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君が僕のもとを去るならば / ロバート・メイプルソープ

2004年11月04日 22時25分19秒 | 想在
 今日、十一月四日 は、写真家の Robert Mapplethorpe (ロバート・メイプルソープ) さんのお誕生日です。 (1946年生まれ) ..........................................


   「写真を撮ることは空間を彫刻することだ」


 と語ったというロバート・メイプルソープさんのことば、これは、空間を 「切り取る」 のではなく、空間を 「掘り起こして」 「とらえる」、ということなのでしょうか?

 ふと、夏目漱石さんの 『夢十夜』 の挿話を思い出します。

 鎌倉時代の仏師 (仏像をつくる工匠) 運慶が登場する夢の第六夜で、

 「眉や鼻を鑿(のみ)で作るんじゃない。 あのとおりの眉や鼻が木の中に埋まっているのを、鑿と槌の力で掘り出し」 ているのだ、

 と、仁王像を彫る運慶の腕さばきの見事さについて、町人が語る部分です。

 ミケランジェロさんは、

 「石の中に人が埋まっているから、はやく掘り出してあげなければ。 --- それがわたしの仕事だ」

 と発言したといいますが。

 天才の仕事というものは、そういうものなのでしょうか。

 ギターを爪弾くだけで、聴き手を感動させたり、

 ペンを走らせるだけで、読者をあっと言わせたり、

 絵筆を滑らせるだけで、観る人を魅了させることができる

 のは、

 さながら、 どこからともなく降りてきた 「音」 や 「ことば」 や 「色」 などを、じぶんのなかから掘り起こして表現できるという、 天賦の才能を与えられているのでしょうか。

 (以上、初出:2003.11.4 一部加筆)






 ところで、ロバート・メイプルソープさんというと、Patti Smith (パティ・スミス) さんとのコラボレイションが、個人的にいちばん印象深いのです。



 ・Patti Smith Group “Horses”
 ・Patti Smith Group “Wave”
 ・Patti Smith “Dream of Life”
 (以上、ジャケット写真は、ロバート・メイプルソープさん撮影)



 才能にあふれた二人は、かつて恋人同士でした。

 同性愛者として知られているロバート・メイプルソープさんですが、当時は、その傾向はなかったようです。

 同棲していた二人ですが、ある日、ロバートさんは、パティさんから別れを告げられます ... 。 そして ... 。



 「行かないでくれ! もし君が僕のもとを去るなら、僕はゲイになる!」と哀願したという。 だがパティは一時彼のもとを去り、メイプルソープはその言葉通りにゲイ・ライフを歩み始めた。

『レコード・コレクターズ増刊 アメリカン・ロック Vol.3』 から引用




 ちょっと、うまくできすぎた話のような気もしますが、天才たちのエピソードには、ふさわしいものなのでしょうか。



   「君が僕のもとを去るならば」



 パティ・スミスは、ロバート・メイプルソープにとって、「運命の女」 だったのでしょうか。

 このことばは、「運命のひと」 ことだったのでしょうか。


 運命のひと、運命のひとこと、運命の一瞬 ... 。


 その後、パティ・スミスさんは、女性パンク・ロック・シンガーとして、さまざまな形態のアートの表現者として、活躍。

 ロバート・メイプルソープさんは、写真家としての名声を得ていきます。 「花」 シリーズや、アメリカン・アフリカン男性のヌード写真などが有名でしょうか。

 そして、二人は、男女の性を越えた、芸術家同士の友情で強く結ばれつづけたとか ... 。



 ―― 人の生には、いったい、どんな運命が作用するのでしょう?

 ―― 人の幸福って、いったい、なんでしょう?













