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側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

特発性側弯症の正しい知識の普及のために No.2

2008-03-03 00:05:28 | 側弯症基礎知識
ネット検索で済生会中央病院/鈴木信正先生が、会誌に寄せられた寄稿文を
見つけましたので、ご紹介させていただきます。
内容は、いわば、 特発性側弯症の基礎知識であり、ここに全ての知識と情報が
網羅されたもの、と言えると思います。
平成2年に書かれたものなのですが、それから18年をへた現在、ここに書かれて
いる「特発性側わん症」に関する医学知識は日本国内に医学常識として皆さんの
中に根付いているでしょうか ?

その当時と今との大きな違い、それがインターネットだと思います。
このネット社会で、鈴木先生の文章をご紹介することで、 特発性側弯症の正しい
知識が普及することを希求してやみません。

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(長文のため一部省略しています。また読みやすいように文章配列を変更した
部分もあります。文中の赤字はaugust03によるものです。)


脊柱側弯症の集団検診が一般化してから既に久しい。集団検診の成果は大きく、
検診が組織だって行われている地域とそうでない地域とでは患者の差は明かで
ある。
 すなわち、検診がきちんと行われる地区では、大きく進行してしまった側弯患者
は減少しており、反対に検診がきちんと行われていない地域では未だに大きく進行
した側弯患者を多数みている。

 一方、検診により側弯が発見された場合の教育現場での対応に問題が残されてい
ると言わざるを得ない面があることを強調したい。

 検診の目的は、学童の健康を守ることにある。したがって、側弯が発見されたこ
とによって、こどもの心に大きな負担をかけてはならない。経過観察にせよ、装具
治療を必要とするにせよ、学校側がこどもに精神的負担をかけるようなことがしば
しばみられ、このようなことは厳に慎んでいただきたいものである。
 こうした原因の一つには、教育現場の人々の側弯症に対する無理解があり、この
一文が側弯症の理解を深めるのにお役に立てば幸いである。

 学童の健康管理は、単に肉体だけでなく、心も健やかに育てることにあり、教育
現場には幅広い知識と大きな包容力が望まれる。

 背骨(せぼね)は、医学用語でいう脊椎と脊柱の両方を示す。
 脊椎は、一つ一つの背骨であり、頸椎は7個、胸椎は12個、腰椎が5個、それ
に仙骨、尾骨がある。そして、これらの繋がりが体の真ん中にあって脊柱となり、
体を支えている役目をしている。
 この脊柱は、横から見るとゆるやかなS字状に弯曲している。しかし正面から見
ると真っ直ぐである。これは、弓を横から見るとアーチ状をしているが、正面から
見れば真っ直ぐに見えるのと同じことである。
 脊柱側弯症とは、脊柱が正面から見て横に弯曲している状態をいう。もっとも、
人間の体には個人差があるので、脊柱の少々の曲がりはその大部分が正常範囲内で
ある。すなわち、成人の場合、側弯が30度以内であって、脊椎やその他に明らかな
異常がなければ、健康にまったく影響がない。

 次に、側弯症には、原因となる病気のあるものと、原因が全く不明のものがあ
る。
 このうち、原因のわからないものを特発性側弯症と呼んでいるが、これが側弯症
全体の70%を占める。また、脊椎に生まれつき奇形があって側弯を生じているもの
を先天性側弯症と呼ぶ。この他、例えば、マルファン病、レックリングハウゼン病
などという難しい病気などに伴った一群の側弯症を症候性側弯症と呼んでいる。
 症候性側弯症の一部には、遺伝性のものがあるが、先天性側弯症には遺伝性はな
い。また、特発性側弯症も遺伝性は明かでない。
 特発性側弯症の原因については、数10年前から世界中の専門家が研究している
が、いまだに明らかにされていない。ただ、現在のところはっきりしていること
は、環境因子、すなわち食事や栄養、姿勢、生活習慣、運動等
は一切側弯症の発生に無関係
であるということである。

 よく姿勢が悪いと側弯になる、一方の手ばかりでカバンを持つと側弯になる、
などいわれているが、これらは全くの誤りである。また、体操をして側弯を予防し
ようなどといわれることもあるが、これも誤りである。

 特発性側弯症は、脊椎の発育が最も活発となる思春期に発生するものが最も多い
が、その原因がわかっていないために予防は不可能である。したがって、早期発見
をして対処することが最も大切である。

 ある病気の治療をする場合、そのまま放っておいたらどのうようになるかを知ら
ずに治療することは合理的ではない。
また、側弯症の治療で、一番重要な自然経過、すなわち放っておくとどうなるか、
病状が進行するのか、進行しないのかを理解しないまま治療と称するものを行うこ
とが、特に民間治療法で目につく。

