テレビのツボ

テレビ番組の中の面白試聴ポイント(ツボ)を探し出し、それらを面白おかしく紹介するブログですε=┏(; ̄▽ ̄)┛

「父母の肖像」~親バカ秀吉

2011-06-16 03:31:52 | 大河ドラマ
今週は秀吉の親バカっぷりが炸裂している。と同時に、狂気に満ちた権力亡者の一面も露にしている。まあ、権力の濫用も我が子への偏愛ゆえだから、表裏一体ではあるんだけど…。いずれにせよ、視野狭窄に陥って大局を見誤る晩年の秀吉の愚かしさが、そこかしこに現れ始めてるっていう意味では注目に値する。それ以外にはあまり大きな展開はない。


天正十七年(1589)正月、京・聚楽第にて身内だけでのささやかな宴を催した秀吉は、愛する茶々が身籠ったことが嬉しくて堪らない様子ではしゃぎまくる。おねの心情を慮った三成が咳払いをし、浮かれ過ぎの秀吉に注意を促す。
が、おねは落ち着いたもので「私は茶々殿が丈夫なややを産んでくれることを念じております」と、すっかり達観した表情を見せている。
「さすがは、おねじゃあ~。茶々を豊臣の母とまで言うてくれたそうじゃからなあ、ワハハハッ!」と、秀吉はおねをまるでウルトラの母のように持ち上げる。相変わらず女心には疎い秀吉だ

久々に里帰りした妹の旭は、「兄のややが産まれるまで京都にとどまる」と言う。家康に、ゆっくりしてこいと言われたそうな。「家康様は優しくて…」と、照れ臭そうにノロケる旭。おやおや、家康は心変わりしたのかな? 新婚初夜はあんなに素っ気なかったのに~

茶々の部屋へ赴いた秀吉は、京と大坂の間にある淀の地に競馬場…ではなく新たに城を造ると宣言する。茶々の産所にするためだという。「お得意のキンキラキンで派手な城だけはやめて下さいね!」と、江からはしっかりと釘を刺される。
更に、産まれてくる我が子のためといって、祝いの品々を披露するんだけど、これが甲冑や太刀など、揃いも揃って男の子用のものばかり。「産まれてくるのは男の子じゃからのう」秀吉は勝手に決めつけている。

と、ここまでなら単なる親バカだと笑って済ませられる。けど、ここから先が恐ろしい。一月ほどのち、『茶々のお腹にいるのは秀吉の子ではない』との落首が聚楽第の表門に貼り出されると秀吉は激怒。「これを貼り付けた者を捕らえて打ち首にせよ!」と三成に命じる。
必死の探索にも関わらず、落首を残した者は見つからない。苛立った秀吉は、警戒を怠ったとして門番17人を処刑。それだけでは収まらず、罪人を匿ったという名目で二つの町を焼き払い、更に60人余りをも処刑してしまった。
残忍な処刑シーンと、秀吉が茶々の腹に顔を寄せ、ニヤニヤしながらでんでん太鼓を鳴らすシーンとが交互に映し出される。この演出はうまい! 秀吉の狂気がより強調できている。

さて、この落首の文言にあった『側室が10人もいて今まで一人も子が出来なかったのに、茶々だけに子が出来たのはおかしい』というのは現代人にとっても素朴な疑問ではある。
今も、鶴松や秀頼は秀吉の実子ではないという説は根強い。実際、秀頼は小柄な秀吉とは似ても似つかない偉丈夫だったというし、残されている成人後の肖像画を見ても秀吉とは全く似ていない。母方の血をより濃く受け継いだ可能性はあるが、これでは疑われても仕方ない。保存状態のいい秀吉と鶴松・秀頼の遺髪でも残っていれば、彼らの間に親子関係があるかどうかDNA鑑定で特定もできるんだろうけど、そんなものはない以上、真相は確かめようがない。歴史に残る永遠のミステリーってところかな…。

秀吉の非道な振舞いに江は憤る。夜半、廊下で秀吉と対峙した江は、民の殺戮を激しくなじる。
「罪のない者や、お寺に逃げ込んだ者まで強引に捕らえるとは!」

「逃げたということは、罪を認めたのと同じじゃ」

「そのようなことをすればバチが当たります! 産まれてくる子に、どのような災いがあるか…」

「こやつ、縁起でもないことを…ならばそなたは平気かぁ! 茶々の腹の子が馬鹿にされたのじゃぞぉ!!」
悪鬼のような形相で叫ぶ秀吉に、江は冷然と言い放つ。「産まれてくる子に何かあったら秀吉様のせいですからねっ!」秀吉を睨み付けると、くるっと踵を返し去って行った。

