
「アイシテル~海容~」は日テレで毎週水曜日10時から放映されているが、10歳の小学校5年生の男の子(野口智也)が7歳の小学校2年生の男の子(小沢清貴)を殺害してしまうという痛ましい物語を取り上げている。伊藤実による同名の漫画が原作となっている。

この実に重く、暗いテーマがそもそも僕の興味を引いたが、これは単に暗い物語では無い。ドラマのキャッチコピーでもある「このドラマを全ての母に捧げる」が示す通り、これは母と子、そして家族の物語であり、この殺人事件をベースに加害者家族(野口家)、そして被害者家族(小沢家)それぞれの心の傷、そしてなぜこのような事件が起きてしまったのか、なぜ智也君は清貴君を殺さなければならなかったのか、というその背景に迫りながら、母と子の在り方を描いているという点で、子供を持つ多くの母親や父親にとっては特に深く考えさせられる物語である。
野口智也の母親(野口さつき)役には、稲森いずみ。自分の子供が他人の子供を殺害してしまったという重い罪を背負った加害者の母親役であるが、この苦難に立ち向かいながらも智也に何があったのか、智也と改めて向き合い、自分と智也の心の絆を取り戻そうとする姿を見事に演じている。稲森いずみは久しぶりのドラマ登場という気もしたが、篤姫に出ていたのでそう久しぶりでは無かったようだ。彼女もトレンディー系の軽いドラマでは無く、最近はシリアスな内容の濃いドラマに主演することが多くなり、いい女優になったと感じているが、今回も深刻な役処の中で美しい母親を演じている。

一方、被害者である小沢清貴君の母親 (小沢聖子)役には板谷由夏。昔は結構クールなモデル系の役処が多かった彼女だが、最近ではNEWS ZEROのキャスターなどマルチな活躍を見せている。今回は自分の愛する7歳の息子を殺害されてしまうという、あまりにも辛く重い状況の中で、加害者、そして加害者の母親の心境や「なぜ清貴は殺されなくてはいけなかったのか」に迫っていく、これまた違う意味で強い母親像を見事に演じている。

共に言えることは、智也君、清貴君共にお母さんが大好きであったということであるが、この年頃のナイーブな子供に起こる様々な心の変化、母親との関係/距離感、家庭環境などが複雑に交錯しながら、事件は起きてしまったということが次第に判明していく。
この物語は、事件を担当する家庭裁判所の調査官、富田葉子 (田中美佐子)によって、事件の真相が明かされていくのだが、自分も小学校4年生の息子がおり、智也君の心の闇を次第に解き開いていく難しい役処を田中美佐子が好演しており、物語全体に纏まりと深みを与えている。

小沢家の長女/清貴君の姉で中学2年生の美帆子役には、今人気急上昇の若手女優、川島海荷(かわしま うみか)。2006年にドラマデビューしており、最近ではカルピスウォーターのCMでもお馴染みだ。今年は映画出演も控えており、これからの活躍が注目される女優の一人である。ちなみに、ガッキーこと新垣結衣は同じ事務所の先輩で、ガッキーによるこのドラマの挿入歌「うつし絵」のプロモビデオで共演している。

尚、このドラマのサウンドトラックを担当しているS.E.N.Sは僕が昔から好きなアーティストで、これまでにも多くのドラマ曲やCM曲を手がけているので、耳にしたことのある曲も多いと思う。僕も何枚かアルバムを持っているが、2000年に発売されたベスト版「透明な音楽1, 2」は特にBGMとしてお勧めである。今回もドラマを切ないシーンを見事に盛り上げる美しい曲を多く手がけており、このドラマのサントラ「Foregiving」も購入したいと思っている。ドラマのサントラを手がけるアーティストでS.E.N.S以外に好きなアーティストはREMEDIOSこと堀川麗美。映画「LOVE LETTER」の美しいサントラが印象的だが、S.E.N.S同様多くのドラマ、CM曲を手がけており、その美しさは格別で心の旋律に触れる。実はREMEDIOSは「白い春」の曲も担当しているが、この2つのドラマが好きな理由は、どうやらそのサントラ音楽にもあったようだ。
