ふらんす座への招待

俳句をあそぼう

句会レポート

2012-05-28 22:40:26 | ふらんす座
 5月24日(木)

参加者ーたかし、喜哉、ジロー、還水、烈、鈴鹿、白水

 忘れなぁ~いで~♬といきなりサビから入る曲(白水のオハコ)のような力みなぎる五月  目に入る緑が内なるものを慰撫してくれるような五月
いい季節ですね

この気持ちを詠んでみたい、誰かに伝えたい  私たちが句会に参加するのはそういうシンプルな思いからです。そして何より、句会のメンバーに読んでもらうために句を作っているように思う。
そうして7人集まりました。

     

    互選句

  植木棚に遠来の客雨蛙           (たかし)
  瓶に残るヨードチンキや雲の峰       (喜哉)
  ぺちゃくちゃと空とおしゃべりしてひばり  (喜哉)
  麦秋やひとつ手前の小さき駅        (ジロー)
  百合めくれ上がる場末の映画館       (ジロー)
  騙されるふりするも愛苺食ぶ        (ジロー)
  緑陰やなすすべもなく日は暮れぬ      (還水)
  あめつちにいちごひとつの重力場      (還水)
  夏めくやオレガノ匂ふ坂の店        (還水)
  陽射しより風を欲しがる五月かな      (烈)
  新緑のわれにもたらす冷静さ        (烈)
  わだかまりすいときえゆく心太        (烈)
  角まがる卯の花垣のありどころ       (鈴鹿)
  黄にけむる雨れんぎょうの咲くあたり    (鈴鹿)
  しあわせの大きく見ゆる薔薇の門      (白水)
  他心通も木耳までは読めぬぞな       (白水)
  この苺食べてごらんと女云ふ        (白水)


  
  「しあわせの大きく見ゆる薔薇の門」  (白水)
    
    たかし、還水、烈、鈴鹿ー並選
  
 薔薇が美しいのは言わずもがなのことで、きょうび薔薇のようなという比喩を使うと陳腐に聞こえる。しかし見れば見るほど薔薇の美しさには人を魅了するものがある。
美しいものをまっとうに美しいと言う。この句にもそういう衒いのなさがあって、しあわせという言葉を正確に辞書に載っている意味で用いている。
実にイノセントな一句。
白水さんらしくない?



    袋まわし互選句

  人妻の心の奥や夏蜜柑           (たかし)
  情熱のホルモン夏の夕あかり        (ジロー)
  雨蛙鳴き始めたる夕あかり         (たかし)
  シャンプーの香り運ぶや夕あかり      (烈)
  目の下の小さきほくろ夏の月        (ジロー)
  夕暮れて鮎つる人のまだ二人        (鈴鹿)
  若鮎の胸そりかへる小皿かな        (烈)
  水底に短音階を帯びし鮎          (還水)
  鮎の宿女将の腰もくねりたる       (ジロー)
  うたかたの流れぞ月の天に在り       (環水)
  夏星や川に流せしものあまた        (ジロー)
  シャーペンの芯折れやすき薄暑かな     (烈)
  いもうとが美神に見へる薄暑かな      (還水)
  滅びたる平家の紋よ揚羽蝶         (鈴鹿)

  
  
  「人妻の心の奥や夏蜜柑」         (たかし)
    
    喜哉、ジロー、還水、烈、鈴鹿-並選

 さて人妻のお題をもうけたひとは誰でしょう? それは人妻の多い三丁目のひと?
それにまた袋まわしの句、全部に人妻を詠み込もうとした不届き者がいたそうな
人妻と言えば淫靡なものを連想するようで、人妻の股のタトゥーとか、人妻の寝間着の匂いとか、なんか妙に盛り上がってしまいました(アキちゃんいなくてよかったね)
そのなかで冷静なたかしさんの一句。
夏蜜柑を取り合わせたのは手柄で、句に品位と奥行をもたらしている。 これは人妻に思い入れがないとなかなかできないような句で、結局たかしさんに人妻のいちばんいいところを持って行かれてしまいました。

  


 読んでもらいたい人に読んでもらい、生きた言葉のやり取りをする。それが私たちのモットーです。
しかし、同じメンバーの句会というのは、同じような傾向の句が選ばれるようになり価値づけられてしまいます。言わば仲間内の隠語性をまとうことになる。 それはそれでいいかと思うのですが「ふらんす座」は特に主宰も置かないし、こうしてブログというかたちで不特定の読者にも開かれている。
てことで「ふらんす座」はひとつの価値観にしばられない風通しのいい句会をめざしています。