MARKETER’S BLOG【小太郎がゆく】

【小太郎がゆく】はマーケター小太郎がいろんなところで出会うさまざまなヒトやデキゴトについて等身大で描いていく日常見聞ログ

【小太郎がゆく】巻の九

2002年06月25日 | エッセイ【小太郎がゆく】
「小太郎がゆく巻の九」まえがき


「こんなに盛り上がるんだったら、チケットをとる努力をすればよかった」

W杯が進むにつれ、後悔の念が強くなってきましたが、
皆さんはいかがですか。

マスメディアもこれでもかこれでもかと競うように
サッカー関連の情報を流し続けています。

これだけ多くの情報が世にあふれると、
にわかサッカーファン、にわか評論家がいやおうなしに増殖してきます。

かくいう私も御多分に洩れず、にわかなんとかなので
サッカーを論じる資格はないのかもしれません。
がしかし、世紀のビッグイベントを素通りすることは出来ませんでした。

という訳で、今回はその「ワールドカップ」にスポットを当ててみました。

それでは【小太郎がゆく】はじまり、はじまり。
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【小太郎がゆく】巻の九

「『ワールドカップ』四年に一度の祭典に学ぶ」


◆常に最高のものが勝つとは限らない

「失意の中、ホテルに戻ると、横断幕があった。
『常に最高のものが勝つとは限らない』と書いてあったんだ」
八二年スペイン大会でブラジルを率いたサンターナ元監督の
誇らしげな顔が忘れられない。

ジーコ、ソクラテスら「黄金の4人」と呼ばれたMFを擁する
セレソン(ブラジル代表)は素晴らしい攻撃サッカーで世界中を魅了した。
だれもが心を奪われたチームは、しかし、2次リーグでイタリアに敗れる。

(朝日新聞)

無得点のまま予選敗退した前回王者フランス。
優勝候補のアルゼンチン、ポルトガル、そしてタレント軍団イタリア、
スーパースターベッカムを擁するイングランド、無敵艦隊スペイン…。
大会が進むに連れて、去りゆく常連チームと「ブランド」選手。
「何が起こるが分からない」というサッカーの本質に触れ、
心揺さぶられる感動と去り行く寂しさとが交錯する。

「誰が見ても強い」「実績がある」…。
こういう当たり前の評価にこそ、実は落とし穴がある。
選手の実績や知名度がチームの枠を超え始める。
するとそこには、実力に根ざした競争が成り立ちにくくなる。
もちろんこれがすべての敗因ではないが、敗因のひとつといえる。

そして、こうしたある特定のブランドに頼り切ってしまう危険性は
どの世界にも潜んでいるのである。

そうならないためのポイントは、公平な競争に基づく新陳代謝と
緊張感が働く仕組みを組織自らが持っているかどうか、である。


◆ピッチの檄とアジャストメント

「下を向くな!」
ディフェンスの一瞬のスキを突かれて失点した直後、
うな垂れるチームに檄を飛ばした。
負けという結果が変わるはずもない日本対トルコ戦のハイライトが繰り返される。

そこにヒーローからリーダーへ変貌した男がいた。

若い一流のアスリートに共通の「とがった」感性。
それが誇張され勝ちだった中田英寿が、無意識のうちに発したリーダーとしての言
霊。

「よくやった」「もっとイケたのに」、結果の受け止め方は人それぞれだが、
H組一位通過という躍進に彼のリーダーシップの果たした役割は大きい。
加えて、ベルギー戦後、ディフェンスラインの調整を繰り返したDF陣とともに、
ピッチという現場で、着実に、いや急速というべきかもしれない、
成長している日本代表イレブンを我々は目にしたはずである。

そして、これらの試合を通じて、現場の重要性を疑似体験していることに気づく。


◆十二番目の選手「サポーター」

「デーハミングッ!」
熱く赤い絵画は、一体となって動き、声援を送り続けた。
ひたすら自国の勝利だけを信じて。
韓国VSスペイン。その日、ソウル市内を鳥瞰したなら、
赤い点描画に見えたに違いない。

サッカーに限らず、ホームゲームの優位性については論を待たない。
しかし、ワールドカップのサポーターを目の当たりにして、改めて感じるのである、
十二番目の選手の存在を。

企業戦略に登場することの多いCSやCRMなどの「C」は顧客を指す。
顧客をサポーターと見立ててみると、仕事のありようは変化するはずである。
ただ単に買っていただくという関係から「支持をいただく」という一歩進んだ関係
へ。
この一点に集中していくと売り手と買い手という心理的距離は極めて近くなる。


◆今日の終わりは明日の始まり

「本当に友人が必要なのは、敗れた時だ。
…試合終了の笛は、次の試合へのキックオフの笛だ」(デットマール・クラマー)

予想もつかない数々のドラマは、勝敗だけがすべてではないことも教えてくれる。
勝者は誇りを胸に、そして、敗者もまた最高の舞台での経験を胸に、
それぞれが新しい目標に向かって歩み始めていく。
その絶え間ない挑戦にこそ本当の価値がある。
人生を重ね合わせる、と言ったら言い過ぎだろうか。

サッカーはサッカーを超えて大いなるもの、二〇〇二年夏。


次回『小太郎がゆく』、乞うご期待!

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Marketer's Essay【小太郎がゆく】<バックナンバー>
№000 序 章「おにぎり的な私」
№001 巻の壱「うりばのちからを信じています」
№002 巻の弐「スローバックなスーパースターにまなぶ」
№003 巻の参「いちねんの計は?やっぱりうりばにあります」
№004 巻の四「数字が教えてくれるもの うりばが教えてくれるもの」
№005 巻の五「目は口ほどにものをいう 耳は目以上にものを見る」
№006 巻の六「お酒飲む人 花ならつぼみ 今日も咲け咲け 明日も酒」
№007 巻の七「調査とは旅すること 旅することとは見聞きすること」
№008 巻の八「お食事系外食チェーンに見る『伝えたいその想い』」
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