~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

側わん症手術後の矯正率損失 correction loss について No.4

2008-07-13 01:56:00 | 側弯症手術について
今回の記事に関連した写真を下記URLに一覧表示しました。
http://sokuwan.googlepages.com/%E5%81%B4%E5%BD%8E%E7%97%87


今回の「脊柱固定手術後における矯正損失 Correction loss」についてのまとめとして
これを記載しています。しかしながら、私august03は医師ではありませんので、内容
に誤解や勘違いが含まれている可能性は否定できません。
もし、このStep by stepをご覧になられている整形外科の先生で、そのような間違い
に気づかれた先生がおられましたら、メールあるいはコメント欄への記載にてご指摘
いただきたいと思います。

今回の話の出発点は、私が管理している掲示板[特発性側弯症治療の広場]への
100度で手術をしたという25歳女性のかたからの投稿からスタートしました。

  「私は3ヶ月前に側彎手術を行い、現在自宅療養中です。
   術前は上下のカーブが約100度で退院時には約50度でした。
   先日外来がありましたが、退院時よりも10~20度角度が進行していました。
   (約70度に)手術で固定するので術後は進行しないと説明を受けていたの
   でショックを受けています。」

  「矯正角のロスは一般的に起こることのようですが、これは何が原因で起きる
   のでしょうか?
   矯正前に背中の筋肉が左右非対称についているわけですが、それに引っ張ら
   れるようなものなのでしょうか。
   それとも術後の生活の仕方に原因があるのか、
   あるいは矯正後も骨はある程度曲がっているので、骨が癒合していない部分
   はそこにかかる負担(残る角度が大きいほど負担が大きいような気がします
   が…)でずれていってしまうのでしょうか?
   原因が分かれば(自分なりに)対策を考えて気をつけることが可能かと考え
   ているのですが。
   この点について、もし情報をお持ちでしたら教えていただけないでしょうか」

この女性の説明を読み、私にはちょっと信じられない気分でいっぱいになりました
10年前20年前ならいざしらず、これだけ医学が進んだ世の中で、いまだに100度を
超えるまで手術せずにほおっておいた??
さらに、この方は次のようにも説明しています。

  「身体の変形についても洋服を着ればそれほど気になる状態ではなく、腰に負
   担のかかる作業以外は特に腰痛を感じることもなかったため、その状態を受
   け入れて過ごしてきていましたが、
   昨年あるきっかけで側彎症の専門医に診ていただき、自分の症状の重篤さを
   改めて理解し、手術を決断しました。

   手術も通常の側彎手術よりも難しくリスクは高くなることは承知でしたが、
   手術以外の方法がないことと、何より信頼できる先生と出会えたおかげで
   、今現在、後遺症や痛みの苦痛も特になく過ごせております。」

100度というカーブがどれ程のものであるかは「側わんカーブ100度とは実例紹介」
に掲載した写真のとおりです。女性の洋服もいろいろあるでしょうから、これだけ
のカーブでも洋服で隠れるものなのでしょう....たぶん。
25歳のこの方が結婚しているかどうかはわかりません。恋人がいるかどうかもわか
りませんが.....プライベートなことですが.... これだけのカーブ進行を受容して
いたということに正直驚きを禁じ得ませんでした。

さらに言えば、「手術前100度 → 手術直後 50度 → 術後三ヶ月70度」

わずか三ヶ月で20度も矯正角をロスしたのが事実としたら、そこで考えられるのは
1. 技術力のない医師による手術 .....いわゆるへたな手術
2. インプラントになんらかのトラブルが発生している
3. この女性が嘘をついている

この三点が理由としてあげられます。
私の管理している掲示板には、ときおり、巧妙な言い方をしながら、手術を否定
するコメントが投稿されてきます。おそらく整体等の民間業者が患者のフリをして
書き込んでいるのだろうと想像しているのですが。

このブログStep by stepのなかでも、また掲示板のなかでも、なんども述べてきま
したが、私august03は、手術を第一選択すべき、とは考えていません。できれば
手術をしなければしないですませたほうがいいと思っています。手術がまったくの
リスクゼロであるならば、手術を避ける理由は何もありません。しかし、手術が
手術である限り、そこにはリスクがつねに伴います。そのリスクと手術をすること
で得られるベネフィットと、そのふたつを秤にかけて、慎重に検討を重ねるべき
ことです。

手術を避ける、ということと、「整体」にいくことはイコールではありません。
これまで、ネット上で明確に整体を否定し、整体の欺瞞を根拠をしめしながら暴いて
きたブログは存在しませんでした。その為、ネットに氾濫する整体の宣伝に騙されて
多くのこども達が整体の犠牲になってきました。

手術を避けるために、何をしなければならないか。
それは、いまでもまだまだ不十分な早期発見の社会システムを構築すること。
それが第一のことです。早期発見のためには、側わん症という病気の存在を啓蒙
しなければなりません。その啓蒙をやはり阻害しているのが大塚整体をはじめとする
則湾症を治療しますと嘘偽りをまき散らしている整体なのです。側彎症が整体で
治療できる、などと虚偽の宣伝を繰り広げてきた為に、社会がこの病気に目を向ける
ことはありませんでした。なんだ、たかが即湾か、整体にいけばいいんだろう。
その程度の認識になってしまいました。その程度の認識ゆえに、家庭の中に、母親
たちのなかに、側わん症に対する知識も情報も定着することなく、いまに至って
います。

もし、上記の25歳の女性もほんとうに患者なのだとしたら、やはり整体の宣伝に
よってだまされた社会の犠牲、いわば整体の犠牲者ということもできるかもしれま
せん。

本題に戻します。(この女性のケースはあとでまた触れることにします)

