CAFE PACIS

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「まずリン・スチュワートが標的にされた」-米の司法弾圧

2005-02-24 15:04:43 | ニュース@海外
 2月10日、ニューヨークの弁護士、リン・スチュワートが連邦裁判所で約45年の実刑判決を受けました。おもな容疑は、テロリストの弁護にあたり政府を詐欺にかけた、というもの。

 陪審員による有罪判決の報を受け、拷問スキャンダルの立役者である新司法長官のアルベルト・ゴンザレスは、こういいました。「司法省は、テロをするもの、そしてテロリストの殺人的目標を支援するものを追い詰めるとの、明確なメッセージをおくった」。

テロの幇助とは一切関係のない容疑で、主流マスコミの旗振りのもと「テロリスト」援助のレッテルを張られ、弁護士が有罪判決を受けたことに、アメリカの法曹界に衝撃が走っています。
 
日本でも、反戦ビラまきなどで逮捕されるなどの弾圧が始まっていますが、アメリカにおける弁護士攻撃は、格段に質が違うでしょう。
 
以下、Truthoutの記事で、大体のことがわかると思いますが、さらに詳しくは、スチュワート支援ウェブサイトへどうぞ。

 あい

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まずリン・スチュワートが標的にされた

マージョリー・コーン
Truthout/Perspective
2005年2月15日


まず共産主義者が標的にされた。私は黙っていた。共産主義者ではなかったので。
つぎに社会主義者が標的にされた。社会主義者ではないので私は黙っていた。
つぎに労組組合員が標的にされた。組合員ではないので私は黙っていた。
するとユダヤ人が標的にされた。ユダヤ人ではないので私は黙っていた。
そして、私自身が標的にされた。私のために声をあげる人は残っていなかった。
マーチン・ニーメラー牧師 1945

 今日の標的は法律家。そして、声を上げなくてはならないのは、私たち全員である。

 先週の木曜(2月10日)、13日にわたる審議の結果、ニューヨークの著名な公民権弁護士リン・スチュワートが有罪判決を受けた。起訴の理由は、共謀、テロリストへの重大な支援の提供、米政府に対する詐欺行為である。この7ヶ月に及ぶ裁判がおこなわれた連邦裁判所は、まさに50年ほどまえローゼンバーグ夫妻がスパイ活動共謀罪のかどでで有罪判決をうけた場所である。スチュワート弁護士は、35年から45年の懲役刑の判決を受けた。

 スチュワート弁護士が起訴されたのは2002年3月で、起訴の根拠とされたのは、スチュワートと彼女の依頼者シェイク・オマル・アブドル・ラーマンが交わした会話を聞いていた政府の記録で、この会話は、2001年9月のテロ事件がおこる2年半前のものである。

 ラーマンは現在、終身刑プラス65年の懲役刑に服している。罪状は、ニューヨーク市の主要ビルの爆破を策謀したこと、米軍およびホスニ・ムバラクエジプト大統領に対する攻撃を説いたこと。

 司法長官の指示により、米刑務所局(the Bureau of Prison)は1997年から、ラーマンに特別行政措置(SAM)を適用し、手紙・電話の利用、マスコミ・訪問者との接触を制限している。

 スチュワート弁護士には、ラーマンとの接見許可を得るにあたり、特別行政措置を守るとの署名誓約を義務付けられた。同時に、「法的問題に関し、アブドル・ラーマン囚人と話し合う目的で、同伴者は通訳者のみ」とし「自身のアブドル・ラーマンとの会合・通信・電話を、(それだけに限らないが、マスコミも含む)第三者とアブドル・ラーマンとの間でのメッセージ伝達としない」ことに合意した。

 政府の容疑によると、スチュワート弁護士は、アラビア語通訳者に、イスラミック・グループ問題に関する手紙をラーマンに読み上げること、同グループがエジプトでの停戦を順守し続けるべきかどうかという問題についてラーマンと話し合うことを容認したという。また、同弁護士が、特別行政措置に違反し、こうした会話を刑務所警備員に隠れておこない、ラーマンが(エジプトでの)停戦支持を撤回したとマスコミに発表した、という。