 * 運命にも負けずに ..... 。 (2004.11.4)

 * 写真は、筆者撮影によるものです。 ( ... って、そんな、たいそうなものではありませんが ... )



 参考:
 ・「ロバ-ト・メイプルソ-プ特集」

 ・Art Phote Site - 「ロバート・メイプルソープ」





 BGM:
 Velvet Underground ‘運命の女 / Femme Fatale’


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14 コメント

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なつかしい名前。 (しなたま)
2004-11-05 00:06:58
ロバートメイプルソープの名前、美大の頃は良く聞いてたけど、ほんと久々に触れました。アーティストの名前を知ってるだけで、あまり詳しくないぼくはもちとんパティスミスと関係があったなんて初耳(笑

へーへーへーとボタン連打です(すいません、俗ネタで 笑



こういう話は出来る環境、出来ない環境ありますよね。一人だけ知っててもさみしいし…。



カップルといえばルーリードとローリーアンダーソンはまだ付き合ってるんですか? と"Run, BLOG, Run"をロックQ&Aと間違えてるしなたまでした(笑
返信する
ここを拝見していて。 (朱里)
2004-11-05 00:37:13
色んな知識が増えます。

私には縁のないことが

多いからかもしれません(苦笑)

暖かいですよね、BLOG自体が。



今回、どの詩も心打たれるものがありました。

ロバートさん素敵です(笑)



でも一つ思うのは彼らは天賦の才というより

今まで感じてきたことを自然に、かつ正直に

作り上げる力を身につけたことに

あるような気がします。



と、偉そうなこと言ってごめんなさい(逃走)
返信する
ほうほう (LOVIN)
2004-11-05 03:05:52
写真のことは良く知らないLOVIN、

パティ・スミスも名前知っている程度。



ふむふむ



ほんとにここではお勉強させていただいてます。

興味が広がります!パティ・スミスも聞いてみようかな。



でも曲はベルベット・アンダーグラウンドなんだ(笑)やられた!
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わーいわーい (byrdie(雲雀))
2004-11-05 17:54:01
●しなたまさん、こんにちは。



きっと、しなたまさんはご存知だと思ってました!



十年くらい前、ロバート・メイプルソープさんの写真展があって、観に行ったのですが、パティさんのヌードもあったりして、どきっとしました。



> へーへーへーとボタン連打です



その番組、観たことがないのですが(すみません ... テレビを観ていないので ... )、知ってます!

トレビアンの泉ですよね?! (あれ??)





> こういう話は出来る環境、出来ない環境ありますよね。一人だけ知っててもさみしいし…。



そうなのです ... 。

今回の記事は、どなたからも反応がないかも ... と思ったのですが、書いちゃえ! という勢いでアップしてしまったのですが ... 。

ありがとうございます!



> カップルといえばルーリードとローリーアンダーソンはまだ付き合ってるんですか? ...



ビッグなカップルですよね!

えと、たしかご結婚なさってます。そして、現在も仲睦まじいお二人でいらっしゃると思いますよ!



返信する
ありがとうございます! (byrdie(雲雀))
2004-11-05 18:42:35
●朱里さん、こんにちは。



> 色んな知識が増えます。



そう言っていただけると、とてもうれしいです!

ありがとうございます!

ご縁がないかもしれない話題でも、できるだけわかりやすく(?)書いているつもりなのですが ... 。

コメントいただけて、ほっとしました。



> 今回、どの詩も心打たれるものがありました。

> ロバートさん素敵です(笑)



いい言葉ばかりですよね。

ロバートさんも、きっと、とても真摯な人なのかなあ ... なんて想像しています。



> でも一つ思うのは彼らは天賦の才というより ...



ふむふむ。そうですね ... 。

えと、きっと、感受性が、人よりも豊かなのですよね。

それを、自然に、正直に表現していくのって、簡単なようでむずかしいのかもしれません。

フツウの人には、「常識」とか「世間体」とか、その他もろもろの、さまざまな「フィルター」が、無意識にかかってしまうのかも ... と。

感性がすばらしいだけでもすごいことだと思いますが、それを表現する力がある(身に付けられる)のは、ほんとうにすごいです。

これは、真似しようと思っても、真似ができません。

そう考えると、これも、ひとつの才能なのかな ... と、考えるのですが、いかがでしょうか ... 。

(ん~、「才能」という一言では、片付かないもの、なのかも ... という気もしてきました。)

(興味深いご意見ありがとうございました!)