側彎症手術後に「矯正角度の損失」が発生するのは、事実です。この事実をその原因
とともに理解する為には、側彎症手術の歴史からひもといていかなければなりません。

手術の歴史は、手術に使用するインプラント(インスツルメンテーション)の歴史
と同一となります。そのことについての説明は下記URLも参考にして下さい

   ケ・セラ・セラ&ポレポレ
   http://home.c02.itscom.net/skoliose/faq.htm#surgery

開発年代順に主な手術法をあげると下記のようになります。

   ハリントン(Harrington)方式
   ドワイヤ(Dwyer)方式
   ジルケZielke方式
   ルーキー(Luque)方式
   コトレルドワイヤーCortel-Dubousset(CD)方式
   TSRH方式


手術の様子は下記URLでも紹介されています
  脊椎手術ドットコム
  http://www.sekitsui.com/4syujyutu2/index2-1.html

側わん症で曲がった脊柱を私たちは、普段は正面からのレントゲン写真で見て
そのコブ角が何度か、ということでイメージしています。しかし、実際の脊柱は
あのような平面像ではなく、三次元的にねじれているのであり、また側面から見た
ときの生理的カーブ(前湾と後湾)も再現しなければならず、この手術は整形外科の
なかでも、本当に専門的に学び経験してきた医師でなければ、その成功は決して
得られるものではありません。

三次元的にねじれ曲がった脊柱を整体は、施術(痛くないけど押して戻す)で
治せるといいます。しかし、押して戻したものは、一両日もするとまたもとに戻って
きます。押せば→戻る→戻したものは、反作用で再び「戻る」。ときには、悪化
という形で、カーブが進行することもあるわけです。そもそも、押して戻るような
...あるいはひねて戻すであれ、どんな言い方でも同じことですが、その程度で
治るものならば、紀元前の昔から現代にいたるまで、延々と続くような病気として
存在するはずもありません。大塚整体の揺れるベッドや、大塚整体の体操で治る
ものならば、彼はノーベル医学賞を授与されてもおかしくありません。世界中から
患者を日本に呼んで大塚で治してもらうならば、日本は世界中から感謝され、その
外国からの患者(親も同伴)の滞在費だけでも莫大な経済効果を生むことでしょう。

事実はどこにあるのか。
側彎症を手術で治療するとは、三次元的に曲がった脊柱を、側面像では生理的曲線
になるように、正面像としては直線になるように機械的力(物理的力)で戻す操作
ということになります。このときに用いられるのが、金属のロッド(棒)であり、
そのロッドを骨と固定/接続するためのフックやワイヤー、そしてスクリューという
ことになります。これらの金属部品(医療機器)をインプラントとか、デバイスとか
インスツルメンテーションとか呼びますが、呼び方は違っても同じことを示して
います。

そして、脊柱固定術の歴史とは、これらインプラントの開発の歴史でもあります。
いかに、安全に、かつ、強固に骨と固定できるか。その為にインプラントのコンセプト、
形状、デザイン、機構(機械的メカニズム)etcに改良が加えられてきました。

装具をしても抑えることのできない進行し続ける側わんカーブの力とははかりしれ
ないものがあります。あれだけ堅い装具で抑えても、その進行がとまらないのです
お母さんがたは、この事実をもっと冷静に客観的に考察する必要があります。
人の手の何キロにも相当するような力で、一日23時間も固定し続けているにも関わらず
進行を続けるそくわん症の力が、どうしてわずか1時間にも満たないような整体の
施術や、ゆらゆら揺れるベッドに寝ているだけで元に戻ることがあるでしょうか。

インプラントによる固定術も、実は、このはかりしれない側彎の力との格闘の歴史
といっても過言ではないでしょう。

1970年代、ハリントンロッドによる手術の普及により、側彎症手術治療はそれまで
の時代と比較しておおきな成果を収めることができました。しかし、それでも術後
の矯正ロスを抑えることはできませんでした。それは、このインプラントがロッド
をフックと呼ばれる「鉤状」の...ちょうど、手の指を曲げたような感じのフックで
椎弓などにひっかけて固定する。という構造であった為です。
手術により、矯正位置(まっすぐ)にしたとしても、脊柱自体は三次元的にねじれ
曲がろうとする力は継続しています。その力を骨にひっかけたフックと金属ロッド
で制御しているわけですが、症例のなかには、フックがずれたり、骨からはずれたり
フックをかけていない部分の脊柱に対する固定力不足が発生したり、ということで
手術後にある程度のロスが生じることが起こりました。
「側わん症手術後の矯正率損失 correction loss について」で引用した文献は
このハリントンロッドによる1970年代の手術成績を示しています。

 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/9b5be7cbcdf1a72985331f1b07080ee3

1970年代にハリントンロッドで手術をした患者さんを20年以上フォローした結果を
まとめて2001年に専門誌に掲載した文献なのです。
そして、それから様々な改良が加えられ、医師側の手術技術も向上を続けることに
なります。

レントゲン写真を見て、そこにどういうインプラントが使用されているのか、
その手術がうまいのか、へたなのか、それを判断するのは一般の人たちにはなかなか
難しいと思います。しかし、今回ここに掲載したレントゲン写真に映っている
インプラントはそれぞれに別機種のもの、別の時代の手術なのです。そして、現代
の手術成績は、1970年代とは比べる必要もないほどに向上しています。

最初の私の疑問に話を戻しますと、
わずか三ヶ月で20度も矯正角をロスしたのが事実としたら、そこで考えられるのは
1. 技術力のない医師による手術 .....いわゆるへたな手術
2. インプラントになんらかのトラブルが発生している
3. この女性が嘘をついている

この三点のどれかに真実があると思います。
もし、これ以外にもありえる真実が存在するようでしたら、ぜひともお教えいただ
きたいと思います。



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