59歳「じージ」の癌治療日記

2005年11月、胃がんと診断された3人の孫を持つ59歳男性の治療記録

定年

2006-05-20 10:54:52 | Weblog

       

       

     

5月19日(金曜日)
5月19日 私の60歳の誕生日、すなわち還暦、定年の日である。
今の会社は途中入社で、昭和47年12月から現在まで33年5ヶ月を勤めたことになる。
思い起こせば色々な出来事があったが、このように病気療養中の身で定年を迎えることになるとは夢にも思わなかった。

朝9時半頃から会社に出向き、人事課で退職の手続きを行い、古巣の職場を訪ねた。
大方の人が1年半ぶりの再会である。
私の病気を知っている人は一様に「思ったより顔色も良く元気そうだ」と言ってくれた。
リーダーの人たちとしばらく雑談の後一人ずつ挨拶して回った。
それぞれの人たちとやった仕事が思い出される。
昼は役員クラスの人たちと一緒の昼食会がセットしてあった。
病気のことや昔話などしながらひと時を過ごした。
病気療養中と知りながらも、私で無ければ出来ない仕事が待っているから早く仕事に復帰して欲しい、なんてことを言われると本当に幸せ者だと感じる。ありがたいことだ。

フロアのみんなに挨拶して回っていても皆、「早く元気になってもう一度職場に帰って来てください、待っています。」と言ってくれることがとても嬉しかった。
最近は定年後も再雇用制度で仕事を続けている人が多い。

会社や同僚から花束や記念品を一人では持ちきれないほど頂き、妻の待つ車まで運んでもらった。本当に感謝の気持ちで一杯だ。

帰り道、妻が「定年を迎えた今の気持ちは?」と聞くがいままで病気治療のため会社を休んでいたので、一般の人に比べると印象が薄いかもしれない。私にとっては病気で日本に帰った日が定年の日だったのかもしれない。
普通なら「明日から会社に行かなくて良いので朝はゆっくり寝ておれる」とか
「これからは自分の好きなことで第2の人生をスタートさせるゾ」 とか
区切りのある生活変化が待っているのかもしれないが、私の場合は引き続き癌と向き合って生活しなければならない。

会社の帰りに病院へ行き血液検査を受けた。
今回も各数値に問題は無いとのこと。主治医は明日(土曜日)からアメリカへ学会の論文発表のため出張だそうだが夕方になっても患者が待っていて、今日中に終われるか心配だと冗談で言われるほど忙しい。まだ荷物のパッキングもしていないそうだ。
発表が終わった2日後には日本へ帰り、金曜日には病院へ出ないと患者さんが待っているとの事。 我々の仕事も大変だったが、医者特に大学病院の医者も大変だなと思う。

病院からの帰り道、定年のお祝いに小奇麗なお蕎麦屋さんによって、ささやかなお祝いを夫婦2人でやってきた。ビールを小さいジョッキに一杯飲んだ。とても美味しかった。
お蕎麦も最高で妻も気に入ってくれた。

家に帰り妻からも誕生日プレゼントとねぎらいの言葉が記されたカードなどもらい、会社からの記念品や感謝状など紐といていると、やっぱり「あー 定年なんだな」
としみじみ感じた。
子供たちがこの瞬間に居合わせないことに一抹の寂しさを感じたが、皆独り立ちした以上は、いたし方の無いことで、逆に独立してしっかりと生活していることを喜ぼう。