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John Cale (byrdie(雲雀))
2004-11-05 18:43:19
●LOVIN さん、こんにちは。



> 興味が広がります!



そう言っていただけると、ほんとにうれしいです。

ありがとうございます!



パティ・スミスさん、わたしは、大好きなんですよ。

ぜひぜひ、どうぞ♪

ブルース・スプリングスティーンさんと共作したバラード、‘Because the Night’ が入っている “Easter” というアルバムが聴きやすいかもしれません。

(UA がカヴァーしていたりする、美しい曲です)





> でも曲はベルベット・アンダーグラウンドなんだ(笑)やられた!



うふふ。えと、パティ・スミスさんのデヴュー・アルバムのプロデュースを、(ヴェルヴェッツの)ジョン・ケールが担当しているのですよ。

そんなつながりもあって、なんとなく ... 。

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昔、メープルソープ展を見たときに (ヒロ†)
2004-11-05 18:54:55
 エゴン・シーレとポール・デルヴォーの絵が好きで、上手くは語れないんだけど、この二人の全く違う絵になんらかの共通点を感じていました。

 メープルソープの写真を見たとき、なぜか、彼にもその共通点を感じました。



 その共通点がなんなのか、未だによくわかりませんが、メープルソープの写真は好きです。
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ヒロ†さんも、メープルソープ展に行っていたのですね! (byrdie(雲雀))
2004-11-06 18:13:42
●ヒロ†さん、こんにちは。



ヒロ†さん、絵や写真がお好きなのですね!



> エゴン・シーレとポール・デルヴォー



んん、どちらも名まえは知っていても、詳しく知らない画家さんです ... 。

ちょっと調べてみたところ、

シーレさんは、クリムトさんと同時代のかたなんですね。

ポール・デルヴォーさんは、ベルギーのかた ... 。



お二人とも、人物画を多く描かれたのでしょうか。



作風はちがいますが、人物のとらえ方・表現の仕方に、なにか共通するところを感じたのかしら ... ???



画集とか見てみますね!



> その共通点がなんなのか、未だによくわかりませんが、メープルソープの写真は好きです。



そうなのですね。

なにか、感ずるものがあったということでしょうか。



「理解できなくてもいい、なにかを感じとれれば、それでいいのだ」 ... サマセット・モームさんの小説(『人間の絆』)に出てくる一言 ... 。







ありがとうございます!

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二人の画家と一人の写真家 (ヒロ†)
2004-11-07 11:36:34
 僕が行ったメープルソープ展は、今から15年くらい前です。巡廻展が名古屋にも来ていたんですよね。僕は、そのとき初めてメープルソープの存在を知りました。



> お二人とも、人物画を多く描かれたのでしょうか。



 そうですね。

 シーレは、ほとんど人物画しか書いていないです。

 デルヴォーは、人物を中心として幻想的な背景を書く人でですが、人物のいない絵はほとんど無いので、やはり人物画を多く描いている人ですね。



 そういえば、シーレにもヴァリーという恋人がいて、彼女の絵をたくさん描いたのですか、彼女の絵と、パティーの写真も、どこか通じるものがあるような気がします。



 よかったら、画集を覗いてみてくださいね。何か感じるものがあったら、教えて下さい。
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ぜひ! (byrdie(雲雀))
2004-11-08 12:37:54
ヒロ†さん、



15年ほど前にも、メープルソープ展があったのですね。

そんな以前から、観に行かれていたとは ... 。

絵とか写真とか、おくわしそう ... 。 わたしは、有名なものだけです ... 。

そうそう、いま東京ではマティス展がやっているのですけど、なかなか時間がとれないのですよね ... 。

(ピカソもやっていたかな??)





シーレさんと、デルヴォーさん、教えてくださってありがとうございます。

とくにシーレさんが多く描いたという恋人の女性の絵が気になります!



ぜひ見てみますね!



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