【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

探検家・冒険家 シリーズ 19-⑤

2013-05-12 12:22:53 | 冒険記譜・挑戦者達

近代の冒険家 = トム・モリス・ジュニア / “近代ゴルフの父” =

~ 黎明期の全英オープンを中止に追い込んだ若者 ~

 ◆◆◆一通の電報◆◆◆ 

  1875年9月4日 

 フォース湾を挟んでセント・アンドリュースの対岸にある、ノースベリックゴルフクラブにて、トムとトミーのモリス親子対、彼らの宿命のライバルとも言える、ウィリー・パークとその甥っ子のマンゴ・パークの2人による、フォーサム(各チームがそれぞれ1つのボールを交互にプレーして競う競技形態)競技が行われた。

 試合には25ポンドという当時としては高額な賞金が掛けられ、当代人気の2家族・4人の取り組みということで、近隣の大観衆を集めての熱戦となった。 

 トミーはこの試合への参加に気乗りしていなかった。 というのも、新妻であるメグのお腹が9ヵ月に満たぬというのに破裂せんばかりに大きくなっていたのである。 陽気なメグにも背中を押されたトミーは、助産婦をそばにつけ、不承不承会場へと赴いた。 

 

 汽車を何度も乗り継いでほぼ1日がかりで辿り着いたノースベリック。 ここでの因縁の対決は予想通りの大接戦となり、試合はいよいよ終盤へと差しかかっていた。 

 その時、観衆を掻き分けながら進んでくる1人の少年がいた。 その手には1通の電報が握り締められていた。 

 観衆にもみくちゃにされながらも彼は尋ねた。 

 「トム・モリスさんはどちらです?」  周囲は答えた。 

 「2人いるぞ。ほら、あそこの親子だ。だがボウズ、ちょっと待ちな。今、いいところなんだ。邪魔するもんじゃないぞ」 

 少年は困惑した。 彼が手にした電報の表には「緊急」と打たれているのである。 少年は隙をついて観衆の前に飛び出し、父親のトムに電報をそっと渡した。 

 トムは、その電報をトミーに見せないようにそっと開いた。

 

  「難産。至急、帰られたし」 

 トムは戸惑った。白熱した試合は残りわずかに2ホールであり、あと30分もすれば終わる。しかも次の汽車に乗るにしてもまだ数時間も先のことなのである。 トムは電報をそっとポケットにしまった。

 

 結局試合はモリス親子の勝利となった。 

 試合が決着し、大観衆の雄たけびのような大歓声がよくやく収まったころ、トムはトミーに囁いた。  「帰ろう。メグがよくない」。 

 しかし汽車だとセント・アンドリュース到着は翌日の午後になってしまう。 どうしたものかと思案しているところへ、ノースベリックの会員の一人が「海路、フォース湾を横切り、直接セント・アンドリュースに行くのが1番早かろう」と提案し、自らのヨットと使用人を提供した。

 

 洋上、凍りついたような表情で1点を見つめ続けるトミーに、トムはかける言葉すら見出せない。2人の間には冷たい海風だけが流れていた。 

 ヨットが無事、セント・アンドリュースの湾に入ったのは日付が変わってまもなくのことであった。そこにトムの弟であり、トミーの伯父にあたるジョージがボートを漕いでやってきた。

 彼は悲痛な表情でトムに耳打ちをした。 トムはそっと目を閉じ、ひとつ大きく息を吸い込んだ。そして何かを決心したかのように小さくうなずくと、青ざめるトミーに静かに告げた。 

 「トミー。メグは天に召された。赤ん坊もだ。残念だ」

 

 その瞬間、トミーは大きく目を見開き、全身を細かく奮わせた。そして長い長い沈黙の後たったひと言「嘘だ…」と、うめくように呟き、その場に崩れ落ちた。 

 トミーの慟哭は激しく続いた。 トムはその間黙って湾内をぐるぐると回遊させ続け、2時間後にトミーがある程度、落ち着いたのを見計らってボートを岸へと着けた。 

 家に辿り着き、そっと寝室のドアを開けた。

 そこには妹のリジーと末弟のジャック、そして医師や助産婦らに囲まれ、既に永遠の眠りについたメグの姿があった。 そしてその横には、生きて両親に抱かれることすら叶わなかった小さな命が真っ白な布に巻かれて置かれていた。 男の子だった。

