... というほど、だいそれたものでもないが。
読売新聞の web - YOMIURI ON-LINE で
『人生に勝ち負けはあるか』 というアンケートが行われた。
私のきらいなことばである。 「勝ち組・負け組」。
これは、配偶者・子どもの有無、社会的地位、収入の多寡などによって、人生に 「優劣」 をつけて表現する風潮について、意見を問うたものであるが、アンケート結果によると、「意味がない」 とこたえた人がもっとも多く、43% であった。
また、寄せられた意見のいくつかを読んでみると、やはり、このことばに、嫌悪感や不快感をいだいたり、疑問視する人が多いのだ、ということがわかった。
かくいう私、なぜきらいなのか、というと、表面的なもの、偏った価値観で、他人に 「勝ち」 「負け」 の烙印を押すという行為に、むなしさを感じるからだろうか。
本来の遣い方 ... というものがあるかどうかわからないのだが。
「あんたは “勝ち組” だからいいよね」 という羨望と、いくらかの軽蔑の混じった気持ちを表現するもの。
あるいは、
「わたしは所詮 “負け組” ですから」 という謙遜とか、照れかくしとか、自己卑下することでじぶんを奮起させる/卑屈さを誤魔化すためのもの。
だったのではないか、という気がするのだが。
「わたしは、いいとこのボンボンつかまえて、いい家に住んで、子どももいて、人生の “勝ち組” だわ」
とか思う人なんて、いないのでは。 もし、ほんとうに精神的に満たされていたら、そんなふうに思うものだろうか?
また、
「あいつは、じぶんの好きなことをやるために、定職にはつかずにアルバイトをして、夢を追いつづけている。 彼女もいない。 だから “負け犬” だ」
などと思う人が、ほんとうに満たされているのだろうか? じぶん自身が “負けている” と感じているからこそ、他人を卑下し、序列化することで、精神的な安定をはかろうとしているのではないか。
などと思ってしまうのだが ... 。
だから、こころのなかで、「あなたは勝ち、おれは負け」 と思うくらいは仕方ないとしても、おもしろ半分に他人に優劣をつけるという行為をメディア上に垂れ流すのは、なにか変な気持ちがする。
なぜ、こんなふうに新聞社の web で取り上げられるまでに疑問視される遣い方がふえてしまったのだろう。 物質的なゆたかさばかり注目すること、あらゆるものを数値化することがもたらした影響なのだろうか?
この goo BLOG をはじめ、多くの blog サービスでは、アクセス数の順位を発表している。 たしかにひとつの指標とはなる。 しかし、それだけがすべてではない。 もちろん、アクセス数が多ければ、素直にうれしくなることもある。 はげみにもなるが。
一度アクセス数があがってしまうと、それ以上さがらないように、なにがなんでも記事を書きつづけなければならないという、焦りがつのったり、重圧となってしまうというのも事実か。 ― すでに多くの方が、それを実感しているようだが。
人生もいっしょで、一度、物質的なゆたかさを手に入れてしまうと、なかなか落とせなくなるのでは、という気もする。 必死に現状を維持しようと、なにかにしがみつきたくもなるか。 いや、もっともっと、と、さらなる高みを望むようにもなったり?
そういえば、アルトゥール・ショウペンハウエルは、
「富とは海水に似ている。 飲めば飲むほど、のどが渇く」
と言っていたっけ ... 。
やはり、じぶんの好きなことをやるのが、いちばんか。 たとえ、経済的、物質的、社会的評価では満たされなくても。 他人からどう思われようと。 表面的に優位を誇示できなくても。 そういったものにしばられて、のどもこころも渇いてしまっては、元も子もない。 じぶんの思った道を歩めば、それが結果的には、じぶんにとっての、いちばんの財産となるのかもしれない ― 。
... なあんて、えらそうに、延々と書き連ねてみたが、多くの人がそう思っているにちがいない、と思う。
じぶんへ言い聞かせるために、じぶんへの教訓として、書いてみた。
そもそも、「勝ち組・負け組」 という表現にピクリときてしまうのも、じぶんがそれを意識しているせいなのかもしれない。 なんてね。
今後は、この blog (のようなもの) 執筆も、じぶんの速度で、好きなことを好きなように書いていければいいなと思う。 「カメ」 のように、ゆっくりと、着実に、― でも、ときどき寄り道もしたりしながら? ― じぶんにとってのゴールを目指せれば、それでいいのだ。 なんてね。
余談であるが。 かれこれ十年前、Beck というミュージシャンが、
「そうさ、オイラは負け犬さ、どうだい、殺りたきゃ殺れよ」
(‘Loser’- by Beck Hansen)
とうたったが、その後、彼は、rock というポピュラー音楽における winner となった。
winner となったことが、彼にどのような影響をもたらしたのか、私には知るすべもないが、どんなことで評価されるかわからないのが、人生のおもしろさであり、こわさでもあるのだろうか ... ?
BGM:
Rou Leed
“Transformer”
(‘ワイルド・サイドを歩け / Walk on the Wild Side’ 収録)
(revised 13 May, 2004) (CD ジャケット画像削除)