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寄り道しながら前へ

 思いつくまま気の向くまま
ゆっくりいろんなことを考えてみよう。

 

孫が読む漱石

2006-04-17 16:57:31 | 
「孫が読む漱石」  夏目房之介 実業之日本社
著者 夏目房之介 さんは、夏目漱石の孫だそうである。
房之介とつけたのはお父さんで、漱石の本名が金之助だから、かと思いきや、
お父さんは純一というので、「ずるい」と房之介さんは言う。

房之介さんは、NHKBSでマンガ夜話という番組に出ていたので知った。
文豪、漱石の孫がマンガ評論家?と思いながら見ていたが、
この人の軽さに親しみを感じ、同い年ということもあって、
同じ時代を共有しているような錯覚を持ち、
新聞のコラムも読んだり、時々本も読み、ブログものぞいたりしている。
ホントにかる~い感じの人なんだから。
 
 まだ読み始めたばかりだが、文学論を書くはずの房之介さんは、
どうやら身内にしか書けない内容に傾いていくようだ。

東野圭吾「手紙」

2006-04-04 12:52:58 | 
「容疑者Xの献身」で今年の直木賞を受賞した東野圭吾は、「分身」に次いで私には2冊目。
いろんなタイプの作品があるらしく、作品によって評価がずいぶん違ってきそうだ。

両親を亡くし、弟と二人暮らしの心優しい兄武島剛志が、弟を大学にやりたいばかりに空き巣に入った。家人に見つかり、強盗殺人となった。
 弟直貴は、そのときから自分で働いて生きていかねばならなくなった。働きながら、高校もきちんと卒業した。
こんな少しの手違いで大変なことが起こり、優しい男が強盗殺人犯になってしまう。
弟は自分のために罪を犯した兄を恨むことも責めることもしてはいけないとけなげに働く。

兄からは毎月手紙が届く。次第に手紙は鬱陶しい物になっていく。
冷たい世間は、兄のせいだと思い始め、弟は兄と縁を切ろうとするのだが・・・・。

 強盗殺人を起こすまでは兄の心にそって語られたが、その後は、弟を通して物語りは進む。
 余分な装飾もなくすらすら読める文章なので一気に読み終えた。読みながら様々なことが連想されてきた。

 20歳のころ、父が胃を切除する緊急手術をしたので母と病室に泊まった夜、父にもしもの事があれば、私が大学を辞めて働いて妹を高校に行かせなくては、と覚悟をしたものだった。幸い、父は回復したが、あの時、最悪の事態になっていたら、その後の私の人生はどうなっていただろうか。環境に恵まれなかった時、どんな生き方が出来るだろう。

 直貴が真面目に働いていた時、音楽活動をしたとき、兄が強盗殺人犯だということが知られると、バンドから身を引かされることになり、仕事は変わらなければならなくなり・・・・・やけを起こしてしまうだろうなあ、私なら。
 それでも、世間の反応は納得のいくものだし、自分でもそうしてしまうに違いないだろう。頭で差別はいけないと知っていても。

 直貴を雇ってくれた社長の考えは驚きだ。罪を犯したものは差別されなければならない。罪を犯した者の家族も辛い思いをしなければならないと。厳しい!でも、私は少し違うと思うのだけど。

 作者の一番訴えたかったことは?血縁の絆?罪と罰?
読みながらとても連想が働いて、いろいろと考えさせられた。
 
 

「上がれ!空き缶衛星」

2006-03-03 14:28:32 | 
一九九九年、米国ネバダ州の砂漠で初めてカンサットが打ち上げられた。この時、日本からは東京大学と東京工業大学の学生たちのグループが参加。
初めてカンサットづくりに挑んだ東大と東工大のうち、東大の学生を中心に、その苦闘の1年を追ったドキュメントである。

「上がれ!空き缶衛星」 川島レイ 新潮社

「カンサット」とは、三五〇ミリリットル入りのジュース缶サイズの人工衛星のこと。
空になった市販のジュース缶の中に、電池、マイコン、通信機、センサー、GPSなどが搭載され・打ち上げられた後、地上局と電波で交信をすることができる。

