バリ記 

英語関係の執筆の合間に「バリ滞在記」を掲載。今は「英語指導のコツ」が終了し、合間に「バリ島滞在記」を連載。

バリ記33 バリに住みたい?/ グチる人

2020-01-15 10:47:46 | バリ記
2000年6月19日
バリに住みたい?

 僕はまだかつて、バリ島に住みたいと思ったことはない。ここを定住の地としようと思う気持がどうにもわからないのだ。もちろん、そう思わせない理由は幾つもあるのかも知れない。例えば、仕事が日本にもあるとか、年老いた両親が日本に住んでいるとか、である。
 バリ島では、居心地よく仕事をしている。日本にいるよりは楽しい日々が続いている。
僕の好きな地のひとつであるが、定住とまでいかないまだ行ってみたいところがある。何ヶ月か住んで見たいところもある。マラッカとか、モロッコあるいはニューヨークとか。
 リスボンは好きな町のひとつで、アルファーマあたりに住んでみたいと思ったり、ナザレの海岸のそばに何ヶ月かいたいと思うこともある。東京の下町でも小さなアパートを借りて四月の桜を見、下町の商店街をぶらぶら買物をして、みたいなこともいいなと思う。
 それらすべてを実現させようと思ったら、その場が一番便利となる仕事を作らなければいけない。
ジプシーではないが、行く先々で仕事を作り、人と接し、人と共に築きあげてゆく。長く滞在できる条件とは何か、と問えば、自分の場合、きっと食材だろうと思う。
 このことを考えると、僕には明確に故郷がある。そこで、二月の下旬から三月の上旬の十日程の間にとれる「えたれいわし」は、この十日間だけアブラがうっすりとのって美味しい。軽く塩をして一日干してから焼いて食べる。
あるいは、十一月頃から南下してくるサンマは、まだアブラがおちきっておらず、これを丸のまま干物にすると実にうまい。夏になれば鮎がおいしい。
 バリ島の川魚を見たかったので、料理長に買ってきてくれないかと頼んだ。彼が持ってきたのは、鯉に鮒(ふな)、それになまず。貝といえばタニシの大きなものだった。川魚の種類が少ないのに驚いた。
日本でも川魚はそんなにスーパーなどには出まわっていないが、熱帯の地には、鮎やアマゴはいないようである。
僕は、貝や魚、蟹などが好きで、その点ではリスボンはよい。タカノツメという僕の住む町でもとれる貝も豊富で、イワシも同じように焼いて食べる。アジの開きまである。
 話は脇道に入ってしまったが、どうやら僕の場合、バリ島を定住地と思えないのは、そういうことからなのかと思ったりする。
バリで定住を決めている人で、僕の知っている限りの人は、一様に食が細く、食にあまり関心がない。
この辺が違うところなのかな。すると、どこのところで定住を決意するのか、そこから先の想像がつかない。脳みそをカチ割って、見てみたい好奇心にかられる。

2000年6月22日
グチる人

 バリの人々と共に仕事をしている(雇っている)日本人の多くは、「バリ人は、いくら仕事を教えてもおぼえない。自らの判断で仕事を見つけられない」と不平を言う。
 僕は、この種の日本人の言うことをほとんど信用していない。
 「約束の終了日までにできない」「仕事が雑だ」 それは、裏を返して言えば、雇い主である日本人のことである。
 例をあげよう。
 朝、民宿めいたホテルで朝食をオーダーする。オーダーは、トースト、コーヒー、ヨーグルトをのせたフルーツサラダだとする。すべて完璧に持ってくるのかと言えば、トーストを持ってきてもジャムを忘れる。今日は、完璧かなと思ったら、サインをするペンを持って来ない。などなど。おそらくこのようなことが日常の仕事の場面で起こっているのだと思う。
バリ人がゆっくり歩くのは、身体を消耗させない、汗を吹きださせないための風土的な知恵である。これをグチってもしかたがない。多くのことは、言語能力が不足する為に起こるものばかりだと思う。だからこそ、指示を出す側に念押しの確認がいる。また、あいまいな返事になっていないか、そうならないようスタッフも確認とイエスとノーをはっきりするという習慣を、これは雇い主の仕事として研修し、身につけさせなければならない。
 指示する側が持っているイメージがあるならば、それを何でもいいから表現してできるだけ正確に伝えるか、もしくは、見本を見せるか、一回目の失敗を覚悟するかである。国土、文化、生活習慣、経済的格差のある人々が一緒に仕事をするということは、日本人同士のようにならない。これは、誰でも当然のことと思うだろう。
 わかりきったことなのにバリ人をけなす日本人が多い。
「それなら、バリにおるなよ」とつい言ってしまう時もあるが、この頃は、「いやぁ、そんなのは半分ずつの責任ですよ」と笑って言うことにしている。
 自慢ではないが、僕らのグループにいるバリの人たちに僕は不満はない。その代わり、互いの仕事がうまくいくよう、経理は経理でバッチし指導したし、営業は営業で、受付は受付で、徹底して互いのコミュニケーションをはかった。当初の覚悟として、失敗はしかたがないと思っていた。
 海外に荷物を送る場合でも、荷物がどのように空港やトラック業者で扱われるのか、普通バリで生活をしている人は知らないから、傷がついたり、割れたりしないように梱包する方法をきちんと言った上でやってもらう。それを「この荷物、日本に送っといてくれ」じゃぁ、あまりにも無責任すぎる。
 このように不満をもらしながらも、バリを出てゆかず定住まで決めている人たちだから、本当は、日本人といっしょにやるよりはしんどくないだろうと思う。根っこの方ではバリ人を好きなのかもしれない。だったら、「言うなよ」と僕はいいたいのだ。


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