テレビのツボ

テレビ番組の中の面白試聴ポイント(ツボ)を探し出し、それらを面白おかしく紹介するブログですε=┏(; ̄▽ ̄)┛

「人質秀忠」~これが10歳!?

2011-06-24 08:37:20 | 大河ドラマ
やっと録画を観た…で、遅ればせながらのレビュー。
先週から登場した、向井理演じる徳川秀忠(竹千代)。向井の起用は視聴率対策だろうということは先週にも書いたが、不自然なのは年齢設定だけではない。風貌もしっくりこない。実際の秀忠はもっと無骨な顔立ちだ。大河で演じた俳優でいえば西田敏行がかなり近い雰囲気かな? この時代、徳川家の嫡男といえど風貌には戦国乱世の荒々しい気風が色濃く漂っていた。天下泰平が確立し、時代が下っていくに従って徳川将軍の風貌はどんどん華奢になり、貴族化していっている。それは肖像画のみならず、徳川歴代将軍の亡骸の発掘調査でもはっきり証明されている。
向井の風貌は、例えば14代将軍の徳川家茂役なんかだったらピッタリだと思う。秀忠役はどう見ても違和感ある。別に秀忠とそっくりである必要はないけど、もうちょっとリアリティを醸し出してほしいなあ~。それに前田健の弟役って…。こんな似てない兄弟っていうのも不自然。前田の方がよっぽど秀忠には似てる。まあ、史実だとかリアリティだとか言い出すと空しくなるばかりだが、もうちょっと何とかならんかなあ~とは思う。


天正十八年(1890)一月、家康のもとへ嫁いでいた旭が、京・聚楽第で臨終の床にあった。
枕元に親族一同が集まり懸命に励ますも、病状は重く快復の見込みはなかった。「姉上…あんちゃん、頼むわ」旭は言い遺し息を引き取った。

廊下で悲嘆に暮れる江の前に、見舞いに訪れていた竹千代が現れる。
見舞いに来て下さって、旭様もさぞお喜びに…と言う江の言葉を遮り「見舞いはついでです。父に命じられて、豊臣家の人質になるために来たのです」竹千代は素っ気なく答える。

翌日、秀吉は竹千代の元服の儀を自ら執り行い、大政所が剃刀を入れて髪を整えた。竹千代は秀吉の名から一字を授かり、その日から秀忠と名乗るようになった。

「旭様が亡くなった翌日に元服とは…。猿は何を考えておるのじゃ」江が侍女ヨシにぼやきつつ廊下を歩いていると、また竹千代…改め秀忠と出くわした。
「身内が亡くなった次の日に元服の儀を執り行なったのは、父に恩を売るためでしょう。如何にも関白様らしいやり口です」そう皮肉っぽく言う秀忠に、江は思わず「秀吉様はそこまで汚ない人ではありません」と、さっきの愚痴とは矛盾することを言ってしまう。
「今度は庇うのですか? さっきはボロクソに言ってたクセに」すかさず突っ込む秀忠。
言ってることはモットモなんだが、この時まだ秀忠は弱冠10歳じゃよ~。ツッコミの鋭さといい、皮肉混じりの落ち着いた口調といい、とても10歳とは思えん! 上野も確かに年齢不詳の役を演じてたけど、もっと天然ボケ全開の演技を披露していた。向井はそんな気配まるでナシ。大人の演技に徹している。演技だけ見るとリアルだけど、史実に照らすとリアルではなくなる。う~ん、どっちを取っても無理が生じるな。

「あ、そうそう…私、信雄様のご息女と縁組みが決まりました」と、これまたついでといった口調で付け加える秀忠。「相手は5歳とか…」あまりの幼さに驚きを隠せない江。
まあ、向井の実年齢で婚約者が5歳だったりしたら完全にロリコンだが、史実を基に考えれば秀忠とは5歳差しかない。これも史実と役者の実年齢にギャップがあり過ぎて不自然だ

