ますぶちStyle/宝石箱の片隅

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New JAMの本棚-042 『中野明著・流出した日本美術の至宝』

2022年08月09日 | 日記

New JAMの本棚-042

『中野明著・流出した日本美術の至宝』

 

 

明治期になって廃仏毀釈などという頓珍漢な思想が反映し、多くの日本美術が海外に流出しました。これを嘆く方がいらっしゃいますが、私はむしろ歓迎します。それは何故かと言うと、海外の名だたる美術館は例外なく日本の至宝をとても大事に扱っていることを知っているからです。日本も明治になってフェノロサなどが中心になり、それまであまりに大衆化していた浮世絵ややがて国宝、重要文化財に承認される美術工芸などを発掘調査し、しっかりした管理体制を作り上げていきます。経緯は何であれ、結果として美術工芸品は世界共通の至宝と言って良いかもしれません。この本に収録されている

宗達の松島図屏風、平治物語絵巻、重命「四天王図」など、素人の私から見ても素晴らしい作品がボストン美術館やフリーア美術館などに収蔵されています。そしてもう一つ特筆しておきたいのが、19世紀のジュエリー作家アンリ・ヴェヴェールの浮世絵コレクションです。ヴェヴェールは『French Jewelry of the Nineteenth Century』という19世紀を中心としたジュエリーの大著を著していますが、絵画のコレクターとしても有名でした。その中に浮世絵のコレクションがあり、松方正義の息子幸次郎が買い上げているのです。それが現在東京国立博物館に収蔵されています。このヴェヴェールのコレクションに一枚絡んでいるのが林忠正らしい。この本でヴェヴェールの記載に出会うとは思わなかったのですが、本当に美を愛するものはこんなところにも手を広げていたのですね。


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