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永江朗のオハヨー!日本語 ~広辞苑の中の花鳥風月

短期集中web連載! 手だれの文章家・永江朗が広辞苑を読んで見つけた自然を表す言葉の数々をエッセイに綴ります。

じちょう【慈鳥】

2012年12月16日 | さ行
カラスの異称。


「慈」は「いつくしむ」。「愛する。かわいがる。大切にする」という意味がある。あのカラスが慈しむ鳥? 日ごろゴミ集積所を荒らされている人には、「冗談じゃない!」という記述だろう。

 しかし、「からす(烏・鴉)」の項目には気になることが書いてある。「古来、熊野の神の使いとして知られ、また、その鳴き声は不吉なものとされる」というのだ。3本足の八咫烏(やたがらす)は、神武天皇のガイド役として熊野から大和へと案内した、と記紀神話にはある。神の使いであると同時に、不吉な鳴き声の鳥だったのだ。昔の人も、たんにありがたがったわけではない。「慈鳥」という呼びかたには、敬して遠ざけるような気持ちも含まれているのだろうか。

 もうひとつ考えられるのは、カラスがわが子をかわいがるので「慈鳥」と呼ぶのではないかということ。野口雨情が作詞した童謡「七つの子」では、カラスの鳴き声を「可愛 可愛」と聞き、山にかわいい7つの子がいるからだといっている。ぼくも、子育て中のカラスが、巣を取り払おうとした庭師を襲っているのを目撃したことがある。