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まほまほろば

まほろばのように日々の思いを書き綴った日記

若きウェルテルの悩み

2013-04-29 21:27:42 | 本(漫画、小説)
ゲーテ著の「若きウェルテルの悩み」を読みました

物語は青年ウェルテルが婚約者のいる身である女性シャルロッテに恋をし、叶わぬ思いに絶望して自殺するまでを描いているという切ない物語です。

ゲーテが若い頃に実際に経験したことを元に描いた内容だそうでして、当時のゲーテの辛い気持ちが切々と伝わってきました。本当に自殺することまでも考えていたようです。


ゲーテというと去年「ファウスト」を読みましたが、この物語はファウストとは全く異なる若人の純情物語でした。

厭世的で鬱気味な主人公ウェルテルが療養生活を送っていた時に出会ったシャルロッテは彼の心を癒してくれる天使のような存在でした。彼は彼女と出会えたことで救われただけでなく、彼女のことが好きになっていました。しかし、彼女には婚約者がいました。ルックスや地位など彼には到底勝てない婚約者でした。嫉妬心から徐々にシャルロッテと接することに苦しみを感じたウェルテルは彼女と距離を置くことにしました。しかし、それでも彼女のことが忘れられないウェルテルは再び彼女に近づくようになりました。そして、彼女を幸せに出来るのは自分しかいないと思うようになり、婚約者を殺そうとまで考えたりもしました。結局殺すことはなかったのですが、元々鬱気味であったということ、そしてそんなことまで考える自分が嫌になったウェルテルは悩みに悩んだ末自殺することとなりました。



私もこれとはちょっと違うのですが、似たような経験がありましたのでなんだか妙にリンクして、読んでいて非常に切なくなりました。

もう何年も前のことです。
私は旅先である人と知り合いました。
私は人見知りな性格で誰からも好かれるような人間ではありませんが、その人とはなんだか馬があったのか、妙に意気投合して友人(友人A)としてその後もときどき会ったりする関係となりました。
その友人Aは厭世的な私にはないような明るさを持っていて、会う事に徐々に惹かれていきました。
気になる人がいるとその人に恋人がいるのかどうか気になるものですが、これを直に聞いてしまうともしかしたらこの関係が壊れてしまうような気がして聞くに聞くことができませんでした。
こんな関係が半年ほど続いた後、風の噂で私はその友人Aに恋人がいることを知りました。さらにその恋人は私の友人(友人B)でした。
この事実を知ったとき私はいつの間にと驚きました。そして、私は友人Bには勝てないと思いました。傍目から見てもなんとなくお似合いでしたので。
ショックを受けた私はもう今までのように友人Aとは接することができないと思って徐々に距離を置くことにしました。しかし、友人Aに対する思いが消えていたわけではなかったので非常に辛かったです。

時は過ぎ、それから4年後私は友人Aと久しぶりに会うことになりました。話の中で友人Aは友人Bと何年か前にすでに別れていたということを知りました。普通ならばチャンス到来と思うべきなのかもしれませんが、その時の私には不思議とそっかぁという思いしか沸き起こりませんでした。時の風化のためか今となっては私の友人Aに対する思いはすでに過去の思い出となっていました。あのときあれほど夢中になっていた私がバカのように思えてきました。

あのとき私が友人Aと距離を置いたという選択は間違っていたのかどうかはわかりません。ウェルテルのように半ばストーカーのように再び追い求めていれば結果は違ったのかもしれません。
しかし、今となっては別に未練は全くありません。あくまで過去の思い出の一つです。
良い意味でも悪い意味でも昔から自分の淡白さ、鈍感さには呆れ返ります。





