介護福祉は現場から 2007.02.22-2011.01.25

新しいブログにリンクしています。7つのテーマにわけました。引き続きお読みください。

第3853号 介護支援専門員試験:介護支援分野の研究(その1)

2010-08-16 11:06:20 | 国家試験
介護支援専門員(ケアマネジャー)の研修受講試験は、毎年1回行われています。
平成22年度は10月24日の予定ですから残り69日ということになりますね。

ケアマネ受験の追い風 では、この試験の詳しい手引きがあります。

2009ケアマネ試験トライ&リベンジ では、2009年度について想定問題をアップしています。私も少しお手伝いしています。

なにごとも、試験の勉強は過去問の研究が重要で、皆さんもすでに何度も過去の問題を勉強されていることでしょう。

平成21年度問題


このシリーズでは、一番近い過去問である第12回の試験について「介護支援分野」の25の問題を少し詳しく勉強しなおしてみます。
この第12回の「介護支援分野」の問題はかなり難しかったというもっぱらの世評です。
上記のブログでJUNKO氏が指摘しているように、正解を暗記するような勉強では実戦では戦えず、そのテーマの背景と構造をよく理解することが大事です。
さて、前口上はこれくらいにして、平成21年度の「介護支援分野」を順番に考えて見ましょう。

     *        *        *       *

注意:質問文の選択肢の順番を変えてあります。

問題1 介護保険制度以前の高齢者保健福祉サービスについて、より適切なものはどれか。3つ選べ。

1 老人福祉サービスの措置による利用は、「反射的利益」にすぎないと解されていた。
2 特別養護老人ホームの入所に係る利用者負担(費用徴収)は、所得に応じたものとなっていた。
3 特別養護老人ホームへの入所は措置であったため、著しい高所得者は入所資格がなかった。
4 特別養護老人ホームの利用者負担(費用徴収)が中高所得者層にとって病院よりも重かったことも、社会的入院の一因になっていた。
5 特別養護老人ホームの整備が進んだ結果、医療ニーズの高い高齢者が特別養護老人ホームに措置されてしまった。

       *      *      *      * 

【解答】

介護福祉研究 P6273

(解答が見えないように別の箇所にしました)


【難易度】
難しい。

【出題の意図】
現在の介護保険制度の特色を知るために、介護保険制度が無かったときの仕組みとの対比を考えさせる。

【法令】
老人福祉法 第5条の4 第28条

【用語】
「反射的利益」
法律用語です。権利という用語と対概念(反対の意味)として使われます。憲法第25条の規定を巡って議論になりました。
社会福祉法制に関しては、坂田周一教授(立教大学)の解説があります。

坂田周一


社会的入院

第3286号 2009.11.05 で、印南一路『社会的入院の研究』をとりあげました。


【コメント】
選択肢ごとに趣旨を説明します。
5つの選択肢は、内容からみると2つのグループに分けることができます。

5つの選択肢のうち、1・2・3の3つは、介護保険法以前のシステムである老人福祉法の場合の費用負担について、介護保険との対比でたずねています。

「1 老人福祉サービスの措置による利用は、「反射的利益」にすぎないと解されていた。」
→権利性は認められていなかった。

「2 特別養護老人ホームの入所に係る利用者負担(費用徴収)は、所得に応じたものとなっていた。」
→所得額と利用者負担額との対比表が示されている。

「3 特別養護老人ホームへの入所は措置であったため、著しい高所得者は入所資格がなかった。」
→所得が高いから入所できないことはない。上記の対比表には、高所得階層の場合の費用負担の上限額が示されている。この選択肢は「ひっかけ」問題ともいえますね。養護老人ホームの場合は、経済的な要件が入所資格となっていますから、高所得の場合には養護老人ホームの入所資格はない。


次の4と5とは、介護と医療の関係に関して質問しています。
この2つは同じテーマなので、どちらかが誤りだと国語的にも見当はつくはずですね。
4では、病院に入院していた場合の方が特別養護老人ホームに入所していた場合よりも安い費用負担で済んだという実態を指しています。
他方、5の場合は、「社会的入院」として指摘される問題が、特別養護老人ホームの不足にあったという実態を知っていれば間違いだとわかります。

「4 特別養護老人ホームの利用者負担(費用徴収)が中高所得者層にとって病院よりも重かったことも、社会的入院の一因になっていた。」
「5 特別養護老人ホームの整備が進んだ結果、医療ニーズの高い高齢者が特別養護老人ホームに措置されてしまった。」
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12 コメント

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介護保険制度の背景 (げんき)
2010-08-16 12:00:39
午前中、インドネシアの人たちのレッスンで、
介護保険制度の話をしてきました。

介護保険ができる背景なども含めた話をしたので
(テキストの内容を噛み砕いて・・・)
ちょうどこの問題のところだったんですが、やはりケアマネの
問題は難しいですね。

しかし、試験問題の文はどうしてこう難解なんでしょう。
易しく話すことは難しい (bonn1979)
2010-08-16 12:21:22
げんきさん

ご苦労さまです。

お忙しい中をコメントありがとうございます。

イギリスの政府のサイト見ましたが
実にわかりやすいです。

日本は、市役所から電気製品の解説にいたるまで難しい文書が多いですね。

夏休みの残り
講義が始まるまでは
国家試験問題をとりあげようと
今朝思いついたのでした。
Unknown (しん)
2010-08-16 12:49:55
いよいよケアマネの試験まで2カ月余りですね。

私自身も毎年、法人内の受験対策講座で
介護保険制度の部分を中心に担当しており
(なぜか私自身が介護支援専門員を受験する前から…)
今でも毎年試験問題には関心を向けています。

