同じ月を見ていた。
私は、西で。
彼は、東で。
こんなに離れているのに、同じものを見て美しいと感じるなんて、
不思議だと思った。
彼が、私にうつる自分の姿を見たくないと言ったあの日、
もう嫌われたと確信した。
二度と彼の前に現れない方がいいんだと、自分に言い聞かせた。
何が悪かったのか、考えた。
そして、自分をいましめた。
ある日、
涙が、我慢の限界を迎えて、溢れてきた。
泣いて泣いて、
どうしてこんなに泣けるのか、考えたら、また泣けた。
あなたは、本当に彼を愛してしまっていたんだね。
もう1人の自分が、そう言って、見守っていた。
思い返せば、そんな日々を過ごした春だった。
それから、
自立について考えた。
エゴについて考えた。
明るい夜の散歩道で、
いろいろ、いっぱい考えた。
そんな夏だった。
今知った。
たった一年前のことを
昔のことのように思えるのは、
あの頃とは、違うから。
でしょ?
これからは、
相手を思いやることで、エゴを封じ、
彼にすがらないことで、
自立する。
そんな関わり方で、
新たな関係を築きたいと思う。
そんな、
夏の終わりをむかえようとしていた。
彼は言った。この月のことを
記念だね!と。
私は、思った。
始まりは、またしても月だと。