「ウチの父も北条と戦うため、嫁がせた娘を離縁させた。その上、私を人質に出してまで豊臣に忠誠を誓おうとしている。どっちもどっちです」投げやりな口調の秀忠に、江が反論する。「徳川様はそのようなお方ではありません」
そこで唐突にBGMが止まる。静寂の中、真顔になった秀忠が振り返りざま江に問う。「なぜ分かるのですか?」

すぐ、おどけた表情に戻って「まっ、私にはどうでもいいことです。人質としての用もなくなったので帰ります。もう二度と会うこともないでしょう」捨て台詞を残して駿府へ帰っていった。
この辺りの演技はうまいが、うまければうまいほど10歳には見えなくなる。やはり史実なんか忘れて観るに限るなあ

駿府へ戻った秀忠は家康と対面するが、相変わらず皮肉や冷笑のオンパレード。
「京の都で面白いおなごに会いました。名前は確か…江とか」思わぬ報告に家康は喜ぶが、秀忠はわざ父親の神経を逆撫でするようなことを言う。「父上をたいそう買いかぶっておいででした。旅の埃を落としてまいります。では…」

秀忠が席を辞したあと、家康がため息混じりに傍らの本多正信に呟く。「子供の頃は明るく素直だったのに、すっかりひねくれてしまったのう」って…秀忠は10歳なんだし、まだまだ充分に子供なんじゃないの~?てなツッコミを入れたくなった。

北条攻めを前に秀吉、黒田官兵衛、石田三成らが利休の茶室に集う。
「そなたも小田原に着いて参れ」利休は秀吉の命令をにべもなく断る「もう歳なんで、長旅は疲れますわあ~」
利休の無礼な態度に三成がキレる。「信長公に同じことを言われても、そう返答されるのか?」お~~い、利休は信長相手にも言いたいことをズバズバ言っとったじゃないかぁ~! それを三成は知らんのか?

利休は秀吉に、黒い茶碗で茶を振る舞う。秀吉が黒い茶碗嫌ってることを分かった上でだ!
「ワシがこの茶碗が嫌いなことを分かっておらんのか?」怒った秀吉は茶を畳にぶちまけて茶室を出ていってしまう。もう、かつてのような漫才みたいな雰囲気はまるでない。
「お世継ぎが産まれてから関白殿下は気が短くなった。利休様の御為、どうか殿下には逆らわないで下さい」官兵衛が頭を下げたので、利休もしぶしぶ小田原への同行を承諾する。

3月、秀吉は二十万以上の大軍を催して小田原攻めを開始するが、これも例によって鈴木保奈美のナレーションと、過去の大河シーンの使い回しのみ。あっ、それと小田原城のCGも加わってはいるけど、これもほんの数秒だけ。いつものことだけどね。
それにしても、せっかく清水紘治のような味のあるベテラン俳優を北条氏政役で起用しておきながら、出番が少な過ぎる。もったいないなあ~。

それから暫くして、秀吉から淀のもとへ、小田原に来るようにとの書状が届く。戦がトラウマになってる淀は戦場になど行きたくはないのだが、秀吉からの命とあらば従わないわけにはいかない。
7月、淀ら一行は小田原に到着する。もちろん江も一緒に。
そこで江は秀勝と再会を果たす。二人は並んで、利休の振る舞う茶を飲む。そこへフラリと入ってきたのが秀忠。
「秀忠様は茶がお好きで、ようお見えです」利休が秀忠のことをそう紹介すると「へぇぇ~、元服したばかりの子供に茶の味が分かるのですか?」江が嫌味ったらしく訊く。
「跳ねっ返りのおなごに茶の味が分かるとも思えませぬ」と、売り言葉に買い言葉の秀忠。
「年上の相手に向かって出過ぎた口を訊くのは…!」いつもの勝気さを剥き出しに食って掛かった江だったが、ここで隣の秀勝の視線を意識した江は一気にトーンダウン。「おやめなされ…」
江の羞じらいに気付いた秀忠がからかう。「ははぁ~ん、お二人は許嫁だったんですね~
「違います!」言下に否定する江。
ところが秀勝は満更でもない様子。「私はそれでもいいと思ってるんですよ」
この反応を見て秀忠が更に江を冷やかす。「なるほど…江殿は秀勝様を…」ここまで言ったところで江が秀忠を突き飛ばす。
「なんですか! いきなり!」