今ではすっかり「落とすための試験」になってしまいましたので、
介護職の人たちには大変ハードルの高い、
そして日頃の業務を背景にして答えることが難しい試験ですね。

まずは保険制度という考え方、介護保険制度の仕組み・構造を理解していただくことが第一ですね。
その上で、なぜそのような仕組みに至ったのか、制度創設までの歴史的背景や制度創設後の改変の道のりを理解していく。
そして、各サービスの内容を把握していく、しかも自分の勤務している、併設している種別から押さえていくと理解しやすいかも、です。

テキストは歴史、経緯から冒頭入っていきますが、
そもそも制度そのものをある程度理解していないと、なぜそこがポイントなのか理解しにくいです。制度の大枠をつかんだ上で、背景をたどるとひとつの流れとして理解できますので、この順番をおすすめしています。
試験問題で年号等を問うことはなく、順番または内容そのものを問われることがほとんどですので、極力丸暗記を排するための方策です。

「幹」の理解→「枝葉」の理解という
流れを押さえていけば、試験後も役に立つ実用的な学習ができると思います。

ポイント外さなければ、まだ勉強間に合います!
Unknown (しん)
2010-08-16 12:54:12
問題文も非常に難解ですが、
実務についた後は、法律、通知・通達、Q&Aに至るまで
非常に内容の理解が困難な文書を相手に仕事していきますので、
是非はともかく、この程度の読解力は求められているかもしれません。
大変困ったことではありますが…。
丸暗記を排する勉強 (bonn1979)
2010-08-16 13:33:19
しんさん

コメントありがとうございます。

「時代は時代の課題を持つ」

たしか
むかし社会保障制度審議会が健在な頃の
会長であった大内兵衛の言葉です。

私は
先日、横浜で、多くの介護現場の皆さんとお会いして「自分(の追ってきたテーマ)の時代は
終わったな」
と思いました。

となると
このブログも店じまい
というわけですが
必要悪ともいえる「国家試験」を素材にして
社会福祉の基本問題を考える記事ではどうか
と思いなおした次第です。

さっそく
国家試験問題に向かうのを支援する立場の
しんさんからコメントをいただいて
(楽しくはないですが)
自分の任務としてやってみよう、と気を取り直しています。

意外と雑用が多い商売ですが
介護支援専門員だけではなく
社会福祉士や介護福祉士についても
同様に
「丸暗記ではなく考える」
というスタンスで
現実の問題を
考え直す手立てにならないか
残った現役時代の目標にします。
法律は難しいか (bonn1979)
2010-08-16 13:39:44
げんきさん
しんさん

が共に触れておられた問題ですが

私自身
法律を専攻してきたのですが

「法律は難しい」

というのは俗説だと思います。
多くはないですが
法律を易しく書いている人もいます・・
というか
ほんとは易しく書ける
のでは?

福祉の分野ともなれば
みんなに読んでもらわなければ
意味がないのに
「お役所言葉」が蔓延していますね。

「喫緊の課題である」
なんて報告書で結びの言葉に使っていますが
「緊急の課題」でよいのですね。

万事が一事。

せめて
ふだん利用される方と接する文書は
平易でありたいですね。
関心あり!です (トヨロ)
2010-08-16 16:15:11
引用:むかし社会保障制度審議会が健在な頃の
会長であった大内兵衛の言葉です。
私は
先日、横浜で、多くの介護現場の皆さんとお会いして「自分(の追ってきたテーマ)の時代は
終わったな」
と思いました。

この部分について、大いに関心があります。
私は、現場を離れてからというもの、見えていたものが見えなくなり、見えなかったものが見えろという不思議な感覚を体験しています。
その中で、あれだけ嫌いだった社会福祉原論に惹かれているところです。
再構築されたbonn先生のテーマに触れてみたいという思いに駆られます。
社会福祉原論 (bonn1979)
2010-08-16 18:31:36
トヨロさん

コメントありがとうございます。

前に
読書会のことをお聞きして
「社会福祉原論」を買ったのですが
そのままです・・

私自身のテーマは
「介護福祉政策
とくに介護福祉の専門職に関する政策」
といえますが
定年間際になって
「社会福祉の原理とは」
という大問題に帰ってきたのは
不思議です。

これを
大上段ではなく
3つの国家試験問題(に示された福祉界の公式見解らしきこと)
を考察することで
本質に迫り

受験者向けの作業でもあり
かつ、これまでの日本の社会福祉の幻想のようなこと、そのメカニズムのようなことに
迫れれば


おかげさまで
「暇で退屈」
とはならず
「時間が欲しい」
状態になったまま定年を迎えれそうです。
紡ぎ直し (トヨロ)
2010-08-17 11:35:35
とても興味深い研究ですね。
例えが悪いですが、「セーターをほどいて編み直すような」感じでしょうか?
「紡ぎ直し」の方がいいかなぁ。。。
楽しみです!

ちなみに、今回の問題は正解しました♪
またこの時期が・・・ (JUNKO)
2010-08-17 17:58:09
さっき書いたのだけれど消えてしまった?あれ?もし重複してたらすみません。
去年は古瀬先生はじめいろいろな方に応援して頂き、ケアマネ試験を合格することが出来ました。
取りはしたがまだ実務につかずウロウロしている私ですが、笑福会のメンバーにも今年ケアマネ受験する方がたくさんいらっしゃるので、今年は私も旗を振って応援したいと思っています。
貴ブログをリンクさせて頂きました。
つぎはぎの介護保険制度、あなおそろしや介護支援専門員実務研修試験、「いい試験だったなあ」と後味のいい試験を出題して欲しいですよね・・・・そうはいかないか(爆)

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