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美の渉猟

感性を刺激するもの・ことを、気ままに綴っていきます。
お能・絵画・庭・建築・仏像・ファッション などなど。

気高い阿古屋 大阪・国立文楽劇場のポスター

2023-01-09 19:39:45 | 文楽

今、大阪メトロの駅には

1月文楽公演のポスターが。

うーん、豪華。

「壇浦兜軍記」(だんのうら かぶとぐんき)のヒロイン、

遊君(ゆうくん)阿古屋。

遊君とは遊女のこと。

 

源平合戦が終わり、源氏方が、

行方知れずの平家方の武将、景清(かげきよ)を探すため、

景清の愛人、阿古屋に行き先を問い詰めるのだが

阿古屋は「知らない」と言い張る。

 

そこで阿古屋に琴、三味線、胡弓を弾かせて

その音色から、本当に知らないのかどうかを探るという話。

俗に「阿古屋の琴責め(ことぜめ)」と言われている。

 

歌舞伎でもよく上演されていて、女形の大役である。

琴、三味線、胡弓を弾きこなせないといけない。

人形はどんなふうに演じるのだろうか?

まだ見たことがない。

 

阿古屋は景清の行方を本当に知らない。

しかも景清の子を身ごもっている。

景清に一番会いたいのは、他ならぬ阿古屋だろう。

 

源氏方から、思わぬ責めを受けて、

阿古屋はいかにこの窮地を切り抜けていくか。

 

景清は「悪七兵衛」(あくしちびょうえ)という異名を持つ

強者(つわもの)である。

 

その強者の愛人という誇り高さが

この毅然とした表情にあらわれているような気がする。

気高ささえ感じさせる。

 

そして遠くを見る眼差しが

愛しい男の行方を追いながら、しかし、

「もうあの人は帰ってはこない」と

悟っているようにも見える。

 

いつもながら、文楽劇場のポスターの写真は

役の性根を的確に捉えていて、

ステキだ。

 

※ご参考

 大阪・国立文楽劇場のチラシ - 美の渉猟 (goo.ne.jp)


大阪・国立文楽劇場のチラシ

2021-07-02 16:58:14 | 文楽

先週、大阪の実家に帰った時、

地下鉄の駅で、文楽のチラシを目にした。

大阪の地下鉄の駅には必ず置いてある。

駅の掲示板にはポスターも貼ってあって、

いつもハッと目を奪われる。

 

京都に移住して以降、久々に目にして、

とっても懐かしかった。

「ああ、大阪に帰ってきた」と思った。

 

このチラシの文楽人形は、いつ見てもステキだ。

その人形が演じる悲劇の質が、一目でわかるのだ。

 

今月のチラシは、「夏祭浪花鑑」(なつまつりなにわかがみ)から、

主役の団七九郎兵衛の、苦渋の表情である。

 

「夏祭…」は、

祭りばやしが聞こえる中で、血と泥にまみれながら、

どこまでも憎たらしい舅(しゅうと)を殺してしまう話だ。

 

ここに至るまで、いろいろな伏線があるのだが、

それをすべて物語るのが、この表情だろう。

文楽のことを、とてもよくわかっている人が撮影していると思う。