 スチュワート弁護士は、こうした証拠不十分な申し立て否定し、エジプト停戦に関しさらなる協議を呼びかけたラーマンの声明を伝言することは特別行政措置違反にあたらない、と誠意を持って信じていると証言。同弁護士は、眼にふれる機会を多くすることで、ラーマンをエジプトに移動させようと試みていたのであると証言した。ラーマンは老齢で、盲目で、英語を話さないため、ミネソタ州にある連邦刑務所に、事実上、独房監禁状態におかれている。

 スチュワート弁護士は、自身の誠意ある信念は、元米司法長官のラムゼイ・クラークの行動に基づくものである、と証言。クラーク氏もラーマンの弁護人の一人である。クラーク氏も、特別行政措置に署名しており、記者会見を開き、エジプト政治問題に関するラーマン声明をマスコミに伝えている。が、なぜか、クラーク氏は起訴されていない。

スチュワート弁護士の弁護に立ったクラーク氏は、Democracy Now!でこう話した。「リン(・スチュワート)がして、私がしなかったことなどありません」。「この裁判は、2001年9月11日の事件で作り上げられてきた恐怖感がなければ、ブッシュ政権がその機会に乗じたのでなければ、起こされなかったものです。通常であれば、リンの行為はすべて、依頼者の代理人である有能な弁護士が熱心に本分を尽くすための行為と見なされるものです。」

 2002年の会議で、スチュワート弁護士はこう述べている。「刑務所局の指令に違反した場合、担当する囚人にはもう接見できないと言われたり、何らかの行政的な罰則が課されるのが普通です。テロ組織を支援しているとの容疑で起訴されることは、まずありません。」

疑問なのは、リン・スチュワート起訴に、なぜ政府がここまで時間をかけたのか、ということである。ナショナル・ロイヤーズ・ギルド(National Lawyers Guild)のヘイディ・ボゴシアン(Heidi Boghosian)事務局長によれば理由はこうである。スチュワート弁護士は、「司法省がテロと果敢に戦っているというアリバイづくりのために、司法長官が渇望していた標的ナンバーワン」だったから。

スチュワート弁護士が起訴された時点で、9・11以降ジョン・アシュクロフト司法長官が逮捕できていたのは、ジョン・ウォーカー・リンドだけ〔訳注:2001年タリバンの兵士として米軍と交戦中、アフガニスタンで拘束された、カリフォルニア州出身の青年。当時20歳。〕「スチュワートを起訴することで、アシュクロフトは二重の意味を持つ強力なメッセージを発したのです。その一、世間が嫌悪する考えをもつ人物を弁護するような弁護士は起訴されうる。その二、このような依頼人は弁護されるに値しない。」

ブッシュが「愛国法」に署名したのは、アシュクロフトが刑務所局規制の暫定的改正を発表したのと同じ日であったが、改正法の発効は、通常国民から意見が出される期間を排除した、5日後のことであった。改正法が成立したいま、司法省は、弁護士と拘束中依頼人の会話を盗み聞きする、無制限かつ再考不可能な裁量をもつにいたっている。そこには、司法の監視や明白な基準など存在しない。改正法が適用されるのは起訴済みの囚人だけではない。司法省が拘束するすべての人に適用されるのであって、公判前の抑留者、重要参考人、(不法入国としての)入管施設の被収容者など、犯罪による起訴とは一切無縁の人たちも含まれるのである。

2002年、ナショナル・ロイヤーズ・ギルドの大会でスチュワート弁護士は、この起訴が、今後の弁護士・依頼者間秘匿特権に意味するものを警告した。「これは、弁護する権利を守るという問題です。一度、弁護士・依頼者間秘匿特権が失われてしまえば、いま自分たちが知っているところの弁護する権利はなくなります。」依頼者との会話を政府が聞いていたことについて同弁護士は、「問題にすべきは、部屋で私が何をしていたかではなく、政府が何をしていたかでしょう。」

