクランクシャフトならばこの振動は解消されたはずだが、それよりも軽いクランクシャフトからくるエンジン重量の軽量化や吹け上がりのシャープさを重視していると言える。エンジンというのはエンジニアの意図を理解しないと、時にあらぬ解釈をしてしまうことになる。難しいことだし、同時に奥が深いなぁとも思う。
次回へ続く