この側弯症の自然経過を知ること(予後予測という)は、これまで不十分であった
が、側弯症の研究が進んできた最近では、この予後予測がある程度確立してきてい
る。すなわち、側弯が進行する確率は、その側弯度と年齢によって大きく異なって
くる。

 側弯症の進行の確率(%)

つまり15歳未満であれば、25度以下の側弯は放っておいても2割は側弯度がゆるく
なり、そして5割は側弯が進行しない。

側弯が進行するのは残りの約3割である。

これらのことから、

15歳未満であって、25度以下の側弯の7割のこどもは、放っおいてよいということ
にある。 

しかし、15歳未満で、側弯度が30度以上になると、進行する確率は75%となり、
45度以上では90%が進行する。

また、側弯度が30度以上では骨の成長が終わった後であっても進行することあり、
従来からいわれていた「側弯は、成長終了後は進行しない」というのは誤りである
ことがわかってきた。 

さらに、成人の場合でも、側弯度が40度以上では約30%が、また60度以上になると
70%に進行がみられる。

側弯が大きく進行すると、体幹部の変形が著しくなり、胸部がひしゃげた形にな
ってくる。体幹部の変形が強くなると、肺の容量が減って肺機能が低下し、さらに
心臓にも影響が出ることになる。

成長期に45度を超える側弯は、その時には自覚症状はない。しかしその後側弯が
進行す確率が非常に高く、そして体幹部の変形がひどくなってくると肺機能の低下
や心臓への影響して重篤な症状が出てくるため、早い時期にしっかりとした治療を
受けなければならない。
側弯がひどくなると、内臓に影響が出るといわれているが、その影響は主に肺と
心臓で大きく、消化器への影響はあまりない。また、心臓や肺へ影響が出るのは
50度を超える中等度以上の側弯のみであり、軽度の側弯ではこうした影響が出る
ことはなく無用の心配は禁物である。

成長期の側弯であっても、側弯が25度未満の場合には何もせず放っておいても
7割は進行しないということは前に述べた。

しかし、ここで問題となるのは、側弯度が25度未満のこども達一人ひとりについて
果たしてこのこどもは進行するのかしないのかということを判定することが今の
ところできないという点にある。

このため、側弯度が25度未満のこどもにとって一番大切なことは、定期的に診察を
受けることである。そうして定期的な経過観察の結果、側弯が進行する傾向があり
側弯度が30度以上になるようであれば、初めて装具治療を開始することになる。

この場合、「早く発見して早く治療を開始すればよいではないか?」という考え方
もあるが、側弯度が25度未満のこども達全員に治療するということになると、例え
放っておいても進行しない7割のこども達に全く不要な、そして多少なりともわず
らわしい治療をすることになり、合理的ではない。

とにかく、25度未満の側弯では、定期的に診察を受けることが重要であり、定期
的な受診以外には日常生活の中では側弯のことを忘れていて構わない。

側弯は、このようにすると悪くなる、あるいは良くなるということが一切なく、
体操療法も側弯の治療という意味では無効であることが確定している。ただし、
この時期は成長期にあるので、側弯のために特別な体操ということではなく、
普通によくスポーツをして体そのものを鍛えることは発育の上で大切なことである

このように、現状では、側弯が進行するものは進行する、進行しないものは何も
しなくとも進行はしないとしかいえないが、

「そんな筈はない。何かある筈だ。溺れるものはわらをもつかむ」という人も少な
くなく困ってしまうことが多い。このような考えは、幼児が駄々をこねているのと
同じであり、現実的でない。

側弯がどのような経緯で進行する、あるいは進行を阻止させることができる、と
いった要因を究明するために、著者の属する国際側弯症学会の全メンバーと関連す
研究家がこぞって研究し、発見しようと努力しているが、いまだ発見しえないとい
うのが現状である。

民間で行われているような体操療法を進めることや日常生活上の注意などを細々
と指示をしてこどもに余計な負担や心配をさせるよりは、定期的に受診させるだけ
の方がはるかに益するところは大きい。

 成長期に側弯が30度以上になると進行の確率が75%と高くなる。

したがって、側弯が30度を越えるこども、また定期的な経過観察の結果から見て
30度を越えそうなこどもには装具を付けて側弯を矯正させ、一定期間その位置を
保たせて進行を予防することになる。

装具は、顎から続くミルウォーキー型が有名であるが、私は例外を除き、洋服で
隠すことができる短いボストン型を使用して好結果を得ている。この装具は、入浴
時以外はずっと着けていることが原則となる。装具をきちんと着けていても進行し
てしまうこどももいるが、あまり真面目に着けないために進行してしまう場合も少
なくない。経過にもよるが、大体16歳を過ぎれば、装具は1日16時間程度の装用で
よくなる。