本を読んでいてここまで感情移入したのは久しぶりでした。
またいい本に出会えることができました





本屋でのんびりと

2013-04-24 21:54:10 | 本(漫画、小説)
本屋に行くとついつい気になる本ばかりがあって時間が経ってしまいます。

最近では、以下のようなものがありました。

・「屍者の帝国」:あらすじを見たらSFチックで割と好きなジャンルのような気がしました。

・「色彩を持たない多崎つくると、 彼の巡礼の年」:久しぶりに村上春樹の本を読んでみようかと思っていましたので

・「地下室の記録」:ドストエフスキーの謎を解く鍵である「地下室の手記」の新訳版です。以前読書会で扱いましたが、久しぶりにまた読んでみたくなりました。

・「栄養学を招いた巨人たち」:教科書に載っている有名な単語や現象の発見にまつわる研究物語です

・「マンガで読破 万葉集」:アニメ「ちはやふる」の影響で古典に非常に興味がわいています。

・「ドーキンス博士が教える「世界の秘密」」:「利己的な遺伝子」で有名なリチャード・ドーキンス博士が一般向けに書いた本



結局どれもパラパラ見ただけで買いませんでした。今買うと積ん読状態になってしまいそうでしたので。
もう少し読むスピードが上がればいろんなジャンルに手が出せるのですが、なかなか難しいです。



こういったジャンル以外にもいつもついつい見てしまうのが、料理のレシピ本です。

読むことで、なるほど!というレシピに出会うこともありますし、料理を作る上での参考になります。何より読んでいて楽しいです。

私が料理で心がけているのは安い原料を使ってそこそこの味を短時間で作るということです。
どうしても料理は最終的には原料ありきなところがありますが、調理法を工夫することで安い原料を美味しくするにはどうすればいいのかを考えながら料理をしています。

夢中になれるのでいい気分転換になりますし、美味しいものが出来た時には嬉しくなります。
基本失敗ばかりですが、毎日少しずつ調味料の配分を変えたりしながら調整していくことで好みの味が完成されていきます。

失敗は成功の元です。






カラマーゾフの妹

2013-04-02 23:25:24 | 本(漫画、小説)
高野史緒著の「カラマーゾフの妹」を読みました

この作品は昨年に第58回江戸川乱歩賞受賞作品であり、ドストエフスキー著のカラマーゾフの兄弟の続編として描かれたものです。
舞台はカラマーゾフの兄弟の物語終了から13年後。フョードル殺人事件の真犯人はドミートリーではなく別の人なのではないかという疑問から犯罪捜査官になった次男イワンが事件を再捜査していくといったミステリーの内容です。

評価に関しては賛否両論分かれる本作品ですが、私個人的にはう~んという印象でした
13年後の登場人物の設定や真犯人は○○だったという意外性には面白さを感じましたが、カラマーゾフの兄弟を読んでから読んだせいかいくつかの点で物足りなさを感じました。

①淡々としすぎている
ドストエフスキーの作品(特に後期)の大きな特徴は登場人物が皆変な人であることです。発狂したり、人の内面の汚い部分がうまくえぐりだされたりととにかく特異的で、そんなユニークな人たちがどんどん畳み掛けるような展開をうまく織りなして物語が進んでいきます。
本作品はそういった展開があまりなく、登場人物の内面もあっさりしすぎていて物足りなさを感じました。ただし、読みやすさはありました。

②アリョーシャが悪に堕ちた理由がピンと来なかった
元々カラマーゾフの兄弟は2部構成の予定で書かれたのですが、第一部が書かれてからすぐに作者が亡くなってしまったので二部は描かれずに未完のままとなってしまいました。しかし、構想は練っていたようでした。それは一部から13年後の世界で、純真無垢なアリョーシャが皇帝暗殺を狙うテロリストとなるといったような悪に堕ちた話となる予定だったようです(亀山郁夫著「カラマーゾフの兄弟の続編を空想する」を参照)。
本作品はその構想を元にして描かれていたのですが、なぜアリョーシャが悪に堕ちたのかの理由の説明がイマイチでした。カラマーゾフの兄弟の登場人物の中で一番人気の純粋なアリョーシャがそんな方向に行くからには何か特別な理由があるはずです。個人的にはそこが一番興味があったのでもう少し詳しく書いて欲しかったです。

③妹の設定が弱かった
タイトルにもあるように本作品では新たな登場人物として妹が出てきました。しかし、結局この人は何のために出てきたのかがいまいちよく分からず、印象が薄かったです(私の読解が足りなかったというのが原因かもしれません)。


この作品はカラマーゾフの兄弟やその他のドストエフスキー作品を読んだ後に読むよりも全くまっさらな状態で読んだほうが楽しめるような気がします。前作品の曖昧となっている部分から推察して真犯人へと至るプロセスは純粋にミステリーとして面白かったですし、変な先入観や期待感もありませんので。

