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徴兵制の足音:ポール・クルーグマン

2004-10-24 02:31:21 | ニュース@海外
 ブッシュなら徴兵制、ケリーなら同盟国の軍事協力拡大。大統領選挙まであと1週間。投票制度の非民主性もさることながら、投票日が平日なのはどうしてでしょうね。あい


徴兵制の足音(Feeling the Draft)
ポール・クルーグマン
ニューヨークタイムズ社説

2004年10月19日

 徴兵制の復活を心配しているとしたら、その心配は、4年前、赤字財政への逆戻りを懸念と同じぐらい妥当である。4年前といえば、ブッシュ大統領が減税計画の断行を着手しはじめていたときで、その際彼は、赤字への逆行などないと断言していた。現実を認識していた人たちは、このプランでは赤字必至と見ていたにも関わらずである。さて、いま大統領は、徴兵の復活などありえないと言っている。しかし、現実を見れば、徴兵制の復活は確実である。

 我々が、ブッシュ氏の予算案を買わなかった理由はふたつあった。その一。減税計画の根拠は、非現実的な予算見積もりに基づいていた。その二。社会保障サービスの一部民営化も含め(再選されれば実行される)、大統領のより広い政策目標を実現するには、この非現実的見積もりでさえ計算に入っていない莫大な財政を必要とするから。それで、彼の選挙戦公約は、当然ながら信じられなかったのである。ブッシュ氏は、赤字財政大統領となる、と我々は見ていた。

 徴兵制もまったく同じ話だ。軍隊拡大など必要ないという主張は、明らかに非現実的な議論である。彼は、現在軍隊がおかれているすさまじいストレスを無視している。イラクで起こっていることを見れば、ブッシュ大統領の―先制攻撃―外交ドクトリンを推し進めるには、いまよりはるかに大きな軍隊が必要になることが分かる。

 ということで、選挙が終われば、再選ブッシュが軍の大規模拡大を進め、徴兵制を復活させる可能性はかなり高い、と勘ぐるのは妥当であろう。

 ブッシュ大統領は、徴兵制はなしと約束しているが、それは現実を無視した発言である。先週、共和党全国委員会が、Rock the Voteに血気立った脅迫状を送りつけた。Rock the Voteは、徴兵制問題を取り上げて青年層の投票を動員している団体である。脅迫状は「徴兵制をめぐる都市部での神話は完全に喝破されている」とし、ブッシュ大統領の発言を引用した。曰く「徴兵制は必要ない。いいですか、志願に基づく軍隊で十分足りているでしょう。」

 現実はその反対で、志願制の軍隊はすさまじい状況に置かれている。他の調査同様、ドナルド・ラムズフェルドが任命した委員会自体が同じ結論を出している。――米国の兵力は「全体において不十分」であり、現在のペースでの作戦を続けることはできない――。イラクでは、兵力不足により護衛に手が回らず、イラクの戦乱を収めることなど望むべくもない状態であって、これが、予備兵をして「自殺行為」と言わしめている任務拒否の根源になっているのである。

 この間イラクにいる米司令官たちは、兵力増強を要請しているが(ブッシュ政権はこの事実を否定しているが、それは無視してよい)、これ以上イラクに派兵できる人間はいない現状なのである。このマンパワー不足は深刻で、ブラックホース連隊(Black Horse Regiment)といった、他部隊への戦闘方法伝授を専門とすることで知られている部隊ですら、戦場に送り込まれている状況なのである。軍事専門家のフィリップ・カーター氏によれば、「これは、命の糧となる収穫物の種を食べてしまっているようなものである」。

 とにかく、現時点で、この国に志願制の軍隊が存在していること自体があやしい。数千人規模の予備兵と国家警備隊が置かれている地位も、すでに志願にもとづいていない。彼らは、「指し止め命令」により、契約期限が過ぎても従軍を強要されているのである。

 こうした現実を前にブッシュ政権が展開してきた否定戦術は、2回目の大統領候補者ディベートの際、暴露された。ジョン・ケリー上院議員が、損失増大を防ぐための政策を「裏口徴兵」になぞらえたのを受け、司会のチャールズ・ギブソン氏が、ブッシュ大統領に質問を振り、「予備兵が(契約期間が過ぎても)兵役に就かされているなかで、、、」といったそのとき、

 ブッシュ大統領は発言をさえぎり、予備兵の窮状問題から、ポーランド軍の戦争協力に敬意を払っていることに話題を変え、明らかに危険と見た質問の流れを断ち切った。

 さらに3回目の討論でブッシュ大統領は、この問題を最小限におさえるよう心がけていて、イラクに送られている予備兵は「自分たちの軍務を裏口徴兵とは思っていない。国に奉仕するチャンスだと見ている」と発言した。しかしそうであれば、なぜ予備兵たちは、任務継続を要請されているのでなく強制されているのであろうか。

 ブッシュ・ドクトリンの実行可能性を証明する意図で始められたイラク戦争により、米軍は限界を超えるところまで押しやられているのが現実である。それでも、大統領がそれに懲りている様子はまったくない。誰もが、ブッシュ第2時政権が成立すれば、ポール・ウォルフウィッツといったブッシュ・ドクトリンの立案者たちが、退任ではなく昇進する、と見ている。だとすれば、ブッシュ大統領が軍隊規模拡大をねらう準備をしていると見るのが道理であろう。つまり、徴兵制の復活である。

原文は:http://www.nytimes.com/2004/10/19/opinion/19krugman.html?oref=login

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
裏口徴兵 (みずき)
2004-10-25 17:24:29
New York Times にレジストしてないから、原文見れなかった。



「裏口徴兵」って、英語でなんて書いてあるの?

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Unknown (あい)
2004-10-25 19:59:01
 原文があるからそこからみてみよう。
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そう思ったんだけど。 (みずき)
2004-10-25 23:57:22
レジストしてないと。見れないの。NYTの記事。。。
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