テレビのツボ

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『地球が静止する日』~現代文明への警告

2011-05-29 07:00:02 | ニュース・時事ネタ
「人類は地球で最大の寄生虫」

「人類は地球に対して、あまりにも暴力的すぎた」

「我々は人類が自ら変わるのを待った。しかし人類は変わらなかった」

「地球が滅びれば人類も滅びる。人類が滅びれば地球は救われる」

「地球のように生命に満ち溢れた惑星は宇宙の中でもごく僅かしかない。その惑星は守らねばならない。そのために我々は、人類を滅ぼすことを決意した」



…以上は、27日(金)に日テレで放送された米映画『地球が静止する日』で、キアヌ・リーブス演じるエイリアン「クラトゥ」が人類に送ったメッセージだ。

映画は、ニューヨークに光り輝く謎の巨大球体が降りてくるところから始まる。同時に世界各地にも同じ形の小型球体が降りてくる。
人類には、これらが何の目的でやって来たのか全く分からない。CTスキャンを使っても透視できず、ガスバーナーでも燃えず、ダイヤモンドヘッドのドリルでも傷ひとつ付けられない。
巨大球体から降りてきたエイリアン(クラトゥ)は銃撃され、軍に身柄を拘束されるが、特殊な能力で人間を翻弄し、たちまち脱出してしまう。クラトゥは逃亡劇のさなか、拘束中に立ち会った科学者ヘレン(ジェニファー・コネリー)に連絡を取り、行動を共にする。球体は「ノアの方舟」であり、地球上の生物を乗せて宇宙へ一時的に脱出させたあと、人類を滅亡させるためにやって来たのだと、地球来訪の目的を告げる。その時、同時に告げたのが冒頭のメッセージだった。

このメッセージの内容自体は、現代文明に対して発せられ続けてきた普遍的な警句ではある。SF作品においてはお馴染みのものともいえる。が、大規模な原発災害の渦中にある今の日本で聞くと印象は一変する。あたかも我々自身に突き付けられた最後通諜であるかのような、恐るべきリアリティさを持って迫ってくる。
原発、ひいては原発がもたらす膨大なエネルギーによって成り立っている人間社会に対する警告に思えてならないのだ。

福島での原発事故を受け、政府は原発政策を白紙から見直し、再生可能エネルギーの開発を促進すると表明している。当然の対策だし、そのこと自体はいい。だが、肝心の点には触れられていない。いや、官民とも意図的に無視している。その点とは、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とせざるを得ない文明社会の在り方そのものに対する再検証だ。上記の対策は、あくまで現状と同等のエネルギー供給を如何にして確保するか、その一点に矮小化されている。仮に代替エネルギーによって同等の電力が供給可能になったとしても、現代文明の持つ病理は何一つ解決されない。エネルギー消費そのものを減らし、環境への負荷を低減させない限り破綻は避けようがない。若干は延命するだろうし、多少は破綻の形が変わるかもしれないが、それだけのことだ。

日本の電力政策のいびつさは、電力消費量の推移に如実に現れている。バブル全盛期より、不況に喘ぐ現在の方が電力消費は倍加しているのだ! 官民一体となり、電力を大量消費するシステムを作り上げ、多くの電力なくしては生活できない社会にしてきたからだ。結果、電力会社は「需要に応えるため」との大義名分を得て、原発政策を推進できた。
麻薬を投与して依存症に陥らせ、相手の方から麻薬を求めざるを得ない状況を作り出す、麻薬犯罪の手口となんと似ていることか。

もちろん問題は日本一国だけではない。文明社会全体の問題である以上、全人類共通の大問題であることは言うまでもない。

今、人類は国や地域を問わず、際限なき欲望を充足させるため、ひたすら経済成長路線を邁進している。地球が数億年も掛けて蓄積してきた地下資源をたった数十年で浪費し、人類誕生以前は1000年に1種の割合でしか絶滅しなかった生物種を、1年で1万種も絶滅へと追いやるようになり、1年で日本の四国に匹敵する面積の森林をも消滅させている。
これで資源が枯渇しないとか、環境破壊が地球の許容限度を越えないとか考える方がどうかしている。拡大路線を無批判に擁護する専門家は、「日本の原発は絶対に安全だ!」と言い募り、批判的意見を封殺してきた御用学者と同根だ。

人類がどれほど専横を極めたとて、自然界が一方的に搾取・破壊されるままということはなかろう。大自然の力は偉大だ。自然界がひとたび牙を剥けば、人間などひとたまりもない。それこそがまさに東日本大震災であり、それに続く巨大津波だった。
東京都の石原都知事は今回の災害を「ある種の天罰」と評し批判を浴びた。が、東北地方の住民への天罰ではなく、人類全体、あるいは現代文明そのものに対する天罰だと捉えれば、あながち間違ってはいないような気がする。たまたま、矛先が東北地方に向いただけではないかと思うのだ。
同じように、かつてヨーロッパを襲った記録的な熱波、オーストラリアを襲った大干魃、アメリカ南部を直撃した巨大ハリケーン「カトリーナ」なども、大自然の怒りであり、人類への強烈なしっぺ返しなのではなかろうか?



さて、話を映画に戻す。
ニューヨークのセントラルパークに、巨大球体と共に降り立った巨大ロボットを、米軍がありとあらゆる兵器で攻撃するが無論、全く歯が立たない。ダメージを全然与えられないだけではなく、攻撃すればするほど、金属製の虫のようなものが大量発生し、それが人間や、人間の作った人工物をあっという間に腐食させ消滅させてゆく。

金属製の虫は無限に増殖、拡散してゆき、いよいよ人類滅亡は時間の問題となった時、ヘレンらが「人類は窮地に陥った時、必ず変われる! もう一度だけチャンスを与えてほしい!」と、クラトゥを懸命に説得。その言葉を信じたのか、クラトゥは金属製の虫を一瞬にして消し去り、最初に地球にやって来たのと同じ球体に乗り、地球を去って行った。

テーマはタイムリーで、メッセージには説得力があったが、映画としてはやや物足りない。さんざん裏切られてきたのに、クラトゥがあっさりと人間の言葉を信じて去って行ったのがどうも納得いかない。予定調和に過ぎる。もっとひと波乱、ふた波乱くらいあって、予想もしないどんでん返しがあってもいいいんではないか? 予算の都合もあって難しいのかもしれないが、せっかくの最新CGがもったいない。攻撃シーンや金属製の虫の襲来シーンが、単なる壮大な前振りになってしまっている。あれだけの大仕掛けをしておいて、最後はあんな呆気ない幕切れかと、がっかりさせられた。トム・クルーズ主演の『宇宙戦争』にも通じる空しさだ。

個人的な評価は5点満点中で2点くらい。テーマがタイムリーなことを加味しても、せいぜい3点くらいかな?

★★★☆☆



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