バリ記 

英語関係の執筆の合間に「バリ滞在記」を掲載。今は「英語指導のコツ」が終了し、合間に「バリ島滞在記」を連載。

バリ記21 劇場国家

2020-01-02 11:31:57 | バリ記
2000年3月17日
劇場国家


 バリは「劇場国家」とも呼ばれている。このことを単に芸能が多いとかいう意味でとらえるのではなく、もっと大胆に考えてみる。
 通りにいかがわしそうな男がいることも、店の前ではなんともだるそうに座っている女性たちも、地元の人々の店の売り子たち、ホテルのスタッフたち、すべてがこの劇場への出演者である。カタコトの日本語も、もちろん出演者のセリフである。
 こういう人たちをいちいち批判する人がいるが、それはその人の器量というか物の見方が狭いだけの話だ。比較でしか物が言えない人がいるが、もっと高いところから物を見る視線がなければならない。
 浜辺に立って水平に海を見ても、見える海の風景はひとつである。それを高いところから見れば、どこが浅くなっていて、この辺が深くなっているということも見え始めるのである。
 バリの外国人は、このバリの出演者たちが演じる中で、ようやく仕事ができる。
 僕のような日本人は、劇場の舞台の裏で、シコシコあれこれお手伝いする。そういう感覚である。


2000年4月18日
再び、鳥毛 清喜のこと


 バリ島は、雨季の頃と違って雨の匂いが遠ざかり、日中は澄んだ明るさとなって、空気は湿っぽさから乾いたようになりつつある。
今は、観光客は少ない頃で、名古屋からの直行便も七十%ほどの乗客である。
 前回の「僕のバリ日記」で、バリに住むガラス工芸家、鳥毛清喜のことを少し紹介した。ビン探しの為、雨が降れば洪水となる、電気もないくねくね道をやっとの思いで通り、とうとう海辺のそばの彼の工房を見つけたのは、三月中旬。
「昇ってみたくなる階段」さえできれば、レストランをやろうと思っていた僕は、彼との出会いで、レストランをやることに決めた。明日(十九日)が、諸々の準備の為のスタート時である。この一ヶ月間でデザインもほぼ決まり、今日、彼からのデザイン説明を聞いたのである。
 このレストランがうまくいくかどうからからない。ただ、彼と仕事を一緒にしようと思ったのは、彼は、伝統的なバリのスタイルやデザイン的なものにはこだわらず、全く完全に自分のスタイル、デザインで突き貫けてしまう創造力である。どのエステも、どのホテルも、どのレストランもとにかくバリ風なものを取り入れ、追求した挙句、屋根も床も壁も、みんな似たりよったりのものになっている。しかし、彼のデザインはインターナショナルである。
 そして、インターナショナル性は、バリという小島のあるものをインターナショナルな美的感覚まで普遍化してしまうところにある。



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