なんと怖いもの知らずの江! こんなことを江以外の者が面と向かって言ったりしたら、その場で手打ちにされてしまいかねない。冷や冷やするシーンではあるけど、江の捨て台詞は予想の範囲内。鶴松が早逝してしまうことの伏線になっているという、実に分かりやすいものだ。何というか、相変わらず安直な脚本だなあ

「二度とこのようなことはせぬと殿下に誓わせた」怒りが収まらない江に対し、茶々がそう言ってなだめる。
そんな茶々を見て「姉上は変わられましたね…」と江。「それは…母になるからであろう」と、すっかり落ち着き払った態度の茶々。宮沢りえは実際に子供を産んでいるからリアルな雰囲気が漂っている。
「必ずや立派な男の子を産んでみせる」そう言い切る茶々に江が疑問を呈する。「なぜ男の子なのですか?」
「なぜでもじゃ」茶々は静かに、しかし決然として断言する。秀吉が親の敵じゃと言って憎んでいた心はどこへやら。今や堂々たる「豊臣の母」っぷりだ

3月、完成した淀城へ茶々が引っ越すと、江も一緒に付いて行く。淀城を訪ねた秀吉が「そちはワシに腹を立てていたのではないのかあ? なぜ付いてきた?」そう問うと「それはそれ、これはこれです! 甥か姪が産まれるのですから」江が答えると突然、秀吉が江に頭を下げた。「ならば…よろしゅう頼む!」なんじゃ、秀吉のこの平身低頭ぶりは!?
戸惑う江に、三成が事の次第を説明する。「関白殿下はこの城をお茶々様に与えると決意されたのです」女ながら城持ちの主になると言う。「殿下は、お茶々様を北政所様に次ぐご正室とお認めになったのです」これ以後、茶々は淀殿と呼ばれ崇められることとになる。

5月27日、いよいよ迎えた出産の日。秀吉と江は二人して、落ち着かない様子で産室の周りをウロウロしてる。産室では、天井から吊るした布を握りしめながら、茶々が必死で力んでいる。
「まだ産まれんのかあ~! 男の子じゃ、男の子が産まれるよう祈っておるぞぉ~。ええい、男の子でも女の子でもどっちでもいい! とにかく無事に元気な子が産まれてくれれば~!」秀吉はでんでん太鼓を鳴らしながら、江と一緒になって懸命に無事な出産を祈る。
産湯を抱えた侍女が産室へ駆け込んでいくと「私も行く!」と江も入っていこうとする。すると秀吉は江の手を握り「ワシを一人にしないでくれぇぇ!」
「それでも関白ですか! 太政大臣ですか!」天下人とは思えないあまりの情けなさに江は呆れ、叱咤するが「今は子の誕生を待つ一人の父ぞ…」と秀吉。
確かにこういう状況じゃあ、天下人だろうと何だろうと関係ないわな

二人がドタバタしていると、産室から元気な産声が響く。「やった、やった~!」二人は手を取り合って感涙にむせぶ。「ワシの子がこの世に産まれたのじゃあ…」侍女が扉を開け「若君にござります!」そう告げると「男の子じゃあ! でかしたぞ茶々~! 皆も喜べぇ~!」秀吉は跳び回って喜びを爆発させる。

産まれて間もない我が子を抱き上げた秀吉はデレデレ状態。「この子は【捨】と名付けた。捨て子はよう育つというからのう」
江が触ろうとすると「寄るでない…ガサツなのが移る」と、秀吉の的を射た指摘 「叔母などではなくて、優しくて美しい母御に似るのじゃぞう~」子の親になった秀吉と姉の姿を、江は微笑みながら見つめる。

それから3ヶ月後、豊臣家の跡継ぎだと天下に知らしめるため、捨は大坂城へと移された。同時に名前も捨から鶴松へと改名された。
そこへ次女の初が、鶴松の誕生祝いにやって来る。夫の高次も伴っていたので何故?と問う江に、高次は「戦の相談をするためです。いよいよ関東の北条攻めが始まるのです」