カンサツトのプロジェクトにどんなに力を注いでも、大学での研究評価にはつながらない。技術的に最先端のことをやっているわけでもない。衛星を自分で作って打ち上げられるという喜びに比べたら、取るに足りないことだと考える。こんなふうに思えるものに出逢えた人は幸せである。

 「衛星を作って打ち上げる」という共通のゴールを持つているために、ただの同級生とか後輩とか先生だった者たちが、幾多の葛藤と紛糾を経て、かけがえのない大切な仲間になっていく。普通の大学生活では得られない大切な何かを、望むと望まざるとにかかわらずそれぞれが体験していた。
 
 小さな衛星を、日本の東大、東工大の学生が製作し宇宙へ打ち上げ、かっ運用していて、しかも、きちんと機能しているという事実は、世界中の宇宙関係者を驚嘆させた。  (以上、本文から抜粋)
 
 何もわからないところから始めて、秋葉原で部品を集め、多摩川でリハーサルを行い、目的のため集まっている学生たちの姿がとてもいい。衛星の名前も「月下美人」すてきな命名だ。

 驚いたのは、アメリカにはアマチュア・ロケット・グループがあり、そこがボランティアで打ち上げてくれることになった。アマチュアって・・・・さすが、アメリカというところか。

息子にも、こんな充実した大学生活を送ってもらいたいと願いながら読み終えた。

万物理論

2006-02-03 01:25:43 | 
グレッグ・イーガンの本を読んだのは初めてだ。
「現代最高のハードSF作家」と讃えられ、「万物理論」は、「SFが読みたい」2004年版海外篇で一位になっている。
 第36回星雲賞 クルト・ラスヴィッツ賞(ドイツ)、オーリアリス賞(オーストラリア)受賞。う~ん、すごいなあ。

「万物理論」 グレッグ・イーガン 山岸 真 訳  創元SF文庫

 読んではみたものの、まだ消化不良。

 西暦二〇五五年の未来。映像ジャーナリストのアンドルー・ワースは、バイオテクノロジーの状況を取材するうち、先端技術のありように嫌悪感をいだき、一転して、理論物理学の先端である「万物理論」取材に取り組む。すべての自然法則を包み込む単一の理論、『万物理論』、説明を読んでもわかるわけがない。でも、きっとそこはわからなくてもいいのだろう。(勝手に決めている)
 南太平洋に構築された人工島ステートレスで行われる学会にでかけたところ、学会周辺は、カルト集団が出没し、賛成派・反対派入り乱れての陰謀が渦巻いていた。宇宙創生から身体改造、都市論、ウィルス禍まで、アイディア満載、盛りだくさん。

 読んで理解できる人もいるから評価が高いのかな。不思議なことだけど、これだけ圧倒されたのに懲りないで、他の作品も読んでみたいと思っている。
 

家庭に本があったということ

2006-01-24 17:36:06 | 
夫が図書館から借りていたのを横からほんのつまみ食いのつもりで、途中を読んでみたらそのまま最後まで読んでしまった。
「要するに、そういうことだったのね」
と目からぽろぽろウロコを落としながら読んだ。

  毛沢東が革命後漢字を簡体字に変えたのは合理化のためだとばかり思っていたが、どうもそれだけではなく、共産党以前の思想や歴史を人々の記憶から消すためではないかと最近考えるようになった。その後成人した中国人がものの見事に昔のことを知らないからそう思うようになったのである。アメリカもまた日本占領中に日本の思想の一部を抹殺するべく数千冊の本を危険図書に指定して日本中の図書館から接収したが、日本では効果がなかった。それは各家庭にたくさん本があったからで、そんなことを思いつくとはアメリカには本は図書館にしかなかったらしいと分かる。
 日本の文明度はアメリカ人の想像を越えていた。

 という文章に接し、アメリカはこんなことをしようとしていたのかと知って腹が立ったり、日本人は知的なのよと思ったりした他、
インテリの「アメリカかぶれ」、
「グローバル・スタンダード」というメガネで見た日本、
「サロン大学」という高等教育のありかた・・・など
第4章  日本人はもっと自信をもっていい

