いつものように、
犬を連れて散歩に出た。
6時にもなると、朝日が既に昇っている。
それでも、
まだ世間は、動き出していない。
静かな田舎道を
音楽を聴くでもなく、
ラジオを聴くでもなく、
ただ、犬の後ろ姿だけを見つめて歩いていた。
昨日の夜、西にあった金星は、とっくに見えなくなっていて、
代わりに青空が、広がっている。
今日も、気温差ができそうだなって思った。
今はまだ、ひんやりしているのだけど。
私は、ふと、あることが頭によぎって
一人で笑っていた。
1年前、
現実の世界に嫌気がさして、
バーチャルな世界に、
逃げるように彼を求めてきた。
バーチャルの世界は、
居心地が良くて、
理想の世界だった。
辛いことがあっても、
ここがあるから耐えられると思った。
おかげで、この冬は、冷たかったけど、温かい冬だった。
春めいてきたある日、彼は、そこからいなくなった。
きっと、現実の世界に帰ったんだと思う。
私一人が残されて、
ここは、とても寂しい場所になった。
私も変わらないといけない。
でも、やっぱり、
自分の気持ちに素直になりたい。
それか、
もしかして、待っていたら、彼は帰っ来るかもしれない。
そんな狭間で揺れて、
今は、逆に、
バーチャルな世界から、
現実の世界に逃げたくなった。
だから、笑ってしまったんだ。
こうも正反対に変わるものなのかと。
そして、私はまだ、こんなになってでも、笑えるんだと思って笑った。
また、夜になると金星は見えるのだろうけど、
それは、昨日のものと同じに、見えるのかな。
違って見えたらいいな。