先日の、ブレーキトラブルの1750GTV
ブレーキオイルが、サーボのバキューム室内に漏れて、ブレーキオイル不足となり、エアーが噛んで、ペダルがフカフカになる状態だった。
フロントのサーボ内での漏れだったため、リヤブレーキに負担がかかり、一気にリヤパッドが消耗して、リヤホイールはダストで真っ黒に。
最初は単純に、リヤーのパッドが消耗したのだろうと、待ち作業で、作業を始め、リヤパッドの交換で、ピストンを、押し戻さねばならないので、リザーバータンクの液量を確認して、ブレーキオイル不足を見つけ、外部に漏れがないことから、サーボ内部への内出血と、判断。
サーボのエアータンク部を割って、フロント側のみ、内出血を確認、フロントのサーボと、リヤのパッド交換、ブレーキオイル補充、エアー抜きと、一連の常識的な作業が終わり、丸1日、0.2キロの与圧をブレーキにかけての漏れ確認をしたら、フロント側のメインプレッシャースイッチの樹脂の部分に、うっすらとブレーキオイルのにじみがあったので、急遽、部品屋さんに行き、予備も含めて、2個ほどプレッシャースイッチを購入、工場につくなり、すぐに作業開始、(単にプレッサースイッチの交換だが)。 この道40年の手の感触は、部品のねじの違いを、感じ取っていた。(その自分の手のひらの感触を信じずに、部品屋の供給してくれた新品パーツを信じようと何度も締めこんだ私がおろかだったのだが)
しかし、まさか、ブレーキのパーツを、他車のものを規格も、確かめず、(というか規格違いがあるというのを知らないのに)、流用して売っているとは、私も人間的に疑ってもみなかった。
アルファロメオの油圧タイプのブレーキストップランプスイッチは、その昔からアルファロメオのブレーキが、ダンロップや、がーリング系の、英国パーツを結構使っている関係からか、ブレーキパイプのフレアナット部分は、ミリねじ規格であっても、T字型のジョイント部の、ストップランプスイッチのつくねじの規格は、インチのテーパーねじであるのは、ロメオを長年触っているメカニックについては幼稚園レベルの常識なのだが。
105ロメオの生産がずいぶん前に終わってから新規参入した、部品屋さんのレベルでは、ミリ規格で作られている車の、一部に、まだ、インチ規格のねじが残っていることに、気がつかなかったのだろう。(非常に恥ずかしい話なのだが)
エンジンの油圧系統は、10ミリ径で、1ミリの極細目ピッチの平行ねじと、テーパーねじが使われている。
しかし、ブレーキのランプスイッチは、ガスねじが使われている。
2つのオンタねじを比べてみると、ピッチは見た目にはほとんどわからないが、重ねてみると、ピッチの違いがわかる。ミリねじの、ミリピッチと、インチねじの、一インチあたりの山の数と、規格の基準が違うのと、テーパー角度の違い、そのほかにも細かく言うと、ねじ山の角度もインチとミリでは違うのは工業形の技術者なら、高校1年で習うだろう。
この、ねじ外径、約10ミリ、ねじピッチ約1mmのねじ単体でみて、約0.1mmのピッチの違い、約0.05mmの外形の違い、ねじ山の5度の角度違いは、ほとんどわからない。唯一気になったのが、テーパー角度だが、今日入荷したばかりとの、部品屋さんの言葉に、『これ本当に正しい品なの』という、疑問の言葉を出すことはできなかった。
取り付けてみて、締め付けるレンチのチカラ加減から、やはり見た目で不安感が合ったテーパー角の問題かなと、思いつつ、しっかり締めこんでしまえば問題ないだろうと、いつもよりずいぶんと強く締めこんだのだが。(ここはプロとしての私の判断ミスでした。自分の手のひらの職人の感触を信じるべきでした。)
加圧式のエアー抜き工具で、圧をかけると。しばらくして、ねじ部からにじんできた。
数回増し締めしては、加圧テストをと繰り返したが、なかなかとまらない。
ねじを壊す位の気持ちで、閉めこんでやっと,ニジミが判らなくなったのと、お客様が引き取りにきたので、経緯を説明して、スイッチ部の点検を再々してほしいと、お願いして納車した。
が、あくる日の昼間に、電話があった。
