一昨日、ネイルサロンで、
『孤狼の血 LEVEL2』を見た。
(施術中に映画やバラエティなどの映像を見ることができる。)
映画評で「鈴木亮平の極悪非道ぶりがすごい」と
読んだことがあり、興味があったのだ。
(ちなみに役所広司主演の『孤狼の血』は見ていない。)
その極悪非道ぶりは、
ホントにすごかった。
初っ端からすごかった。
あんまり書くとネタバレになるので、
印象的な場面と感想だけ。
映画の冒頭、
鈴木亮平扮するヤクザが、出所後、
収監中にいざこざのあった刑務官の、妹を訪ねる。
というより、
刑務官の妹がピアノ教師をしている家へ、
手下と共に押し入る。
で、妹を襲うのであるが、
そのとき、なぜか、
妹の目を潰す。
鈴木亮平が、刑務官の妹の顔を両手ではさんで、
両手の親指を、妹の目に突っ込むとき、
ホントに怖かった。
このシーンを最後まで見ていられず、
画面から顔をそむけてしまった。
耳には妹の悲鳴だけが聞こえてきた。
「ネイルをしてもらいながら見る映画じゃなかったかも」と思いながらも、
そのまま続行した。
「目を潰す」ことにこだわる理由は、
映画の中で、おいおい明らかになる。
主役は暴対刑事役の松坂桃李。
いい感じだったが、
鈴木亮平が強烈すぎた。
舞台は広島の架空の町。
原作者は柚月裕子さん。
『仁義なき戦い』などのヤクザ映画のファンで、
「ヤクザの世界を描くなら絶対広島が舞台」と思って、
『孤狼の血』を書いたという。
(ただしLEVEL2は、内容は『孤狼の血』の続編ではあるが、
原作小説には描かれていない完全オリジナルとのこと。)
映画を見ていたら、
広島がヤクザ映画の舞台になる理由が、
だんだんわかってきた(合ってるか知らんけど)。
広島は、原爆を落とされた町だからだ。
戦争というものの惨禍をもっとも強烈に
経験させられた町。
そして最も弱い立場の者に、その惨禍はより一層降り注ぐ。
その最も弱い立場の者が、怒りを募らせて、
ヤクザになる。
そんな気がする。
鈴木亮平扮するヤクザは、少年の頃、父親に虐待されていた。
ラスト近く、松坂桃李と鈴木亮平が殴り合うシーン。
鈴木亮平は「オレには死神がついとってなかなか死ねんのよ」と言う。
このシーンの鈴木亮平の演技は、
ビキニ環礁の水爆実験が生んだ怪獣という設定のゴジラのごとく、
「存在の悲しみ」のようなものを感じさせて、秀逸だった。
『仁義なき戦い』は戦後すぐの時代設定。
主演の菅原文太扮するヤクザは復員兵だった。
『孤狼の血』は戦後ではなく平成初めの時代設定で
原爆とは関係なさそうだが、
広島の地層に、怒りのマグマが埋まっているような気がする。
鈴木亮平のブチぎれた演技を見ていると、そう思う。
原作者の柚月裕子さんは岩手県の出身。
ご両親を東日本大震災で亡くされたという。
東日本大震災の復興をより複雑にしているのは、
言うまでもなく原発事故。
旧日本軍や日本政府、大企業の論理の中で
犠牲になってきた市民の怒りのマグマが、
『仁義なき戦い』や『孤狼の血』、あるいは『ゴジラ』に
通底しているように感じる。