「口数の多い男は嫌いです!」

「口数の多いおなごが言うことですか!」

「おなごは口数が多いものです!」

江と秀忠の痴話喧嘩を見かねた利休が注意を促す。「静かにしなはれ!」
江が、次の夫と、その次の夫との間でこんな幼稚なケンカをしたわけないんだがなあ

陣中では、三成が秀吉に「利休に不穏な動きあり」と讒言している。
そこへやって来た秀次は吐き捨てるように言う。「お主、利休を妬ましく思うて言うておるのじゃろう!」
この指摘は正しい。どう見ても、三成は個人的な妬みから誹謗中傷してるようにしか思えない。それくらい三成には小物感が滲み出てる。秀次もたまにはいいこと言うねえ。

「ええ加減にせんかぁ!」秀吉が二人のやり取りを制したところで、伝令からの一報が届く。
「例の城が完成しました!」そう、史実でも有名な、いわゆる『一夜城』が遂に出来上がったのだ。
やっとのことでまともな史実が出てきたと思ったら、これがまた短い。小田原城に面した側の木がドーンと切り倒され、忽然と城が現れたのを見た氏政が「何じゃこれは~?」と、往年の松田優作の殉職シーンのような台詞を発しただけ。あとはガックリ膝を落とした氏政の姿に重ねるように、ナレーションで「遂に小田原城は落城したのです」って、これこそ「何じゃこれは~!」
戦のシーンはもとより、伊達政宗が手打ちにされるのを覚悟で、白装束姿で遅参したシーン、更には諺にもなった「小田原評定」のシーンすら全くない! 肝心の史実はナイナイ尽くし。創作の恋愛シーンは盛り沢山。これぞ『江』だ!

戦勝に酔いしれ、どんちゃん騒ぎに興じる秀吉軍の将兵たち。が、戦が嫌いな江は素直に喜べない。そんな江の手を引っ張り、秀吉は利休の茶室へ向かう。
と、そこに居たのは家康! タイミング悪すぎ。三成の讒言が裏付けられたも同然。
しかし、秀吉は素知らぬ振りで茶室に入ると、利休に茶を所望する。利休が秀吉に出したのは、なんとあの黒茶碗!
「こやつ~」秀吉は利休を睨み付ける。明らかにケンカを売っておきながら「これをお嫌いなのを忘れてました」なんてわざとらしいこと言いながら茶碗を下げる利休。ここで秀吉の怒りを更に煽る一言。「黒は古き心…赤は雑な心や」秀吉が、赤が好きなのを知っててこの言葉!

「おのれ~、茶頭の分際で…」秀吉の怒りをかわすように利休はさらっと言う。「その茶頭ですけどな、もう辞めさせてもらいますわ。堺へ帰って静かに余生を過ごそうと思てます」
だが、秀吉はこの申し出を認めない。「そなたは死ぬまで、ワシのために茶を立てるのじゃあ~」利休を飼い殺しにしようという魂胆だ。
利休は淡々とした態度で、恐るべきことを口にする。「ほな、もう死にますかな? いや…殺してもらいますかな?」

ヒェ~! 利休はもう、秀吉に殺されることさえ覚悟している!
来週はいよいよ「利休切腹」。淡々としながらも重厚な演技を見せている利休が、来週には退場してしまうとは惜しい!
本格派ほど早く退場していくのはこのドラマの宿命だな…。