読む人によって賛否両論分かれる作品ではありますが、話のタネに読む価値はあるかと思います

小笠原諸島と灯台

2013-03-02 13:00:00 | 本(漫画、小説)
だいぶ遅くなりましたが、読書会で扱ったヴァージニア・ウルフ著の「灯台へ」のレビューを書きます


最初一人で読んだときは内容がさっぱりとわからず難解でした。

この物語は3章から構成されていまして、

1章:スコットランドの孤島の別荘でラムジー一家とその友人たちがほのぼのの過ごす日常生活
2章:10年の歳月がめまぐるしく過ぎ去る。その間に第一次世界大戦が起こってラムジー夫人とその子供の何人かが死ぬ
3章:10年前とは変わってしまった今を鑑み、懐かしさを感じながら踏ん切りをつけて前を進んでこうとする

言葉足らずですが、一言で表すとこんなかんじの構成になっています。特に1章は長い割に特に大きなイベントは起こらずたらたらと風景描写・心理描写を事細かに描きながら進んでいくので読むのが非常にやっかいでした。



物語全体に渡って出てくる「灯台」ですが、これが何を意味しているのかを自分の経験を踏まえながら考えてみました。

灯台で思い出したのが2年前に行った小笠原諸島です。
片道25時間船で揺られながらたどり着いた時象徴的だったのが灯台でした(地元の人は”青灯台”と呼んでいて魚釣りが盛んな場所です。私もよく釣りをしながらぼーっと過ごしたりした思い出の場所です)。
このとき灯台が意味していたのは温かく希望をもって迎え入れてくれることでした。





そんな灯台ですが、島から内地へ帰ろうとするときには別の印象を醸し出していました。
それは別れ(旅立ち)です。
小笠原諸島は帰りの船が出るときに盛大なイベントが開かれます。島太鼓を叩く人や伝統の南洋踊りを踊る人、船で追いかけてくる人、また、灯台から海にダイブする人もいました。
楽しかった島を離れるのは辛い別れでもありました。しかし、同時にそれでも行かないといけないという旅立ちでもありました。






以上のように灯台というのは私にとっては希望と別れ(旅立ち)を意味していました。
このキーワードに加えて読書会の時に出てきた「人生」というキーワードをつなぎ合わせると、灯台は人生を表しているのではないかということにも納得することができました。
なぜなら、人間は原則として初め生まれたとき希望をもって迎え入れられ、そしていつかは死を迎え周りの人達と別れをつげるからです。

多少強引な論理展開かもしれませんが灯台が人生を表していると考えると、この物語の文章構成が人生を表しているように思えてくるから不思議です。


1章は日常生活を表していて特に大きな出来事もなくだらだらと長く続く章ですが、人生の大部分って基本はこういうふうに何もなく日常的なことが占めている気がします。

2章は10年という歳月があっという間に過ぎていく章ですが、人生も年を重ねるにつれ時が経つのが早く感じられるようになり10年前を振り返ってみてもあっという間だったと思えてくることがあります。

3章は尊敬していたラムジー夫人の死に別れを愛しみながらそれでも区切りをつけて進んでいく章ですが、人生もこのように別れがつきものです。思い出が楽しければ楽しいほど一層別れがつらくなりますが、それでも前に行かなければならないときがあります。絵描きのリリーが最後に描きかけていた絵の真ん中に線を引いたのも楽しかった思い出に別れをつけ、新たに旅立つんだということを意味していたのではないかと思われます。



一人で読んだ時にはさっぱりと意味がわからない物語でしたが、読書会での意見を聞いて改めて振り返ってみるとこの物語はこんなにも奥が深かったんだ、これはすごいと思えてきました。
読むのは大変ですが、また機会があったら読み直してみたいと思います

出口を探した13日間

2013-02-15 19:05:22 | 本(漫画、小説)
ドストエフスキー著「罪と罰」の公演があるらしいです

サイトはこちら


個人的に演劇だとラスコーリニコフとポルフィーリーとの対決などがどのようなものになるかが興味あります。
また、ミステリアスな人物であるスヴィドリガイロフも演劇だとどのような位置づけになるのでしょうか。


場所は名古屋でして、交通の便がいいです。
少し遠いですが、今まで名作の演劇ってあまり見に行ったことがなかったので充分見に行く価値はあります。


来月の予定しだいですが、行けるように計画を組んでみます