goo blog サービス終了のお知らせ 

自動車学

クルマを楽しみ、考え、問題を提起する

アーシングについて

2012-01-22 03:05:59 | クルマをいじる
 アーシングとは簡単に言うとマイナス極の配線を増やし、電気抵抗を減少させることである。
 もう少し詳しく説明すると、まずクルマのバッテリーのマイナス配線はボディに直接取り付けられている。つまりクルマにおける電気の流れはバッテリーのプラスからエンジンやその他様々な電装品へと流れ、最後はボディを伝ってバッテリーのマイナスへと帰ってくることになる。クルマのボディというのはいわば巨大なマイナス配線の役割も担っているわけだ。ところがこれでは抵抗が多すぎる、あるいは電気の流れがスムーズにバッテリーへと帰れない、という考えのもとにアーシングは登場してきた。マイナスの配線を増やしてバッテリーのマイナス端子へ直接接続してやれば電気の流れはよりスムーズになる、という理屈である。
 このアーシングに関しては昔から効果がある、ない、という議論があった。そんなことで効果なんてあるわけない、という人や、中にはブラシーボ効果、という難しい言葉を使って完全否定する人もいるほどだ。ブラシーボ効果とは暗示効果、という意味である。つまり効果があると思い込んでいる人は、実際に効果がないものであってもそれを効果があるように感じてしまう、というような意味だ。
 難しい言葉を使う人のことを信用してしまいがちなのは世の常だが、僕はアーシングには効果がある場合が多いと感じている。そして、効果が無い場合はいくつかの原因が考えられるのである。

 僕は裕福でもないのに現在クルマ二台、バイクが二台という生活を送っている。そしてこの合計四台のすべてにアーシングを施しているが、四台とも効果があった(バイク二台のうちの一台は以前乗っていたKLE250のこと)。逆に以前下駄代わりに使用していたワゴンRにはまったく効果なし。ちなみにレガシィのアーシングキットは以前も紹介したとおりシムス製、ユーノス・ロードスターがスプリットファイア製、バイク二台とワゴンRは自作のアーシングである。
 効果があった四台に共通しているのは低速トルクのアップだった。それはブラシーボ効果などというレベルではなくはっきりと体感できるもので、ユーノス・ロードスターではマフラーを交換した時以上の効果が感じられた。さらに劇的だったのがレガシィである。低速トルクがアップしただけではなく低速でのエンジン音にも変化が現れ、おまけに2000回転付近で発生するかすかなノッキングまで見事に改善されたのである。

 この2000回転付近でのノッキングは本当にごく微細なもので、注意して聞き耳を立てていなければわからないようなレベルのものだった。エンジンが軽負荷時、つまりエアコンがオフの時に発生することが多く、おまけに外気温や標高の高低にはいっさい関係なかった。いったん気になり始めるとやたらと気になってしょうがない。とりあえずディーラーに持って行ってみたのだが、
 「ノッキングしているのがよく分かりません」
と言われる始末。しまいにはガソリンを調べられ、
 「ちゃんとハイオクガソリンが入っていました」
と笑顔で報告された。そもそも微細なノッキングを気にするような人間が油種を間違えたりするはずない。
 ノッキングの主たる原因は点火時期が進角しすぎている、混合気が薄い、あるいはカーボンの蓄積によって燃焼室内の圧縮が必要以上に高くなってしまっている、などが考えられる。しかし2000回転付近だけ突然点火時期が進角することなどありえないし、当時はまだ大量のカーボンが蓄積するほど走行距離は伸びていない。怪しいのは混合気の濃度だ、と僕は考えた。現代はクルマの燃費にとてもシビアだから、ガソリンをカツカツの薄さで燃やしていることは容易に想像がつく。
 でも2000回転付近だけ薄いのか?そんなことがありえるか?と考えたのだが、とりあえずアーシングは低速域で効果があることを思い出し、ダメもとで取り付けてみた。
 そして、取り付けてみて大正解。ノッキングは見事に解消したのである。
 具体的に何が原因だったのか、はっきりとはわからないままだ。しかし僕は可変バルブリフトの影響があるのではないかと思っている。レガシィのEZ30エンジンの可変バルブリフトは低速域では片側の吸気バルブだけが小さくリフトし、リフトが大きいもう片方の吸気バルブから主に混合気を送り込んで燃焼室内にスワールを発生させる、という凝ったシステムを持っている。この二本のバルブリフトが同調した時、スワールの発生が止まり、混合気の吸入スピードが落ち、それによって混合気の濃度にムラが生じていたのではないか。そのバルブリフトが同調する回転数がまさに2000回転付近だったのではないかと思うのだ。そしてアーシングをすることによってインジェクターの噴出力が上がり、それによって混合気の濃度のムラが無くなり、結果としてノッキングは解消されたのかもしれないと僕は考えている。
 ややこしい話になってしまったが、とにかくEZ30エンジンにアーシングは必需品であると言える。

 さて、効果が全く無かったワゴンRについてである。先ほども述べたようにこちらは自作のアーシングだった。キットはホームセンターで購入した汎用品。デスビ、インジェクター、ヘッドカバー、リレー、などひととおりの箇所にアーシングを施したのだが、悲しいほど効果は無し。これによって僕は、アーシングというのはきちんとテスターなどで計測しながら詳細にアーシングポイントを決めていかなければだめなのだということがわかった。シムス製のアーシングもスプリットファイア製のアーシングもけっこうな値段がするのだが、それは綿密なテストを重ねて商品化したがゆえの値段なのである。シムスのものはなんとサスペンションのアッパーマウント部分、なんていう一見不可思議なところにアーシングポイントが設定されているが、これなどはまさにその証拠であると言えよう。そういう意味では、汎用品でテキトーにやって効果があった僕の二台のバイクは奇跡に近かったのだ。

 アーシングキットは信頼できる有名なメーカーのものを選ぶこと。これが鉄則である。そしてもし自分のクルマのアーシングキットがどの有名メーカーにも無かったとしたら、それはそのクルマがアーシングをしても効果がない、という意味だと捉えていい。それから、間違っても見知らぬメーカーの安い商品には手を出さないように。効果が出ないことが容易に想像できる。