などが書いてある。

    「国家の正体」 日下公人著

大上段に構えたタイトルはいただけない。
おまけにサブタイトルはーー小泉改革の先を考えるーーー
大変くだけたわかりやすい文章と内容なので、理屈の苦手な人も、政治や経済のことはどうもね、という人にもおススメできる。
だから、
「バカの壁」とか「さおだけ屋はなぜつぶれないのか」のように、
もっと工夫したタイトルで人の注意を惹いてみてもいいのでは、と思ったりした。
確かに国家とは何かと考えたり、これからの国家のあり方も考えているけれど。

併読書でアップアップ

2005-12-04 14:26:18 | 
師走の忙しい時期に何冊も読みかけの本を抱え込んでいる。

ききみみずきんさんのところで見かけて興味を持った

「誰も読まなかったコペルニクス」 オーウェン・ギンガリッチ 早川書房

図書館から借りてきてよんでいた時、

「ポーランドで発見 コペルニクスの遺骨か」

の記事を新聞で見かけたので、読んだらまとめて記事にしようとおもったら、

say_say_say/さんが、すでに書いてしまわれた。

途中まで読んだところで、旅行の為

「マッカンドルー航宙記」 チャールズ・シェフィールド 東京創元社

を読む。これもsay_say_say/さんから。

旅先、娘の部屋で、本のことども さんのところで知って以来チェックしていた

「荊の城」上・下 サラ・ウォーターズ 創元推理文庫

を発見して読み始めた。娘がこういうのを読むのか・・・・・・・・!私はまだ途中。

それなのに、読書会1月のテーマが『野沢尚』なので

「破線のマリス」を読み始めてしまった。

年末からお正月は何年ぶりかで家族が揃うかもしれないので掃除をしなくてはいけない。
物置状態の子供たちの部屋を部屋らしくしなくてはいけないのに・・・・・・・ああ!

いろんな方のところで様々な本を知るのは嬉しいが、読みたい本が増えて、家の中のことがおろそかになっていく~。

もしも月がなかったら

2005-11-08 10:18:26 | 
息子が突然1泊2日で帰省した。
そして、私が読んでいた本を見て
「これって、万博の三菱館でやっていたアレだろう」と言う。
三菱館での内容を話してくれたが、私が読んでいる本そのものだった。
半年間も同じ県内で万博をやっていて、毎日紹介の番組を放送していたのに気付かなかったとは。

「もしも月がなかったら」――ありえたかもしれない地球への10の旅――
ニール・F・カミングズ著  竹内 均 監修  増田まもる 訳


 三菱館に行かれた方、覚えていますか?

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 もしも月がなかったら?・・・・・・月のない地球は、自転速度が地球よりずっと速く、1日は8時間となる。生命の進化も遅い。

 もしも月が地球にもっと近かったら?・・・・・・月がもっと地球に近い所にあると、公転周期が短くなり、日食や月食がひんぱんに起こる。潮の干満差が激しく、地震が頻発する。

 もしも地球の質量がもっと小さかったら?・・・・・マグマが減り、火山活動の頻度が極端に小さく、酸素が少なく、人類は肺を大きくするため背を高く、胸を厚くするだろう。

もしも地軸が天王星のように傾いていたら?・・・・・
もしも太陽の質量がもっと大きかったら?・・・・・
もしも地球の近くで恒星が爆発したら?・・・・・
もしも恒星が太陽系のそばを通過したら?・・・・・
もしもブラックホールが地球を通り抜けたら?・・・・・・
もしも可視光線以外の電磁波が見えたら?・・・・・・
もしもオゾン層が破壊されたら?・・・・・・
〈ありえたかもしれない地球〉への旅をたどるシミュレーション・ロマン。

少しの条件がちがうだけで、今のような地球はありえなかったことを考えると、
地球は限りなく偶然が重なってできた星だとわかる。
微妙なバランスを辛うじて保っている地球。
もっと、もっと地球を大切に!
と考えさせてくれる一冊だ。