 

 子宮破裂による失血死だったという。 4時間に亘って大量失血が続き、その中でメグも赤ん坊も力尽きた。 

 貧しい鉱山の町に生まれ、幼い頃から親の手伝いで坑道に入っては毎日、爪の中まで真っ黒になりながらも明るく生き、いつしか聡明で美しい女性へと成長したメグ。

 エジンバラやセント・アンドリュースでは夜明けから深夜まで休むことなく働き続けた。 やがて心優しきトミーと出会い、結ばれ、愛する人の子を宿した。

 幼い頃から夢に見てきたあたたかな家庭は、まさに目の前にあった。 その、ささやかな幸せを掴もうと手を伸ばした瞬間、突然何もかもが終わってしまった。 まるでシャボン玉がパチンとはじけて消えるように。 

 結婚からわずか10ヵ月目のことであった。 

 =資料・セント・アンドルーズ= 

セント・アンドルーズ(St. Andrews)はスコットランドのファイフにある、北海に面する町であり、ゴルフの発祥の地として知られる。 名前は聖アンデレにちなんで命名された。 

ゴルフの権威であるR&Aゴルフクラブと美しいゴルフコースのセント・アンドルーズ・リンクスがあるため、セント・アンドルーズは「ゴルフの聖地」と呼ばれている。

5年に1度、四大メジャーで最古の歴史を誇るゴルフ大会・全英オープンがセント・アンドルーズ・リンクスのうちの最も由緒ある「オールド・コース」(Old Course)を舞台に開かれている(テレビ中継では聖地と呼ばれる)。 また、スコットランド最古の大学であるセント・アンドルーズ大学が置かれている。 

ピクト人の本拠地がおそらくセント・アンドルーズの場所にあったという。言い伝えによると、ケンノウェイの守護聖人ケネスによってここに6世紀にカルディー修道院が建てられた。 その場所は747年まで同時期の記録中に実際に証明されていなかった。 アイルランドの年代記がセリングモナイドの聖職者チュアタランの死を記録してあったことから判明した。 聖母に捧げられた小さな教会が1860年にKirkheughで発見された。 

12世紀と13世紀、キルリーモントという名かまたはマックロスという名の定住が行われた。 別の言い伝えでは、アカイアのパトラス司教聖レグルス(またはリアゲイル)が聖アンデレの聖遺物を携えてここへやってきたという。 ピクト人の王アンガス・マクファーガスはレグルスにボアーズ・ライクという広い土地を与えた。 そこは現在のボアヒル近郊であるといい、その名が変わってセント・アンドルーズとなった。 

908年にピクト人とスコットランド教会が1つになり、セント・アンドルーズは9世紀に司教座の町となった。司教座の首位はダンケルドから移されたもので、セント・アンドルーズ司教はすなわち高位司教で知られた。 15世紀半ばには大司教座に昇格した。 町は1124年にロイヤル・バラ(Royal Burgh)となった。 

16世紀、フォース湾北部の重要港の一つの働きをし、伝えられるところによれば14,000人の人口があった。 しかし暴力的なスコットランド宗教改革とイングランド内戦の後、町は破壊された。ダニエル・デフォーは家々が荒廃し、港が海に浸食され二度と修繕されなかったとのべている。 しかしわずかに交易が改良されていった。

19世紀後半になってもまだ町は荒廃していた。 セント・アンドルーズ大学で教師たちは不満をこぼし、パースかダンフリーズへ移ったらどうかと熟考した。 1960年代に入り、町はセント・アンドルーズ大学の成長とゴルフ人気の高まりから生き返った。

 

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

                          森のなかえ

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