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本棚に爆弾

ボマーの、まあ読書やら二次創作やらなんやら。

蒼海訣戰 その3 兵棋演習――本気のホンモノのSLG

2008年11月13日 23時24分24秒 | 本:漫画
 記事としては3つめですが、2巻の話を。
 兵棋演習――まさかシミュレーションゲームをこう真正面から捉えた話が出るとは、誰もが思ってなかったのではないでしょうか。てか私は驚いた。うん。

 個人的に、ですが……この作品に「架空戦記」というレッテルを貼ることには物凄い抵抗を感じています。
 というのも……いや、「架空戦記」と称される作品をそう沢山読んだわけでもないのですけど、その大半は「こうだったらいいな」という妄想垂れ流しにしか思えなかったのですよ。もちろん玉石混交で程度の差はあるんでしょうけど、それでも、あまりに石コロが多すぎる。
 軍事通というより、軍事オタク止まり。自分が元から興味を抱いていた分野の知識だけに偏っており、だから、「夢の新兵器」1つで戦局がひっくり返るようなナンセンスな話になってしまったりする。そう言えばと学会でも散々笑い者にされてましたよね。
 そんなこんなで、「架空戦記」ってカテゴリはそれ自体がかなり特殊な、一部の固定ファンが延々と愛でているだけのような雰囲気とイメージがあるわけですが……
 この『蒼海訣戰』は、ちょっとその枠から飛び出している。
 これを「架空戦記」と読んでしまうのは、不幸な話だと思うのですよ。

 閑話休題。で、2巻の話です。
 唐突ですが、シミュレーションゲームってやったことあります?
 コンピューターゲームとしてなら、多少なりとやったことある人も多いかと思います。信長の野望やら、大戦略やら何やら。
 ただ、今でもきっと探せば見つかると思いますが、元々はテーブルゲームというかボードゲームというか、卓上に地図を広げ行うようなゲームでした。敵味方に別れ、部隊などを表す駒を地図上に配置し、ルールに則って部隊を動かし、行為の成否判定はサイコロを振って行う。
 再現性の高い本格ウォーゲームともなると、プレイ時間がやたらかかり、前提となる知識も相当に要求されます。……ぶっちゃけ、私も「やってみたことはあるけどあまり楽しめなかった」口なのですがw

 で。この卓上シミュレーションゲーム、実は、元を辿れば本気で軍隊で研究されていた代物でした。ってか今でも多少形を換えて残っているかと。
 部隊の動かし方など、大規模な演習で再現するのは手間だし金もかかり、また実際に血を流す戦闘を演じるわけにはいかない。そこで、机上で再現を重ねて最善最適な行動を研究しよう。戦場での運の揺らぎは、ランダムな数値=サイコロを振ることで再現しよう……と、こうして出来上がったモノをゲーム化したのがシミュレーションゲーム。

 この2巻では、その「ホンモノのシミュレーションゲーム」=兵棋演習、が話の中心になります。
 たかがゲームと侮るなかれ。海軍士官を志す作中の学生たちにとっては、本気も本気。上級生下級生の因縁、仲間の信頼、家族の思い出、知恵と運の比べあい――絶妙のタイミングで挿入されるイメージ映像や解説もあいまって、実に興奮します。
 題材の選択といい、その描写の仕方といい。「この漫画は良作だ」、と確信を深めた1エピソードでした。

 (……途中に挿入された兄貴のお話はちと蛇足、っつーか邪魔っぽかったけどね……(苦笑))

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