ふらんす座への招待

俳句をあそぼう

句会レポート

2014-11-28 07:29:43 | ふらんす座
11月23日(日)
 参加者―たかし、突波、喜哉、ジロー、網代、かづこ、
     還水、白水(通信参加)

 この日はふらんす座のメンバー4名が欠席で、3人4人ではかたちにならないので急遽、網代さん、かづこさんにお願いして御参加ねがいました。
若手?(50代)が少ない句会となりましたが、それなりに味わい深く、落ち着いた運びとなりました。お二方には感謝の念がたえません。

継続は力なりとは使い古された言葉ですが、気分の乗らないときにいい句ができるとか、いい句に出会うとかというのが結構ある。それが俳句というものでありまして、かえって脳内麻薬出まくりのときに句を作ると、甘くなったりする。
だから、いい句をものするためには、とにかく続けるということが肝要だと思われます。




互選句
 聞きなれぬ鳥の声する枇杷の花             (たかし)
 小春日和の猫の転た寝尾が動く
 コスモスと汝の髪を編む風と              (突波)
 駅よりも古きめし屋に入り小春
 其は友の好きな曲だよ秋の窓
 小春日の向井去来の墓とあり
 豆選れる母啄みに似て小春               (喜哉)
 私は海人生満帆にて小春
 コツコツと叩く配管山眠る               (ジロー)
 退屈のあとの退屈落葉籠
 お目当ては付き添ひしひと小春空
 立冬や万力に物動かざる
 さい果ての鱈蒸す湯気の中にゐる            (還水)
 鏡台に光ひとすじ一葉忌                
 ケーナ吹く楽人小春めく広場
 しぐるるやヤクザ映画の絵看板
 陽だまりに永久に残さむ青写真             (白水)
 鳥渡る床の枕を裏返す                 (網代)
 窓際や小春の旅の始まりぬ
 秋霖や鎮まる街の美し歌                (かづこ)
           
 

句会レポート

2014-11-02 21:36:45 | ふらんす座
10月26日(日)
 
 参加者―たかし、喜哉、突波、ジロー、還水、烈、白水、アキ
  通信参加ー鈴鹿

 秋惜しむ汝は夜のギター抱く        突波

アキちゃんが久々の参加。句会の合い間に、彼女が今真剣に取組んでいるクラシックギターの腕前を披露してくれました。
慈しむように抱かれたギターから奏でられる音色はすばらしく、何人かは目を閉じて聴いていました。
ディスクで聴く演奏とは違って、ライブ演奏というのは過ぎ去る一分一秒が愛しく感じられ、心打たれるものがあります。
それを突波さんがそっとさりげなく、かたちにしてくれました。


互選句

初鵙や友の文の字小さくなる      (たかし)
秋桜揺れやまずして空高し
秋風や青空使いきる一日        (喜哉)
チエホフを観し帰り路の黄落す
霜降の人波に本買いにゆく
小鳥来る北野の小さきパン屋さん
少女A少年AB草虱          (突波)
忘れ物白粉花なんか咲いていた
万物は回して洗ふ爽やかに
小鳥来るまだ純潔を信じをる
息入れて立ちし折り鶴十三夜      (ジロー)
爽やかに無用の者で通しけり
末枯や階段脇にある死角
トロイメライ林檎剥く手を止める時   (還水)
終末は近し犬吠ゆボラも飛ぶ
色鳥が混じる雀のお昼時
山死せず月死せず山頭火の忌
目を伏せて更に逸らすか吾亦紅     (烈)
巻き戻す袖口固き秋の暮
指示棒の腰へ差し置く秋夕焼
老ひ鹿の風聴くやうに立ちにけり    (白水)
秋深む紅茶のかをり眉に泌む
新米の中に活き青混じりけり
星流る詩人の夢や阿片窟
朔の照らすものも無き秋の海      (アキ)
名月を仰ぐマツゲも紛い物
椋鳥を抱くけやきの動かざる      (鈴鹿)
中秋の月喰みている地球星
重ね着る洗いざらしや秋衣
子らの声眠気の底に秋真中

兼題互選句
成り行きのキスにも余韻秋惜しむ         (アキ)
時刻むくさび形の針秋惜しむ           (鈴鹿)
パレットに色の修羅あり秋惜しむ         (突波)
レコードの針は戻らず秋惜しむ          (ジロー)
テラス席の一人の時間秋おしむ          (喜哉)
悪党と阿婆擦れが居て秋惜しむ          (還水)

白水
老ひ鹿の風聴くやうに立ちにけり

鹿には妙に切実なところがある。遠くを見つめているような鹿の瞳を真近にすると、転校生のようにさびしい。また、頭が鹿になってしまう鹿男の小説があるが、可笑しさとともに角があるせいか、かなしみを醸し出している。その声もしかり。古来鹿の鳴く声に会えぬさびしさを重ねて、数多くの歌が詠まれている。
晩秋のころ、雄鹿は雌を求めて盛んに鳴く。しかし、この鹿は何を求めて風の声を聴くのだろう? 断言口調で詠まれているのは、死期を真近にひかえた者に訪れる異界からの声かもしれない。
すっくと立ち上がる鹿の姿が目に見えるようだ。
力づよく一気に詠みくだされた、一句一章の見本のような句。 

                                                                       文責 ジロー



ジロー

息入れて立ちし折り鶴十三夜

不器用な僕は羽根の先まで綺麗に揃った鶴を折った経験がありません。
羽根も頭も尾もどこかずれて歪で治していくうちにクシャクシャの鶴になってしまいます。
この句の鶴は端正な鶴だという感覚があるのは、十三夜という季語からでしょうか。
凛とした姫、孤高の衛士、あるいは純白の月への船の姿などをふっと思い描き、この句に惹かれている自分がいます。
もしかしたら、かぐや姫は輿ではなく、この鶴の船に乗って月へと帰っていったのではないでしょうか。
姫が着く頃、月は満ちて迎え入れてくれるのです。
息を吹き入れられ、鶴は静かに十三夜の離岸を待っているのです。

                                                文責 突波