漏れたオイルが、エキゾーストパイプにかかって、白煙を上げたとのこと。ほんの一滴の漏れでも、燃えると、ど派手に白煙を上げるブレーキオイルだが、ほんの一滴が漏れてもいけないのがブレーキの油圧系なのだ。
まさか、ブレーキねじの違いを、アルファロメオの部品を扱っている部品屋さんが、知らないなどとは夢にも思わない私は、はずした部品と、新たに手に入れた予備の部品を、あらためて比べてみて、愕然とした。
2個のパーツのねじ部を、重ねて見比べて、明らかにガスねじと、ミリねじの違いが判った。
すぐさま、ピッチゲージと、エンジンブロックの油圧系のねじを使っての確認。
手に入れた新しいパーツは、明らかにミリピッチのもので、ロメオのブレーキランプスイッチに使われているガスねじとは、異なるものだった。
お客様がこられて、謝りの言葉もそこそこに、元の、長時間油圧をかけると、かしめ部から滲んでくる元の部品のほうが、はるかに安全と判断。元の部品に戻して、まともな部品が入荷するまで、我慢してもらうことにした。
ここで、元の部品に戻して、締めこんでいくと、こんどはまた、本来の手の感触と違う締め込み感覚が。
ピッチ違いの新パーツを、漏れが出ないくらいに締めこんだ悪影響で、メスねじに、新たなピッチがきられてしまったのだ。
おかげで、何度もすり合わせするように、締めては緩めて、やっと、元の油圧スイッチの締め込み角度がまっすぐに修正でき、OIL漏れをとめることができたが、ねじ山で2山ほども、奥に締めこんだ位置でOKとなった。
部品屋さんでも、新たに入荷したパーツ(フィアット用だという)と、以前に、他のクルマやに出荷して、だめだとクレーム返品された品があるので、それを送るとのこと。
1日待って、手にした、その一度クルマにはつけたが、走行をしていないという出戻りパーツは、目で見て、すぐに判るほど、ねじに、取り付け傷があった。そのピッチは、明らかにミリピッチだった。
今回の事案は、部品屋さんが、こういう最重要な部分の規格の種類があるということを知らずに、ごちゃ混ぜにパーツを売りさばいていたことに原因がある。
出戻りというパーツを見れば、一目瞭然で、ミリピッチのところに、ロメオのガスねじのプレッシャースイッチを無理やり締めこんだ跡があり、ちょうど、私と反対のパターンだった。
ずいぶん前に私もこのブログで書いたことなのだが、知らないことがあれば、専門のところに聞いてくれたらいいのに、他の工場から、クレームが有ったときに、この部分のねじには種類があると、謙虚に受け止めてくれていれば、私のところにフィアットの部品を渡して、お客様の車に傷をつけることもなかったのにと残念である。
ちなみに、そのことが有った、あくる日に、カルロチッチと、ボローニャ金ちゃんが、当方の近くを通ったと、尋ねてきてくれた。
今回のことを話すと、金ちゃんは即座に、『ロメオのあそこはピッチが違うからな』と。
伊藤忠時代から、ロメオに携わるメカニックは、ツーカーで通じる、基本中の基本の、いろは話でも、まだまだ、素人に毛の生えた新参者といわずをえないパーツ屋さんとでは、次元が違いすぎるようだ。
もうだいぶ前のことだけど、シンクロリングが、私が見ただけで使えないと却下した品に対し、『どこが、違うんですか』と、問うたパーツ屋さんだったが、見ただけでその違いが判らない目では、今回のブレーキスイッチのテーパー部の違いも、見極めるチカラはないものだと思う。
最初から、ロメオ用のパーツを供給してくれていたなら、問題はなかったのだが、わざわざフィアット用を注文して流用しようとしたパーツ屋さんには、もっともっと勉強してもらう必要がある。
ことがブレーキだけに、他社の部品流用は、よほどの確実性がない限りすべきではないし、その部品チョイスを間違えたために起こったかもしれない、事故と、賠償、刑事罰のことを考えて、仕事はしなければいけないと思う。
基本、ミリ規格で作られている車でも、たとえば、ロッキードのサーボのプラスねじは、フィリップスではなくjポジドライブ規格だし、スキーのビンディングの取り付けも、ポジドライブだ。
古い、英国車は、インチではなく、ブリティッシュ規格なのだ。
よく似ていても違う規格は違う規格。そのことを本当によく知ってから、ものを扱うべきではないだろうか?
後日、写真アップします。