装具療法で大切なことは、側弯の矯正もあるが、肋骨隆起の矯正にある。したがっ
て、装具の装用は、18~20歳位まで継続する必要がある。

この装具治療法の治療成績を最近調査した結果、極めて良い成果が得られた。

筆者の外来では、既に500人以上に装具療法を行っているが、治療を終了した患者
と装具装着後3年以上を経過した患者、合計207人について、比較検討した成績を
次に示す。

男子は、21人、女子は186人と、圧倒的に女子が多い。

このうち、83例、41.7%は、治療途中で来院しなくなったDrop-out例であった。
装具は着けてくれなくとも、定期的にチェックすることだけは続けていただきたいものである。

装具装着状態は、67%が良好であった。

治療結果は、進行23.7%、
        不変63.4%、
        改善12.9%と、 不変、改善群が76.3%を占める。

自然経過から言えば、30度以上の側弯の進行の確率は75%であることと比較すれば
装具療法の治療効果は明らかである。

進行をみたもの24例の中で、手術を要するところまで進行したものは8人、6.5%で
あり、装具療法により進行が阻止できる確率は高いといえる。

成長期に45度以上、成人60度以上になると、進行する確率はずっと高くなり、また
装具はもはや無効である。この場合は、手術によって、側弯の矯正と固定が必要に
なる。また、手術による矯正率は、平均して50~60%であり、そのため早いうちに
手術に踏み切った方がよい。

手術を行う目的は大きく分けて二つある。一つは成人したときに肉体的に健康で
あること。二つは、そのとき、精神的に健康であることである。
肉体的に健康であることとは、安定した、すなわち進行する側弯がない、バランス
のとれた、そして痛みの原因とならない脊柱を持っていること、及び、正常な肺機
能を持っていることである。精神的な健康とは、側弯があることから、引っ込み思
案になったり、外観上の問題を気にしすぎている精神的に不安定ではなく、自信を
持って人生に乗り出していく、活発な、前向きな精神を獲得することにある。手術
により、側弯進行はくい止められる。そして肺機能の低下もくい止められる。従っ
て、放っておけば悪化し、寿命に影響する肺機能低下を考えたならば、思春期の側
弯症に適切な治療がいかに必要か明らかである。

一方、患者さんにとっては、やはり外観上の問題が一番気になるところである。
本来、外観上の問題は手術の成果としてはおまけ的なものである。しかし、精神的
な健康を考えると、外観の改善は非常に重要度が高い。そのためよりよい矯正が必
要となる。(以下略)

東京都済生会中央病院
http://www.saichu.jp/practice/c07.html

健康ネットより
http://www.health-net.or.jp/kenkozukuri/healthnews/100/060/k021/index.html
(一部引用)
子どもで20度以下の側彎は側彎症といわず、側彎状態とします。まだ進行する
可能性があるからですが、大人になって30度以下の側彎は正常範囲内といえる
からです。

側彎はすべてが進行性ではありません。発育期の子どもで30度未満の側彎は
50%が進行せず、20%は何もしないでも自然に改善されます。進行性のもの
は30%です。言い換えれば、30度以下の側彎では70%の患者が何の治療も
必要とせず、定期的な診察だけでよいといえます

側彎の治療で民間療法は効果がありません。よく民間療法で治ったと聞きますが、
それは放置していてもよいタイプの側彎だったということです。事実、私どもの
外来で軽度の方々は経過観察だけでよく、進行していく人は前述のように3割以下です



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ブログ内の関連記事
「側弯症の正しい知識の普及のために」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/e9c56dfe0c56b7ed613f00536e8b8b9a

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1 コメント

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18歳~20歳まで (くらら@)
2008-03-03 01:57:45
こんばんわ。
装具治療は18歳~20歳までつけるのが望ましい・・・ですか。
なるほど。
昔(今から20年以上前)は16歳とか17歳の頃が目安で外してよい(装具治療からの卒業)といわれてたんですけどね。
私は装具でかなり矯正できていたのに大人になってこんなに進行してしまったので、とても残念なタイプです。
この情報、当時に知ってたらもっとつけたんだけどな。
16時間だったら余裕でつけられたのに。
ほんと、情報が無い時代や地方に住んでると損だなぁ・・って思います。
なんでも東京や都会から発信されますものね。
今は良い時代になりました。。。(ネットの普及)

august03さん、いつも有り難うございます!
これからも私たち側弯症患者のためにどんどん情報を発信して下さい。
宜しくお願いいたします☆
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