 50年代マッカーシズムが吹き荒れたとき、共産主義の脅威と考えられていたものを根絶しようと、政府は異端な政治見解を持つものすべてを威嚇し沈黙させるために、違法な監視活動を広範におこなった。多くの人が刑務所に送られ、職を失った。FBIによる「アカ狩り」で、何千もの人生が狂わされた。

 9月11日以降、政府政策に異論を唱えるものは「テロリスト」のレッテルを貼られてきたが、それは今後も続く。リン・スチュワートの容疑のどれも「テロリズム」とは関連づけられていないし、オサマ・ビン・ラディンも容疑とは一切関連づけられていない。にもかかわらず、起訴側は、ビン・ラディンの名前を裁判に持ち込んでもよい、と許可されたのである。

 陪審員の審議が始まってから10日半後、スチュワート弁護士の家に、ユダヤ防衛組織(the Jewish Defense Organization)の脅迫状が投函された。脅迫状には、次のようなメッセージが書いてあった。「手を差し伸べよ、ならば、陪審員は彼女の本性を理解する。ちなみに、すでに手は差し伸べられた。」メッセージには、スチュワート弁護士の住所が記載してあり、彼女を「法的にかつ事実上、廃業させなくてはならない」とも書いてあった。「彼女を自宅から、この州から追い出す」とも脅していた。陪審員のなかにこれを受け取った人がいたとしたら、それが理由で、有罪判決側にまわることを強いられたかもれない。〔注:判決が読み上げられた際、女性陪審員のうち3人がずっと泣いていたという。スチュワート弁護士は、「公正な判断を下したと思っていれば泣くはずはない」と話している。〕

 スチュワート弁護士は、Democracy Now!のインタビューでこう述べている。「特別行政措置というのは、『この規則を破れば、依頼者と接触できなくなる可能性がある』というものです。私たちにとっては、最大の懸念は、依頼者と話しができなくなるかもしれない、ということで、起訴の可能性などは夢にも思っていませんでした。」「理性でも、感情でも、正しいことをしたと信じています。」

 スチュワート弁護士の起訴そして有罪を受け、今後弁護士は、嫌われ者の弁護にしり込みをするであろう。Center for Constitutional Rights(「憲法の権利を守る会」とでもいったところか)のマイケル・ラトナー会長は、「この起訴の目的は、テロ容疑をかけられた人の弁護士にメッセージを送ることにありました。危ないからやめておけ、と。」

 スチュワートの弁護人であるマイケル・タイガー氏は、この不当判決を下した陪審員を責めてはいない。判決が言い渡されたあと、タイガー弁護士は、「善意の陪審員が、マスコミの報道を支配している時の政府の言い分に、大部分は恐怖が理由で、巻き込まれてしまうことは、これまでもあったことです。」「陪審員を批判はしません。この判決が無効になることは確信していますから。」

 現在、グアンタナモの抑留者の弁護人らは、依頼者との協議を秘匿としないよう合意するよう求められている。Democracy Now!のインタビューで、タイガー弁護士は、「グアンタナモとアブグレイブの強制収容所の真実をつきとめるとするなら、唯一の道は、囚人の弁護人たちが、世界にそのことを知らせることでしょう。政府が弁護人と囚人の接触を絶つことに成功すれば、それを彼らは何度も何度も試みているわけですが、(拷問などの)ああいった行為は秘密のうちに続けられます。」

 この危険な時代において、身の危険を感じないことは不可欠な要素である。しかし、1995年連邦最高裁判事のサンドラ・デイ・オコーナーが判決意見で述べたように、「憲法上の自由に対する最大の脅威は、危機の時にやってくる、ということは何度繰り返しても足りないぐらいである。」弁護人・依頼者の秘匿特権。これは、アメリカの刑事裁判システムの核心をなすものである。本気で守らなければ、全員が危険にさらされる。


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