所変わって小田原城。秀吉からの書状を受け取った北条氏政が怒っている。ありもしない罪を並べ立て、天罰を被るのは当然だと書かれていたからだ。
氏政の嫡男、氏直は「返り討ちにしてやれば」と進言する。武田信玄や上杉謙信さえ退けたほどの城の堅牢さを知らないのだとせせら笑う。氏政も「百姓上がりの猿に、わが北条の強さを思い知らせてやる!」と憤り、書状を破り捨てる。
う~ん、秀吉の桁外れの動員力を知らないのは北条の方なんだが…。井の中の蛙みたいな哀れさが漂ってるなあ でも、氏政役の清水紘治は老練な戦国武将らしい、いい味出してる。

聚楽第では、関白の正装に身を包んだ秀吉が、諸大名や親族に対し、北条攻めを決意した理由をあれこれ述べている。まあ理由なんて北条を征服するための口実に過ぎないから、どうでもいい。秀次が「ぜひ私を先鋒に!」と申し出るが、秀吉は「先鋒は徳川殿と決めておる」と、敢えなく却下する。秀次の無能さは小牧・長久手の戦で証明されているから当然の判断だ

軍議のあと家康は、利休の立てた茶で一服する。「客は私一人だけだから、もっと狭い茶室でもよかったのに…」そう言う家康に利休は「いえいえ、狭い茶室は客が3人以上の時のみ使います。狭さが極まれば、逆に果てしない広さを感じるようになるんです」…なんとも哲学的。茶の湯の精神の奥深さも果てしないな。
更に「最近、私は黒い茶碗に惹かれるようになりました。関白殿下と趣味は合わないでしょうけど…。そのうち私のことが鬱陶しくなるんと違いますかな? 近いがゆえに最も遠い…」と、文字通り遠い目をして呟く。言葉は意味深だが、秀吉の逆鱗に触れ、切腹を命ぜられることの伏線としては分かりやす過ぎ

夜半、江がおねの部屋の前を通ると、中から秀次の声。思わず立ち聞きする江。伯父上は近頃、鶴松ばっかり可愛がってる。自分はないがしろにされてる!って愚痴ってる。
障子に映った人影に気付いたおねが呼び止める。中へ招き入れられた江は、酔っ払った秀次に悪態をつかれるが、気の強い江も負けずと言い返す。
「二人ともやめよ!」おねにたしなめられる秀次と江。それだけのシーン。これもオマケみたいなシーンだ

翌日、大坂城の広間で秀吉が鶴松を抱っこしながら家臣にお披露目。「北条が下れば、その先の奥州も全て豊臣のもの。国中がワシのものになるのじゃ。すなわち、そなたのものになるのじゃぞう~」鶴松に猫なで声で話しかける秀吉。「親バカもここに極まれりじゃ」初が呆れ返る。
「お願いがあります」唐突に茶々…改め淀が秀吉に話しかける。「懐妊中に、何でも願いを聞いてやると殿下は仰せになりましたよね?」
「そうじゃったなあ。で、願いとは何じゃ?」
「今年は亡き母の七回忌、父、浅井長政の十七回忌に当たります。つきましては追善供養をしたいと思います」
「お待ち下さい!」三成が淀の申し出に異を唱える。「豊臣家にとってお二人はいわば仇敵。かような例は古来ありませぬ」
「だから男の子を産むことに拘っていたのか…」秀吉が呟く。跡取りを産んで秀吉に貸しを作り、要求が通りやすいようにしたい、そんな想いを淀が抱いていたことに気付かされたのだ。
「そなたが父母のことで、そこまで思い詰めていたとは知らなんだ。そなたがやりたいことを止めるわけがあるまい。存分に供養して差し上げよ」秀吉は淀の願いを快諾した。

その供養のために描かれたのが有名な肖像画だ。冒頭のお市の方はともかく、下の浅井長政は時任三郎と全然似てないではないか



「仇敵の供養を許すとは武家のしきたりに反すること。それを許して下さったことで、私も殿下を許せたような気がする。秀吉様とようやく夫婦になれたようなに思うのじゃ…」しみじみ語る淀の言葉が江の心に染み入る。「姉上にも姉様にも大切な人が出来た。何やら寂しいのう…」大切な人が自分にも現れることを心待ちする江。

そこで場面は急展開。家康の居城・駿府城で的に矢を射かける若武者の姿。
顔がアップになると、そこいたのは何と向井理! でもこの時、竹千代(のちの秀忠)はまだ10歳の筈なんだが…。一刻も早くイケメン俳優を投入して視聴率アップを図りたいという営業サイドの思惑が見え見えだ~
かくして、年齢設定が滅茶苦茶なキャストがまたまた登場と相成った。で、今週のツボは極悪&親バカの秀吉と、どう見ても10歳には見えない向井理ってことにしておこう