「シリウスの道」を読んで

2005-10-18 12:20:34 | 
「テロリストのパラソル」を読んで以来手を出してなかったのだが、藤原伊織は久しぶりに読んでみたら、やっぱり面白い。

テレビに流すCMを作っている大手広告代理店の辰村祐介が主人公。(電通に勤めていた著者自身が投影されているようだ。) この業界のことは、身近にいるものから話を聞いていて多少知ってはいたのだが、各社競合のプレゼンテーションに向けて、製作、マーケティング、PR,イベントプロデュース、そして営業らで編成されたスタッフの奮闘振りを興味深く読んだ。だから、私は、企業小説という部分で楽しんだ。こんな職場で張り詰めた気持ちで仕事をするのはさぞかし生きがいを感じるだろうと思ったりして・・・・。(ぬるま湯の専業主婦からみたあこがれ)

 女性上司の立花英子は、決断が早く、頭がよく、美人でもありステキだし、辰村は上役にも物が言える男で仕事ができる。立花との会話の妙は楽しめる。辰村の下には、途中入社の新人がいるのだが、この2人のやりとりもいいのだ。新人が先輩を見習いつつ、上司も長所を見出して伸ばしている教育ぶりがいい。

 辰村祐介は子供のころ大阪で育ち、明子、勝哉という二人の幼馴染がいた。この三人の間には、決して人には言えない、ある秘密があった。三人は連絡をとりあうこともなく、別々の人生を歩んできたが、離ればなれになった3人が25年前の「秘密」に操られ、吸い寄せられるように、運命の渦に巻き込まれるミステリーである。

 また、「テロリストのパラソル」の時の人物が出てくる。このあたりはハードボイルドで進んでいく。
出てくる人物に魅力があり、読後も爽快感がある。

 午前中テニスに行ったので、読み始めたのは午後からだったが、集中して止まらなくなったので、こんなことならテニスにも行かず、朝からずうっと読めばよかったと思ったくらいだ。そして、そのまま、午前2時まで読んでしまった。
 そして、まだ読んでなかった他の作品も読んでいこうと思った。

ぜいたくな本

2005-10-17 09:05:06 | 
ステキな本を図書館で見つけた。



一千年前の作者不明の物語に、ノーベル賞作家の現代語訳と傑出した芸術家の作品、そして日本文学の研究に一生を捧げたジャパノロジストの翻訳が渾然一体となり生み出された、大人のための「竹取物語」。



つまり、川端康成氏が現代語訳を、
ドナルド・キーン氏が英訳を、
私が好きな宮田雅之氏が挿画を担当しているのだ。

さすがに優雅さと読みやすさの現代語訳だった。
英語がこれほど苦手でなければ英訳も読んでみたいところ(残念)

宇宙エレベーター 再び

2005-10-03 07:35:36 | 
say_say_sayさんに教えられ、
宇宙エレベーターを扱ったのが
「楽園の泉」 アーサー・C・クラーク 山高昭 訳 ハヤカワ文庫
であることが確認できた。


鶴田一郎・絵  

「赤道上を地球の自転と同じ速さで動き、そのため同じ地点の上に永遠に止まっている同期衛星や宇宙ステーション。天体力学の法則によって物体が空に静止していられるものなら、そこからケーブルを地上にたらし、地球と宇宙空間とを結ぶエレベーターができないものだろうか?4万キロにおよぶ〈宇宙エレベーター〉――この壮大な夢を胸に、地球建設公社の技術部長ヴァニーヴァー・モーガンは、赤道上に浮かぶ美しい島国、タブロバニーへとやってきたのだが・・・・自らの夢の実現に向かって突き進む天才科学者の姿を見事に描く、巨匠クラークのヒューゴ賞、ネビュラ賞受賞作」(ハヤカワ文庫紹介による)

著者のあとがきによれば、西欧で初めて概念を提出したのは、1966年、サイエンス誌に海洋学者が投稿したものだったとか。他にも何人かの人が平行して思いついたようだ。

 解説は大野万紀さん。
「星ぼしにかける橋」チャールズ・シェフィールド が同時期に出版されたことに言及している。
大野 万紀 文書館 にはそのほかの作品についての解説が集められている。