紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

自伝、評伝、日記

2008-09-03 23:40:46 | 読書
 先日H氏に買ってもらった雑誌のひとつ『考える人』最新号の特集は、「日記、自伝、評伝」である。この特集だけで私の中の妖怪アンテナならぬお値打ち本アンテナが、ピピピと直立した。ページをめくるまでもなく、これは買い。

 この直感は見事的中した。というか、予想以上に私の読書履歴や興味ににフィットしていた。
 
 「辻邦生 1968~69年 パリの日記」の最初のグラビアでは、いきなりアンリ・フリシェールの『シェイクスピア』(研究社)が出て来る。
 きゃ~! もちろん辻邦生氏はフランス語で読まれているのだが、私はたまたま入った同志社大学(もちろん私にとっては他大学)近くの古本屋で手にしたこの本のおかげで、退屈だった古典で戯曲のゼミ・テキストが、ミラーボールのように変幻自在に輝き出したのだ。つまりシェイクスピアの魅力にハマったのである。

 そんな風に冒頭でさんざん興奮してしまったので、辻邦生氏のパリ日記の印象は、残念ながら影が薄い。

 次のグラビア「きれいな風貌 西村伊作伝」も、まるで建築家のヴォーリズ先生のように多才多趣味な方。ベクトルの方向もかなり近い気がする。文化学院を創立された方である。

「インタビュー 丸谷才一 伝記はなぜイギリスで繁栄したか」(聞き手・湯川豊)では、『サミュエル・ジョンソン伝』の話がめっぽう興味深かった。

「インタビュー 橋本治 日本人にとって日記とは何なのだろう」というのもあるぞ!

「インタビュー 最相葉月『ノンフィクションと本格評伝のあいだ』」では、もちろん星新一の評伝を5年の歳月を費やし、それも星新一の遺品整理(段ボール100箱分!)からスタートしたという、詳細に渡る裏話が聴ける。彼女へのインタビューはマスメディアでずいぶんされていたから、「またか」とお思いの方もいらっしゃるかもしれないけれど、これは静謐ながらほとんど感動的なインタビューなので、必読。かなりお勧め。

 ほかにもツヴァイクの『ジョセフ・フーシェ』やディネセンの『アフリカの日々』も絶讃されている。四半世紀も前に読んだ、私の記憶の中ではかなり重要な位置にある本が、絶讃されていると「やったね☆」という喜びを味わえるのだ。

 特集以外にも、

「対談 鶴見俊輔×高野文子 幾何学と漫画」とか

「日本の身体 第三回 【茶道家】千宗屋 聞き手・内田樹」とか

「新連載 日本のすごい味(1) 鮒ずし 平松洋子」とかの、そそられる部分がたくさんあるので、これはもう、買わなくてはね!
コメント
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