友達にも、
職場の人にも、
近所の人にも、
ましてや、
親、兄弟、
そして、子供たちにも。
誰にも言えないことがある。
私の気持ち。
それを言えば、
自分が否定される気がするから。
その夫を選んだ自分を。
それを言えば、
軽蔑される気がするから。
SNSで親しくなった彼がいる自分を。
私は、夫が怖い。
ひとたび、気に触るようなことがあれば、
攻撃的な口調で、私を粉々にする。
犬も、スタスタと遠ざかる。
娘は、
自分の部屋にこもって泣き出す。
私は、
自分から抜け出す。
この時彼女は、しきりにまな板の上の野菜を切っていた。
とても嫌な朝だった。
私は、彼に、今朝あったことをLINEで伝えた。
ここになら、書ける。
彼になら、聞いてもらえる。
そのうち、
だんだんと、気が楽になって、
LINEを送った後は、
もう、過去のことに変わっていた。
星がとても綺麗な夜だった。
夜の犬の散歩の時間を半分以上過ぎた頃、
諦めかけていた彼からのLINEが来た。
散歩にでたよ。
話そ。
そうあった。
それは、いつもと違う表現だった。
それで全てがわかる。
彼は、今朝のLINEのことを今も気に掛けてくれていて、
話せるよ。(どうする)
と、私に主導権があるような言い方をせずに、
話そ。
と言ってくれたんだ。
私には、そう言ってくれる人がいる。
何も辛くなんてないんだ。
彼に、電話をかけたら、
いつもの優しい声がして、
私を包み込んでくれた。
寄り添ってくれた。
そして、いつの間にか、私は、彼の今日あった話を
とても興味深く聞いていた。
その光景が、目の前に広がって、
私も一緒にそこにいたみたいに見える。
同じ時を過ごしていたかのような妄想をする。
そんな時間は、一瞬で、
買い物に行った帰りの夫からの電話で、
私と犬を拾ってもらうことになった。
彼もきっと、奥さんに迎えに来てもらって帰るのだろう。
お互い、パートナーに引き戻される。
私と彼は、これからもずっと、そう。
だけど、それでもいい。
私は、彼に感謝する。